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秋愁のS極とN極

今日の更新です!

 どうやら俺達の学校の文化祭は十一月にあるらしい、俺が詳しい日程をしったのは先刻の事だだった。今教卓ではいつも通り担任の佐々木がサボりたいのか生徒の自主性を育む為なのかパイプ椅子に腰かけている横で陽キャ兼クラス委員の田辺と高橋による文化祭の出し物決めが始まっていた。


「んで~俺達のクラスで何かやるかって話なんだけど高橋が黒板に書いたリストの中から決めようと思うんだけど……今のところ話し合い出来る状況じゃないってゆ~か池田待ちなんだよね」


 池田待ち? その言葉で教室を見渡すが池田の席と思われる場所だけ空席となっていた。トイレにでも行っているのだろうか? それなら池田抜きで話を進めていても問題無いと思うのだが。

 そう考えていると教室後方のドアが開き相変わらずデカイ図体をした池田が入ってくる。


「悪ぃ! 遅くなっちまった」


 池田の脳内に謝罪という概念が存在していた事に驚く。体育祭でも池田の立場がランクダウンしなかったのは俺が大胆に帰宅を決め込んだ後に、クラス全員に謝った可能性があるな。どうでも良い事だが。


 池田は高橋にルーズリーフを一枚手渡すと、自席へ戻って行って即座に寝始めると思いきや今日は珍しく起きている。

 池田も学校というのが何をする場所なのかようやく理解したのかと心の中で拍手を送りたい、そして池田の席の付近で寝ている黒川は池田以下の存在になってしまうのではないだろうか?


「あ~これマズったくない?」


 俺が一人、意味の無い考察を頭で展開していると田辺のやらかしてしまったと感じ取れるような発言が気に掛かり田辺の方へ視線を移すと、田辺の後方の黒板に幾つか書かれていた文化祭の出し物候補が一つしか残っていない状態となっていた。


「でも被る方がマズいしいいんじゃね? パッと始められんじゃん」


 池田の行動の謎が俺には解けた、というよりちゃんと話を聞いていたクラスの連中の大半は俺よりも先に分かっていたと思う。


「んとさ~ほかのクラスの出し物確認しに行ってもらってたんだけど……俺達のクラス以外決まっちゃってたんだわ~」


 そう、田辺の言葉通りで池田は他クラスの出し物の調査をしに行っていたのだ。そして高橋が幾つかの候補を書いて消した理由も分かりやすく、俺達のクラスの出し物は……。


「強制的にお化け屋敷しかないんだよね、一年の辛いとこだわコレ!」


 田辺の発言でクラスが騒めきだす、耳を澄ませてみると意見は二分割されていた。

 お化け屋敷を肯定する連中と設営と多数の役割を必要とする事に対して不満を持つ否定する連中の二極化である。

 ちなみに俺も否定派であるが、否定しようが候補は一つしか無くなってしまっているので無意味な事である。


「つーわけで強制的に一年四組の出し物はお化け屋敷になりました~!」


 田辺が雰囲気を統率しようと声のボリュームを上げ勝利者のように腕を天井に着き上げるようなポーズを取るが、拍手は少なく不満の声は止む事は無かった。

 そしてここから更に不満の声が増長する事を俺は知らなかったのだ。


 世の中の嫌われる人間と言うのは様々な種類がいる。

 このクラスでは意見を主張せず自主性や協調性の欠片も無い陰キャと大して何もしないのにスピーカーとしての機能が発達している陽キャである。ちなみに此処に該当するのは俺と池田だ。

 出し物決めが終わったタイミングから俺達のクラスでは急ピッチで設営に必要な木材やら暗幕やらの調達に出かけた生徒達、現在ある資材で作業を開始する生徒達に分かれていた。


「お前さぁ、もっと早く釘打てねぇのか?」

「じゃあ、お前が手本見せてくれよ」

「やってやんよ、どけ!」


 そう言って池田は俺のポジションを奪い取り木材を組み合わせて釘を打って手本になろうとしているのか? 俺との差を見せつける為かデカイ図体で細かい作業を黙々とこなしていく。


「ほら、お前よりはえーだろ? このくらい気合入れろや!」


 池田から手渡された木材を確認すると釘は中途半端に刺さっていて場合によっては怪我をするし木材の組み合わせ自体が雑でそもそもズレている。


「いや、これ木材ズレてるし釘の差し方雑だからやり直しだろ」

「あ? 普通だろ! テメェがイチャモンつけてるだけだろ、クソ陰キャ!」

「これが普通だと思えるなら随分程度が低い、小学生が図工の時間に作る作品にも劣る。デカイ図体してるのが理由でこんな簡単な事すら出来ないのか?」

「チビのくせに調子乗ってんじゃねぇぞ! 俺より出来が……多少、多少だがマシでも遅くちゃ意味ねーんだよ、他の作業と足並み揃えなきゃ他が停滞すんだろ!」


 その言い方と表情だと俺の方が質は上って認めてるようなものじゃないか、しかしここまで主張するって事は俺の作業スピードは遅いのだろうか? やる気とか一切無いし遅いのは妥当だ。

 隅の方で作業をしていた俺と、監督である池田のマウントバトルは終わりを知らない。


「アンタら……他の邪魔になるから出てってくんない?」


 見かねた田中が俺を助けに来たのかと思っていた。恐らく池田も同じ事を思ったのだろう。あの勝ち誇った表情が笑える。

 しかし結果は両者追放である、恐らく俺も池田のように勝ち誇った表情から絶望の表情にシフトしたのは言うまでもない。


「……お前のせいで追い出されちまったじゃねぇか」

「そんじゃ俺はサボりの免罪符を手に入れたんで帰る」


 そう言って俺は意気揚々とした気分で帰宅しようとするが……。


「おい、ちょっと面貸せよ」

「え?」


 何やら不穏な言い回しをする池田に完全にビビる俺、どうやら別の意味での青春を体験出来そうだがボコるのだけは勘弁してもらいたい。

最後まで見ていただきありがとうございました!!

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