冬萌は彼女にだけいち早く訪れた
きょーの更新になり松('ω')ノ
田中と店内を物色していると、田中は気になる商品を俺に進めてくるが、いかんせん俺のマフラーよりも俺にとっては重要な事がある。
どうやって田中から一度離れようか……。
「アンタって派手じゃない方がいいんだよね?」
田中はそんな俺の気も知らずに、純粋に楽しんでいるようで悪い事をするわけでは無いのだが、何か罪悪感が湧いてくる。
「あぁ、派手だと注目されてるようで寒気がする、俺はジメっとした場所が現実的にも精神的にも似合ってるんだよ、ナメクジ系男子って今年のトレンドに有りだと思う」
田中はそんな俺の陰キャジョークに対してか、眉間に皺を寄せる。
「それは無いかんね、それにアンタって言うほどジメっとした場所に居ないと思うんだけど……」
「ん、どういう事だ? 俺が陰キャじゃないってのか? 俺のアイデンティティに亀裂を入れる気かよ?」
確かに物理的にジメっとした場所に存在しているわけじゃないが、大まかなカテゴライズをすると……俺はどう考えても陰キャという枠組みに入るのだが……。
「いやアンタは紛れも無く陰キャだけど……」
何? この上げて落とされる感じ……自分で陰キャをアイデンティティと言っておきながら少しばかり残念な気持ちが芽生えてしまう。
「ただ……アンタって前よりもクラスに馴染んでる感じすんだよね、存在を認められてるみたいな?」
「存在を疎まれているからこその認知だろう、気のせいみたいなもんだ」
田中にはこうは言ったが、気のせいなんかじゃない。
田中の言葉は妥当だと思う、田中に言われるまでもなく俺も感じている事である。
最近は俺の存在が俺の知らない奴に認知されていたり、クラスでも声を掛けられたり、何かと昼飯や遊びに誘われる機会が増えている事を否定出来ない。
高校入学当初の俺は、そりゃ陽キャやリア充といった枠組みを夢見ていた事もあった。
だが……俺には不相応と早々に判断した結果、陰キャである俺の確立へ繋がっている。田中と俺の考えが当たっているなら、悪い事じゃない……そう断言できる。
そして、仮に田中と付き合うとしてその事象がクラスに認知されると、学年全体に拡散するだろう。
あの田中の男という看板を首からぶら下げた俺が、陽キャや一軍、リア充というカテゴリに挨拶をするのも時間の問題だ。
リアルシンデレラボーイの誕生だ。
ただ、その認知と引き換えに俺は大切な物を失ってしまう気がする。何か違和感を感じてしまうのはそのせいなのだろう。
多分、俺はこのままじゃいけない、先に進まざるを得なくなったとしても俺には成すべき事がある。
「難しい顔して何してんの? んで赤と緑とか派手だけど時期的に合ってると思うけどどう?」
俺が考え事をしている最中にも田中は俺のマフラーを選んでいたらしい、しかしそのカラーリングはいけない。
「それは一番ダメな組み合わせだ、俺はアンチクリスマス教に入信しているからな」
「絶対に信者アンタだけっしょ……。まぁアンタが嫌なら他の探すけどね」
いや、藤木田とか正敏とかもいるし……うん。何ならガチモンの陰キャの古川くんとかも入れてやってもいい。
そんなブラックサンタを崇拝する俺に田中は、次の品を提示してくる。
「これとかシンプルだけどどう? 色が白に見えるけど、ちょっとだけ水色っぽい感じ! 何よりヤバいのがこの値段でカシミヤの割合が良い感じなんだよね、流石に純粋なカシミヤだけじゃないんだけどアタシ的にも欲しいくらいだし!」
「お、おう……」
ほぼ白と言っても過言では無いが、確かにほんの少しだけ水色っぽいような色をしている、田中がこれだけ推すんだから本当に良いのだろう、田中の言ってる事はよく分からないが、ふわふわしてる。
「じゃあこれにする、レジに行ってくる」
「アタシも行こっか? アンタ店員と話すのさえぶっちゃけ嫌っしょ?」
本当によく見ている、店員どころか知らない人間と話すのさえ結構苦痛だ、真っすぐ見てくる目が嫌いなんだよな……。半面、そういう人間に限って人を出し抜いたり、内面真っ黒で気持ち悪くて仕方ないのだ。
しかし、このタイミングは絶好のチャンスだ。
「いや、社会勉強だ。俺は一人でレジへ行く」
「レジに一人で行くだけ社会勉強ってアンタ……、まぁいいけど」
「後、悪いんだが少し喉が渇いた。これで田中と俺の分の飲み物何か買っといてくれ」
「あんがと、んじゃあっちのベンチにいるから!」
タイミングを伺っていたが、今回に限りあちらさんからやってきてくれて楽でいい。俺は田中に小銭を手渡し、店から田中を遠ざける。
田中の後ろ姿を数秒眺めて俺は田中に選んでもらったマフラーを二本手に取りレジへ向かう。ぶっちゃけもっと安いと思っていた、消費税入れたら諭吉さん超える手前だが……まぁいい、これでも日頃の礼としては安いくらいだ。
レジは人が混んでなくスムーズに会計を進める途中で俺は店員へ告げる。
「あっすいません。一本だけプレゼント用に包装してもらっていいですか?」
最後まで見ていただきありがとうございました!!




