秋愁における俺の青春の一幕のフィナーレであると言いたかった
きょうのこうしんです!! もしかしたら 描写が弱いので後から肉付けする可能性はありますが!ハロウィン編はこれで終わりとなります!
次回から三章ラストの文化祭編に入りますです!!!
ハロウィンイベント当日の夜、全校朝会のように並ぶ生徒の数は少なく、俺達を囲むように並ぶ教師の姿も普段より少なく俺としては人が少ない事から多少気分が良い。
そしてジャージや制服の生徒が多い中、ポツポツとコスプレをした生徒達の姿が見受けられ異様な光景となっている、俺達のクラス担任である佐々木も何故かドラキュラのコスプレをして学年主任の教師に怒られている様子もあり普段の学校とは雰囲気がまるで違う。
俺はナース服を着て、ロリ子から手渡されたカメラをぶら下げた変質者だと思われている事も間違いはない、先程から度々至る方向から視線を感じる、来て早々だが、既に帰りたい。
生徒会長による開催宣言が行われ各生徒はスマホで写真を撮ったり談話したり、生徒会の協力を申し出た料理部が提供する料理を口にしたりと楽し気な様子が伺える。
「木立氏! に、似合ってますな!」
この場合は俺を慰めているのかバカにしているのか判断し辛くて困る、後者ならば俺の拳が藤木田の後頭部に拳を振り下ろしている。
いや……身長的に届かない、ダメだ。
「……そりゃどうも、そんで藤木田は楽しめてるのか?」
「えぇ、某もコスプレをしている事から他のクラスや学年の方々と交流を深める事に成功しておりますぞ!」
藤木田はどうやら今回のイベントも心から楽しめてるようでなによりだ、黒川は普段飯を食わせてもらってない人間のように料理部の料理を口に放り込む機械と化している様子が伺える。
「……木立氏! 某はもう大丈夫ですぞ!」
「何の事だ?」
「木立氏が事あるごとに某を心配するような声を掛けたり視線を送っているのは流石に気付いてますぞ」
「……流石に考えすぎだ、というか俺を神格化しすぎだ」
笠木だけではなく、藤木田もまた気付いていたのだろう。
陰キャの俺が視線を強く感じるように藤木田もまた陰キャであり、俺の視線や考えを多少なり読めるのは当たり前の話だ。
「神すら存在しないと断言していた中学時代から一転、陽キャではありませんが、某の青春に彩を与える事になったのは木立氏ですからな、少しくらい崇めても罰は当たりませんでしょう、罰を与える神など存在しませんが!」
皮肉を言う藤木田は言葉だけじゃなく笑顔で俺に告げているのだ。
安心して良いと。
しかしだ……何を言われようが、これからも俺は俺の周りの人間を何度も心配してしまうだろう。解決出来るかは別としても、こんな俺と親しくしてくれる人には笑っていて欲しいのだ。
「恐らく黒川氏も某と同じ考えだと思いますぞ、黒川氏が周りにいなければ、直ぐに辺りを見回して動向を確認したりする木立氏は少々見ていて面白かったですな!」
「……何? ハロウィンって俺を辱めるイベントなの?」
言葉通り、流石に恥ずかしくなってくる。しかし藤木田の言いたい事は大体分かっている。
高校入学から俺のやってきた事は無意味な行為では無かったのだと今は思える。何度も失敗したし後悔もしたけど藤木田や黒川に限らず笠木や田中、そして今回のイベントに置ける主役とも言える立場のロリ子。
俺が関わってきた人達が各所で楽し気に過ごしている光景は見ていて悪くない。
「だから木立氏も今は……カメラマンとしての役割ではありますが、これからは自分の事に注力してほしいのですぞ」
「元々そのつもりだったけどな、そんじゃ俺は社畜張りに最後の残業するから黒川でも止めてこいよ」
