秋愁における青春の談話
今日の更新になりますですよ
池田の誘いを断ろうとかと思ったが、結局同じ学校に通っている訳で先延ばしにしてもいずれボコられるので俺は覚悟を決め……るわけもなく死んだ目になりながら全てを諦めていた。
しかしながら、もし俺がボコられようならすぐさま職員室へ乗り込んで池田を停学……いや、退学へ導いてやろう。
俺はこれから起こり得る未来を想像しつつも僅かな抵抗を頭に思い浮かべる。
「ちょっと待ってろ」
そう言い、池田は運動部用に設置されている自販機で飲み物を買い始める。俺をボコって汗を流した後の水分補給用だろうか? そんな事を考えていると池田は俺の方を振り向き。
「ほら」
自販機で購入したスポーツ飲料を投げ渡してくる。いきなりの事に慣れてない俺は取り損ねそうになるがどうにかキャッチを成功させる。
「……お前ドンくせぇのな」
「咄嗟の事態に対応できる人間なんてそういないだろ、ましてや俺には今みたいに飲み物を投げられた経験なんてないからな、俺がドン臭いかどうかは、一連の流れでは測り切るのは不可能だ」
「……めんどくせぇ」
そう言いながら、池田は俺に手渡した飲み物と同様の物を自販機で購入すると自販機前の石段に腰掛ける。
え? 何座り込んでるの? 殴らないの?
「おい、座れよ」
棒立ちしている俺に池田は急かすように石段に座るように首の動きで合図をしながら飲み物の蓋を開け一気に半分ほど喉に流し込んでいた。
俺は池田に背後を取らせまいと池田の座った場所より一段上に座る。
「なんで横じゃねぇんだよ……話辛ぇだろ」
「え? あぁ別にここでも話せるからいいだろ」
池田の一言で発覚したが、どうやら俺をボコる為ではなく何か会話を行う為に呼び出したようであった。それならそうと面を貸せなんて言い方じゃなく普通に用件を述べて欲しいものである。
「付き合ってもらってんのにこんな場所で悪ぃな、金が無ぇんだ」
本日二度目の池田の謝罪に驚愕。俺が知らなかっただけなのか元々池田がこういう人間が本来持っている要素を持っていたのか知らないが、俺が思っていた池田という人間像とは少し異なっていた。
「あ、あぁ、それで用件はなんだ?」
「い、一応聞いておく、一応だからな、何か深い意味とかそーいうのはねぇんだけど……」
何やら言い淀ねていると言うか、要領を得ないと言うか、池田らしくない予防線を張るような言い方をする。恐らく俺にしか聞けない事だろうが、本来俺に知られたくない事を話してくるのだろう。
「あぁ、誰にも言わないからとりあえず何で呼ばれたかの要点だけを知りたい」
「マジに言わねぇんだな!?」
池田は振り向き、物凄い目を見開いて俺に確約を求めてくる。
もちろん池田との話なんか大した話題にもならないし言うつもりは無い、俺に実害が無ければの話だけど。
「あぁ、というかクラスでの俺の信用度なんて皆無だろ? 池田にこんな話をされたって言っても耳を傾ける奴なんかいない」
「それもそうだな、心配しちまったぜ」
……デリカシーの無い奴だ、そこは嘘でもいいから否定してもらいたい、四人くらいはいる、藤木田とか黒川とか藤木田とか黒川、いや二人だったわ、うん。
「それで何を俺に聞きたいんだよ」
池田は一瞬間を置きながらどう言ったらいいかを考えている様子だ、頭に手を置いて後頭部を少し指で掻いたりでこを指でトントンとする動作をした後に口を開く。
「お前……綾香と付き合ってるのか?」
考えた後にまとまらず池田はストレートに俺を呼び出した内容を告げてくる、体育祭の時のロリ子の言葉を思い出す。
どうやら俺が思っているよりもロリ子のあの発言は池田にクリーンヒットしていたようだ。そして俺を目の敵にしていたのは体育祭の練習がキッカケだと思っていたが、恐らくそれよりも前の話で宿泊研修後から因縁を持っていたのだろう。
そんな池田の言葉に対して俺は天邪鬼を発動させる事もなく素直に現状を伝える。
「いや、付き合ってないが」
「そ、そうか。話はそれだけなんだよ、マジで、絶対に言うなよマジ」
どれだけ念を押すのだろう、そして口調が早い事から池田として俺に聞くのは勇気が必要な事だったのだろう、しかも一番聞きたくない相手に聞かなければならなかった。
俺は池田が嫌いだ、クラスどころかこれまで出会ってきた人間の中で尤も苦手だ。暴力性が感じられる発言や体格を利用して弱者を黙らせる発言だったりと俺が嫌いな要素しか無かった。
ただ……さきほどの弱々しい一面を知って、池田も俺と同じ青春に溺れている存在に違いないのだと認識を改めた。
「あぁ、それで話は終わったなら俺は帰るぞ」
「まだだ、最後に言わなきゃならねー事がある」
え? まだあるの? もう早く帰って撮り溜めたアニメ見たいんだけど。これ以上俺と池田に話す事なんてあっただろうか?
「まだ何かあるのかよ?」
「……体育祭の時、後さっきの事……悪かったな。それだけだ」
本日三度目の池田の謝罪、レアの連発だな。
しかし、これに関しては成長なのだろう、池田なりに思うところがあったという話なのだ。もしかしたら田中にあの後ボロクソに言われて謝るタイミングを伺っていたという事もあるけど、悪い気分ではない。
少しだけ池田という人間に触れられた気がするのだった。
「そうか、まぁ今日の事は他言しない、そんじゃ」
そう言って俺は池田の謝罪を受け止め石段を登り校門まで歩こうするが――。
「あっあと一つだけある」
さっきのが最後じゃなかったのか、頭が悪いのか言いづらかったのかは知らないがさっさと終わらせてほしいものである。
「なんだよ?」
「さっきの会話で分かったと思うが、俺とお前はライバルだ! 本当にこれだけだ」
そう言って池田は俺とは別に校舎の中へ入るように校門とは別方向へと駆けていく。
ライバル……? 蟠りが解けたと思っていたが、どうやら池田は勘違いをしている。訂正しようにも本人は既に走り去っているし、訂正しなくても問題は無いのだろう。
勝手にライバル認定をされて何やら別の亀裂が生まれそうだが、どうしようもなく俺は今日の出来事を頭の片隅に置いて校門へと再度歩み始めるのであった。
さいごまで見ていただきありがとうございました。




