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冬萌における彼と彼女の結末6

 ヤバイヤバイヤバイヤバイ……!


 家では女なんて興味ねぇぜオーラを出している息子が、明らかにタイプの違うギャル系の女子とデートをしているところを見つかってみろ、完全にイジりにくるに決まっている! いや、今日に限っては運が悪くデートだってバレてるんだけど。


 何より俺の母親は陰陽で表すならば……間違いなく陽キャ側であり田中と気が合うのは、容易に想像出来る。

 そうなると何が起こるか? 簡単な話だ。学校での俺の生活と内弁慶の純一である事が双方に伝わってしまう……! バレてはいけない……ッ!


「ねぇ、もしかしてプチコース嫌だった?」

「ん? 何でだ?」

「いや、めっちゃメニューばっか見てるっつーか顔にガッツリメニュー表押し付けてない?」


 バッカ、メニュー表を顔に押し付けるのが好きな奴もたまにいるだろ……多分。

 それとプチコースが嫌なわけじゃない、むしろコース料理とかちょっとテンション上がるくらいに期待してる。


 だが、そのコース料理の味すら分からなくなりそうな事態に直面しているんだ、分かってくれ田中! いや、分からないままでいてくれ田中。


「勝手に決めちゃってゴメン……なんかちょっと舞い上がって突っ走り過ぎちゃった感じだよね……」


 メニュー表のせいで顔が見えないが、イントネーションから田中の落ち込み具合や、笑いながらも悲しい顔してるのが分かってしまうのが辛い。


 だがしかし、メニュー表で顔を隠さねば俺は終了してしまう気がする。


「いや、プチコースは楽しみだ……楽しみすぎてニヤけてる顔を見られたくないから、隠してるまである」

「な、なんだ! ダウンして損した……ってか、その顔見たいからメニュー表置いてよ」

「い、いやだ!」

「どうしても?」


 当たり前だ、願わくばプチコースが届くまでに俺の両親が消え去る事を祈っている。


「どうしてもだ」

「んじゃ、強行突破」


 悪魔の田中は俺の願いとは反面、俺の眼前からメニュー表を奪い取ってきた。


「……は? ゾンビ!?」


 何? お前は今日ゾンビを連れて歩く予定だったのか? ゾンビになっても人の心を失わないとか俺の意識強すぎだろ。


「……あぁ、ゾンビでいいからメニュー表を渡してくれ」

「いやいやいや! アンタ、顔真っ青じゃん、具合悪い? 大丈夫?」


 やめろ田中! 騒ぎ立てるな、気付かれるだろ、マジ止めてください、お願いします。


「大丈夫だ、心配するな……陰キャってもやしと一緒で、日陰で生息してるから青白いんだ」

「いや、マジ強がんなくていいから! とりまアタシ市販薬あるから飲みな」


 ギラギラしたブランド物らしきバッグを漁り、薬を探す田中の姿を見て、申し訳なさを感じてしまう。

 なんか罪悪感が湧いてくるんですけど……。


「あれ……薬忘れちゃったかも……どうしよう」


 頼むから悲しそうな顔をするな、胃がキリキリしてくる。いや、俺が悪いんだけどね。


「ーーさっきから騒がしいけどなんかあったの?」


 あっ……聞き覚えのある気怠げな声。


「あ、えっと……か、彼氏が具合悪いみたいで薬を探しててすいません……」


 うん、終わった。

 しかし、安心しろ田中。

 市販薬なんかじゃ、どうにもならないフェーズへ移行した。


「あらら、おばさん持ってるので良かったらあげる」

「あ、ありがとうございます! ほら飲みな」

「どもっす……」


 僅かな期待を信じて、抵抗をするように顔を見せずに囁くようにお礼を言い頭を下げた。


「彼氏も一年に一度のクリスマスなんだから、気合いでーーって……あら奇遇ね」

「あっはい……」


 青春どころか人生が上手く回っていない気がするのは、俺の気のせいなんだろうか?

 

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