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冬萌の処刑場

あさのこーひー

あさのこーしーん

 恐らくだが、恥ずかしさの度合いで言えば田中の方が上だろう。

 横目で田中を見る。俺の眼球が正常なら多少なり田中の顔が赤面しているのが分かる。


 しかしだ、田中ほどではないにしろ恥ずかしいのは俺も一緒だ。

 いや、これから恥ずかしくされてしまう予定だ。


 真面目に答えるのが正解か? それともどっちつかずの回答をして流すのが正解か? は定かではない。

 真面目に答えるならば、俺からは告白はしたくない。正直、男としては不合格と言えるが嫌なものは嫌なのだ。


 そもそもの話で陰キャの俺にこの質問はハードルが高いだろ。


「おい木立ェ……早く言えよ!」


 自分で思っているよりも俺が案山子になってから時間が経っていたようで、横に立つ高橋から脇腹を小突かれて急かされるが、恥ずかしさよりも苛立ちが一瞬だけ前に出てしまう。

 

 脇腹を小突いただけでここまで人を不快にさせるなんて才能だろ高橋。


 だが、時間の都合もあるだろうし、考えても答えなんて無いような質問だ。


 こういう時の処世術を使用させてもらおう。


「俺は……」

「俺は〜?」


 俺が間を置いたタイミングで、ここぞとばかりに茶々を入れて演出をする高橋に再度イラつきながらも、とっておきをみせてやる!


「黙秘する!」


 わかっていた。

 あぁ、わかっていたとも。

 

 さっきまでザワついていた体育館が静まりかえっている。

 場をシラけさせるのには慣れている。と言いたいが、そう言えないほどに冷や汗は止まらない。


 仕方ないだろ、陰キャには荷が重いんだよ。俺は悪くない。青春の経験値が足りない俺にする質問じゃねーだろ、ふざけんな!


 既に救済は不可能と分かっていながらも、無意識に藤木田と黒川に助けを求め視線を移すが、二人とも信じられないものを見たかのように真顔で硬直している。


 どうすんだよこの空気……いや、戦犯は俺なんだけどね。


「か〜ら〜の〜?」


 は?


 高橋が陽キャ特有の鳴き声で煽りをいれてくる。


「木立のジョーク、マジでブラック過ぎて振りって分かんなかったべ! じゃあ真面目に言ってみましょーい!」


 高橋の煽りを援護するように田辺が陽キャ特有の絆を見せつけるかのように連携で俺に再度回答を求めてくる。


 は? え? 何この流れ? 言わなきゃダメなの?

 陽キャのフォロースキル高くない? 純一負けちゃうの?


 いや、もうどうしようもない。壇上に上がった時点で俺に逃げ道などなかったんだ。


「……告白されたい方だと思います、はい」


 俯きながら小声で喋ろうにも手元に突きつけられたマイクは、静まり返った体育館には十分な音量で広がったようで「女々しい!」「男じゃねーぞ」「陰キャやん!」と罵声が飛んでくる。


 流石にこの状態で田中の顔は見れそうもないどころか、前が怖くて向けない。


「んじゃ木立に次の質問ありまーす!」

「ハァ!?」


 進行をしようとする田辺に対して一人だけ信じられないと言わんばかりに疑問を唱える声。

 この語尾が上がる言い方と通る声の持ち主である田中はどんな表情をしてるか見なくても分かる。


 やはり藤木田の予想通りに田辺たちが架空の質問を考えてきたのだろうが、どんな躱し方をしても逃げられる気がしない俺は答えるしかないのだ。


「二つ目の質問は……あん? ちょいちょい! こんなん入れた?」


 次の質問を言うと思った田辺が素っ頓狂な声を出し高橋を呼び始める。

 何か不手際でもあったのだろうか? それなら応援しよう、もっと時間を引っ張って俺がオモチャになる時間を減らしてしまえ。


「ん? いや……入れてないような気もするけど入れた気もするみたいな? 問題ねーし二つ目にしていいんじゃねーか、ノリでいけね?」

「ウッシ! ノリよな! やっば!」


 何やら問題が起きてるようだが、陽キャの必殺技であるノリで解決したようだ。

 俺も肖ってノリで切り抜けたいんだけどな。


「中断して悪ぃな! じゃ気を取り直して二つ目! 『異性に何をしてもらったら嬉しい?』だってよ! 木立見かけによらずモテてね? やんじゃん!」


 そう言って肩をパンパン叩いてくる田辺は演技がお上手なようで何よりだ。

 お前らが田中を焚きつける為に用意した質問だろうが。


 異性に何をしてもらったらか……男女を別にした質問という事は、宿題を見せてもらったら。みたいな方面の回答を求めてるんじゃなくて異性ならではの行為に対する回答だよな?


 しかし男子高校生ならではの煩悩なんて答えたらさっきよりも場が凍る事は分かりきっている。


 笠木と二人乗りしたり? 興味もない事を笠木と二人で話し合ったり、笠木と一緒に大して美味くもない期間限定のスイーツに募金してみたり、笠木とカップル限定割引を適用したり……とか?


 ……うん、俺って案外普通だったんだな。


 ただ、恋人にしか出来ないというか一つだけあるな、してほしい事とは違うかも知れんが。


 誰にも言えないような本音を俺だけには話をしてほしい、頼ってほしい。

 俺も、もちろんそうしてあげたい。


 まぁ、こんなラブコメ主人公のような臭い台詞は流石に言うつもりはないけどな。


「……二人乗りで後部座席に乗ってほしい……です」


 うん、こんなもんでいいだろ。


「おっ……おいおい! 木立めっっちゃピュアじゃん!」

「昭和かよ! ってな!」


 田辺の煽りに高橋が煽りを重ねるという二乗効果で体育館で響き渡る手拍子とピュアコール。


 これ以上の地獄は早々にないだろうと俺は思う、経験出来て良かった、そう思わなければ俺の涙腺が決壊してしまう。


 そんなに二人乗りって前時代の行為だったのかよ、いいじゃん……。

見ていただきありがとうございます!!ぽよ!

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