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冬萌の嵐

お久しぶりです、眠気が非常に強い更新です。この時点で全てを察した方は最終回までお口にチャックマン

 俺が羞恥プレイに晒されながらも快感を得る事はなく、淡々と質問は続くがコイツら本気で田中を焚きつける気はあるのだろうか?


 最初と二つ目の質問以外は、俺みたいな陰キャですら秒で答えられる。


『球技では何が好きですか?』


 ほらな、質問のクォリティが落ちてんだよ。やはり陽キャは所詮この程度でしかないのだ。

 最初はチキってしまったが、慣れは良くも悪くも作用してくれる。


「球技どころかスポーツ全般が嫌い、もっと嫌いなものを言うなら、こういったイベントに喜んで参加する人間だ」


 多少慣れても陽キャがどうにでもフォローしてくれるとわかった俺は、無敵の人と言っても過言ではない。

 空気をぶち壊しても平常運転してるまである。


 その度、高橋が笑いに転換するようにフォローしてくるのが多少可哀想とすら思ってきた。


 さて、そろそろ貯蓄も尽きた頃だろ。さっさと俺を処刑台から解放してもらおうか? ……ん?


『好きな異性の髪型はありますか?』


 ラストで面倒なのがきたな、しかし二回目同様に田辺と高橋の様子がおかしい。


 まぁ、最後だから答えたいのが山々だが……これは本当にコイツらが考えた質問なのか?


 俺が陰キャだから分からないといった場合もあり得るが、男子は女子が思っているより物を知らない印象がある。


 髪型もそうだが、ネイルを変えただとか分け目を変えただとか、マツエクどーだ。とか自己満でしかないのだ。


 よほど美容やファッションに精通でもしてない限りは気付かない事の男の方が多いだろう。

 『髪型変えた?』くらいが精一杯で元の髪型がなんて名称なのか普通に知らない、この意見には陽キャも陰キャも手を繋ぐ。


 だからこそ、この質問には違和感がある。


 男性が考える質問ではなく、女性ならではの質問に感じるのだ。

 田中を焚き付けるにしては効力が弱い。


 俺が田中の……小難しい髪型以外を好みと答えたところで田中は嫉妬せずに良き情報として取り入れてしまうだろう。


 結論……この質問は田辺や高橋が田中に煽りを入れるために偽装したものじゃない。

 それに一つ……腑に落ちない事もあるのも確かだ。


 田中が俺に匿名で質問をした理由は分かる、ただ田中と同一の感情を抱く女子がこの中にいるとは思えない。


 田辺や高橋の様子を見る限り協力者というわけでもないはずだ。


「おい、木立ェ、押してるからちゃっと答えてくれや」


 俺の考えがまとまらないまま、時間だけは平等に留まろうとする俺の背中を押しているようで、僅かながらに抵抗して斜め上に視線を移す。


「あー……髪型とかよくわかんないんで似合ってればいいんじゃないかなと思います」


 俺の回答よりも時間を優先したいのか田辺は俺からマイクを素早く奪い取りクリスマス会の進行をする。


「はい! 予想してたけど木立のスベらないし盛り上がりもしない話でしたー! んじゃそんな木立に拍手ぅー!」


 高橋の悪意のない茶々のおかげか、心無しか少ない拍手を浴びつつ俺は席に戻らずに藤木田と黒川の元へと近寄る。


「木立氏、おつかれさまですぞ!」

「なぁ、おかしい部分は無かったか?」


 俺が違和感を感じたのは二回……田辺と高橋が互いに質問内容に疑問を抱いた回数でもある。


 自分だけでは考えがまとまらずにいた俺は藤木田に確認するも、壇上にいなかった藤木田は違和感を感じ取れないのが表情から分かる。


「ふっ……自分でわかるなんて成長したな木立。おかしいのは壇上にいた木立のモジモジした姿だけだ」

「おっと黒川氏、木立氏のメンタルは繊細ですぞ、あまりイジると帰ってから泣いてしまいますぞ」

「……何で知ってんだよ、俺がブラックサンタとしてお前らに血のクリスマスをプレゼントしてやろうか?」


 その後も会話の流れは藤木田主体で先導されて、納得のいく考えが出ないまま、クリスマス会は進行を続けていく。


 案の定、陽キャや部活で一年から部活のスタメンになってる奴らは質問が盛りだくさんで羨まし……い事はない。

 笠木はもちろん、田中やロリ子も噂には聞いていたが、クラス内だけでも好意を寄せている男子がいる事は明白だった。


「ところで木立氏」

「なんだ? 気に入らない質問なら黙秘権を行使させてもらうぞ」

「実際に髪型に問わず女性の好みは一貫して笠木女史のような方なのですかな?」


 一貫して……とは言えないが初見だと笠木に目を奪われるのは仕方ないだろう。と俺は言いたい。


 一貫して言えない理由……それはもちろん外見以外の要素、趣向や性格の相性の話だ。

 俺だって揺るぎない信念を持った九州男児のように在りたいとは思うが、明らかに好意を向けられていると分かる相手を蔑ろにする程クズではない。


 それに恋愛経験値が低すぎる俺に田中は毒薬である、並みの男子なら今頃攻略されてる。変に尖った俺だからこそ現状を維持出来ている。


 実際、先程から気づかないふりをしているが、壇上から降りた後も田中からの視線は感じてるのも否定出来ない。


 田辺と高橋の作戦は見事に田中を焚き付ける事に成功はしているのだ。

 そして今更ながらに、壇上に上がる前に藤木田に言われて濁した言葉の重さを実感させられる。


 俺はもし田中に告白されたらどうするのか、わからなくなっているような気がしている。


 時間は平等に考える時間を与えるが、答えを悠長に待つ時間はくれないのだ。

最後まで見ていただきありがぽよよ

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