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変夏におけるファッションはどこか冒険しがち

 次の休みの日、夏休みが近づき日差しの強さは日に日に増す一方で俺は藤木田との待ち合わせの為、いつも通り第二の家とも呼べる駅前地下サイゼでウーロン茶を啜っていた。


 本当にリア充や陽キャの巣窟である街中のショップへ行くつもりなのかと考えている。そもそもユニクロやGUではダメなのだろうか?

 しまむらはともかくユニクロやGU辺りなら比較的手ごろな値段で派手ではないが季節やトレンドを意識した服が手に入るだろうしわざわざ高い買い物をする理由が俺には分からなかった。


 俺も親の買ってくる服のデザインに異議を申し立て、藤木田と同様に雑誌に載っているハイブランドを意識した経験がある。俺の場合は自分のスペックを高める目的ではなく中学校の時の気になるクラスのあの娘を意識した上での行動だったのを覚えている。

 よくよく考えたら、そもそも私服を見せる機会がないので意味がない事であると今では思うが、脳内でその娘とデートをする場面を現実であると認識してしまった事が理由の過ちである。


 何しろ怖いのだ、ただ服を見てるだけで獲物を見つけたかのように近寄ってくる店員、頼んじゃいないのに購入したくなってしまうような情報を囁いてくるあの口、こっちが陰キャであると見抜いてグイグイ押してくるのが非常に不愉快極まりない。

 どう考えても負けて購入せざるを得ない状況を作り出すのだ、ただのTシャツで一万円を奪われた苦い思い出が俺を襲う。


「木立氏、既に着いておりましたか」


 一人、思い出のアルバムを遡っていると藤木田が到着していた。


「あぁ、五分前集合は社会人の常識だからな」

「今がその五分前ですぞ、何より将来不労所得で生きていくと発言した男が社会人の常識と言っても説得力は皆無でありますぞ」


 コイツ違う班だったのに宿泊研修での俺のスピーチを聞いてやがったな、高橋に励まされた記憶が蘇るところで俺は脳内ビデオを停止した。


「まぁ情報として持っていても損はないだろ、それで今日は何を買うんだ? あの雑誌に貼ってあった付箋の商品を全部購入するわけではないだろ」

「そうですな、一部だけになりますが夏も控えている事もありますので、インナーとショートパンツを中心に見ていきたいと思っておりますぞ」

「ほぉ、よく分からない単語しか出てこなかったけどな、俺は何も買わないだろうけど見るだけだな」


 そうして俺と藤木田は自分革命とも取れる街中の中心部にあるファッションテナントが詰まっているビルへと足を運ぶのであった。


「藤木田はよくこういうの平気だな、この手の店へ行くと店員が近寄ってきたりするだろ?」

「そうですな、某は木立氏ほど外へ出るタイプではなかったのであまり経験はございませんがネットの情報だと多いみたいですな」

「そういうのに抵抗感とかないのか? むしろ俺はそれが嫌でファッション関係の場所へあまり近寄りたくないんだよ」

「某も抵抗感が無いと言えば嘘になりますが某が一人で選ぶより店員さんの意見を聞くことも改善に繋がるのではと思いましてな」

「そういうものなのか」


 さっきまでは駅前付近にいたためか様々な人が歩いていたがファッションビルに近づくにつれて、ケバ子や田辺のような外見をした人が増えてきて、なんとなく落ち着かない雰囲気になってきていた。

 藤木田も言葉とは裏腹に辺りをキョロキョロしたりする挙動が多いので興味が尽きないのか、それとも緊張しているのみたいであった、普段より口数は少なく思ったよりも早く目的地へ着いていた。


「ここが陽キャの巣窟か……」


 俺は七階層になっているビルを下から上へ見上げる、気分は入る度に形を変えるダンジョンに挑む冒険者のようであった。


「さぁ行きましょうぞ!」


 藤木田は先陣を切ってダンジョンへ入っていく、俺も藤木田に続きそそくさと入る。


「それで目的の商品が置いてあるショップは何階なんだ?」

「恐らく四階でございますな、一階から三階まではレディース物の階となっているようで某達向けの商品があるのは四階と五階のみとなっておりますぞ」


 男女によって階層を分けてあるのは初めて知った、某ディスカウントショップのように有象無象に並べてみましたという配置にはなっていないらしい。

 ちなみに俺は某ディスカウントショップも苦手である。


「ファッションと言ってもビジネスに精通した人間がいるんだからそりゃ立地から商品の配置くらいは理にかなっているよな」

「それはそうでありますぞ。某達が意味が無いと思ってる事にだって何らかの意味は付随するように出来ているのが世の中でございますぞ」


 藤木田の言う事は正しく、別の視点から考えると俺が意味が無いと判断した一万円のTシャツにも何か意味があってその値段なのかと思うと少し悪い思い出でも無いような気がしないでもない。


「俺も小物くらいなら興味が湧いてきたな」

「木立氏もファッションに目覚めましたか、それは良い事ですぞ。第二回クラスイベントの時に笠木女史にファッションを褒められる可能性もありますからな」

「第二回クラスイベント?」

「あれ? 聞いてないでありましたか……この間決まりましたが夏休み中に開催されますぞ」


 俺は忘れていた。

 

 最近笠木やケバ子と話したり、黒川のオフ会にて見知らぬ陰キャ達との接触を経験して恰も自分がまともな人間であると思い込んでいたのかも知れない。

 今、思い出した。

 俺はスクールカースト最底辺の陰キャのテンプレであると。

きょはこれでおわりです><

ブクマや閲覧数、ポイント評価がいっぱいのびて嬉しいです!ありがとうございます:w:

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