変夏と背ける主人公
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高校一年の夏休みのイベント第二弾である、【陽キャと陰キャが逝く! ドキドキプールデート】が襲来した。
先日は黒川とクラウドさんのグラブジャムンのような激甘恋愛映画試写会に参加して他人事のように、観察していた訳だが、見ようによっては今日の俺も黒川同様に激甘とまでは至らないまでも青春ラブコメ要素を兼ね備えるイベントの当事者となっている。
夏休み前に藤木田と買い物に出かけた際に、購入させられた水着を眺めながら俺は一人、部屋でため息を吐く。
楽しみでは無い。と言うと語弊があるが、これからの事を考えると憂鬱だ。
俺くらいの陰キャになると週に五日は憂鬱な日々を送っているけど今日は格別であった。
ケバ子が嫌いなわけでは無いし、むしろ良い奴であるしスタイルも良く美人でもある。何より将来バリバリ稼いで俺を楽にさせてくれるまである。
しかし、脳裏に浮かぶのは陰キャらしい内容で、笠木と言うエンジェルへの後ろめたい気持ち。そして共犯者となった笠木に何も説明をしないまま作戦を進めている事。
これまで気付かないようにはしていたのだが、笠木の反応を見る限り、ケバ子が俺に好意を抱いているのは明らかになってしまった。
元より藤木田と黒川にイジられてはいたが、一種の気の迷いとして見ない振りをしていたが肥大化した好意は既に俺の眼前に迫っている。
これまで恋愛の方面で好意を抱かれた事が無い事もあり、戸惑いつつも少しばかり嬉しさはある。しかし、結局のところ勘違いから生まれた紛い物の感情なのだ。
俺にそれを受け取る権利は無いし、責められる権利はあれど責める権利などない。
一連の騒動で唯一、ケバ子だけが俺と笠木に石を投げる権利がある。
しかし、笠木同様に優しいケバ子は俺や笠木に石を投げつけないだろう、そして贖罪の意識で自分自身に石を投げつける手段を選び取るはずだ。
そんなバッドエンドは在ってはならない。
俺の作戦は、その石を奪い取って自分に投げつける事。
黒川に伝えた言葉がそのまま俺に返ってきている。
『ここは現実だ、ギャルゲのようなご都合主義なんざない、全員がハッピーエンドを迎える様に出来るのはファンタジーくらいだ』
その通りだ、しかし……。
全員じゃなければ、ハッピーエンドは迎えられる。
決行は今日ではない、今日はあくまで布石を打つだけ。その事だけに集中しろ。
俺は掴んでいた水着をバッグに詰込む、頭に残る笠木の姿を消し去るように頬を叩いて気合を入れて立ち上がる。
顔よりも痛い部分がある。それすら俺は目を背けて玄関の扉を開ける。
焼けたアスファルトに転がるセミの死骸が目に付く、それでも俺は前へ踏み出す。
俺が主人公の話は、まだ終わっちゃいない。
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