「それではいってきますぞ!」
今日を持って俺の青春における悩みの種とその後処理は全て終了して日常という風景が戻ってくるだろう、少しばかり名残惜しい気分……にはならない、本当に済々する。
が、また何かあれば俺は何度だって苦難に立ち向かうだろう。失敗はするし成功の方が少ない人生だ。
塾の頃とは違い、傷の無い藤木田の顔。
人目を気にせず料理部の料理を食い尽くす暴食の大罪を持つFPS廃人。
自身の役割を完璧に俺とお揃いのナース服をイジられて赤面し俺の方へ視線で助けを求める田中。
自分の好きな事を少しだけ周りに教える事の出来たロリ子。
そして……。
「木立くん、お疲れ様」
「たまに依頼があったら写真撮るだけだから疲れてない、名も知らない奴にも頼まれるのは癪だけどな」
相変わらずに素直じゃない俺。
陰キャの殻を破り、八方美人という天使の笑顔を振り撒く笠木も変わらずに健在だ。
「木立くんは縁が出来るの嫌がるみたいだけど、それだけ必要とされてるって事だと思うよ」
必要と言うよりも良いように使われているの間違いだと思う。これは天邪鬼でも何でも無く俺が必要とされたい人間に必要とされていれば俺はそれでいいのだ。
「それで笠木は何か用か? 田中が随分と困ってる様子だが」
「綾香はいいの! ツンツンしてる綾香も可愛いけど、慌てたりしてる綾香可愛いから」
何やら特殊な趣向が伺える発言とも捉えられるが、触れないでおこう。
「それでね、木立くんに写真撮ってほしくて!」
「分かった、笠木一人で映っている写真か?」
俺はパイプ椅子から腰を上げ立ち上がり、ロリ子から借りているカメラを掲げようとするが、笠木は手を前に出し、そうじゃないと言わんばかりに手を制止する合図を送ってくる。
「えっとね、私じゃなくて……半分くらい私なのは間違い無いんだけど」
「……どういう事だ?」
「個人的な写真なんだけど木立くんと写真撮りたいかな……ダメ?」
「いやダメじゃない! 撮ろう、至る角度から、数百枚程! 今直ぐ藤木田にカメラマンを押し付けよう!」
俺は藤木田を呼び臨時カメラマンとして起用しようとするが、笠木は俺を制止するように言葉を放つ。
「ス、スマホで大丈夫だよ! 後一枚でいいかな?」
「そうか……」
待て……笠木の魔女姿は映えるから良いとして、俺はナース服なんだが……。カッコよさとか皆無どころかマイナスへ振り切っているんだが?
「着替えてきてもいいか? 家まで三十分くらいかかるけど」
「え!? そのままでいいよ、じゃあ撮ろっか!」
そう言って笠木は俺の方へ肩をくっ付けてくる、そういえば宿泊研修のバスでもこんな暖かさに触れたと思い出していると笠木は右手でスマホを掲げ一瞬フラッシュが点灯する。
「撮れたのか?」
「……うん! ありがとう、それじゃお仕事頑張ってね!」
撮り終えると笠木は俺の方へ手を振り、田中の方へ走っていく。
何やらあっさりしすぎて寂しいが、ここは現実であり青春ラブコメのような濃密なラブコメ展開は有り得ないのだ。
そういえば、俺にも写真を送ってくれって言いそびれた。
まぁ、そんなのは後からでもいいかとハロウィンイベントに身を投じる生徒達の群れを眺める。どいつもコイツも楽しそうな笑顔で天邪鬼な俺は普段なら皮肉を言っているものだが、今日くらいはいいだろう。
俺も随分甘くなったものだと思う。
秋の憂鬱は過ぎ去り、訪れる冬の寒さを薄いナース服で感じつつも遠くから俺を手招きするロリ子の姿に応じて俺は齷齪と最後の一仕事をこなすのであった。
最後まで見ていただきありがとうございました!!!まん!!!




