秋愁とやらは些細な出来事で後方へ流れる
今日の更新となります!!!!!!またTwitterでの通知が出来なくてすみません、昨日は寝てました!!!! たっぷり寝てました!!! どっぷりと睡眠という湯船に浸かっておりました!!
ハロウィンイベント当日の朝、俺は憂鬱だった。
昔からたまにある事ではあるが、何か調子に乗ってその場ではイキってしまったり、些細な出来事でも俺には深く突き刺さり寝て解決するなんて簡単な性格をしていない俺は翌日に引き摺ってしまう癖があるのだ。
そういえば、放課後の教室で藤木田と逃げるように脱出した時も、翌日はこんな気分だったし、なんなら宿泊研修での勘違いから始まり田中と縁が芽生えた翌日も悔やんでいた覚えがある。
そして今日の後悔は、もちろんハロウィンイベントの事と言うよりかは、田中と俺のお揃いナースコスプレの件である。
その場では売り言葉に買い言葉とは少々異なっているが似たようなケースで自らコスプレを強要するような発言をしてしまったわけである。
「黙ってヤンキーのコスプレの方向性を崩さなければよかった……」
今日の夜に行われるハロウィンイベントを想像する。俺のクラスの円卓の騎士共はもちろんの事、他のクラスの名も知らぬ陽キャ軍団に弄られるのは明白だ。
いっその事、学校自体休もうか? と言う考えが浮かんでくるが、脳裏にはロリ子が俺に詰め寄ってメンチを切ってくる光景が見え隠れしている。
これも定例と呼べるのだが、どれだけ嫌で逃げたくても俺は結局戦場へ赴く事になるのだ。普段は脳筋のような考え方を毛嫌いしている俺だが、こういう時には根性論や行けばなんとかなるという考えに助けられている。
秋の憂鬱は問題が解決しても過ぎ去る事無く冬を間近にして俺に重く圧し掛かっている事には変わりは無いのだ。
学校に到着すると藤木田は既に登校していて俺が来るや否や、待ってましたと言わんばかりに俺の席まで歩いてくる。
「木立氏! トリックオアトリートですぞ!」
こういうイベントに弱いのが藤木田だ、恐らくイベントを満喫したいが、そこまで親しい友人もいない事から俺が来るのを待ちかねていたのだろう。
「それは夜やっとけよ、俺は憂鬱なんだ」
「まだ昨日の事を引き摺っておられるのですか……いい加減腹を括るべきですぞ!」
「腹は括ってる、しかしだ……それでも溜息は尽きないものなんだよ」
「某は当事者ではないので木立氏の気持ちは分かりかねますが、いつもと比べると些細な問題ではないですか」
藤木田の言う『いつも』とは高校入学からこれまでの俺に降りかかったイベントの事を指している、確かにこれまでの苦難に比べるとミジンコレベルの問題だ。
「些細な事でも問題には変わりはない、まぁこれも後処理みたいなものだし今日でようやく真っ当な青春を心置きなく始められる」
藤木田は俺の言葉を聞いていないようで何やら考え事をするように顎に左手を重ねている。
「脈絡の無い話ですが、木立氏は色々抱え込み過ぎだと思いますぞ」
「本当に脈絡が無いな、ついでに意味も分からない」
「今のところ結末としては悪くない方向に流れているとは思いますが、キャパシティの問題で木立氏の能力というか立場では解決出来ない問題が降りかかった時が心配でありますぞ」
今までの問題もすんなりと解決してきたわけじゃないから、既に俺のキャパは超えている。ただ俺の解決出来ない問題と言うのは何を指すのだろうか?
「そんな問題なんてもう無いとは思うけど、その時にならなきゃ分からん」
「そうですな……朝から暗めの話をしてすみませぬ!」
「俺達は根が暗いから暗い話の方が丁度いいだろ」
藤木田と朝の一幕を終えて、いくつかの授業を終える。
それにしても最近授業がつまらない、いや語弊がある。
元々つまらない授業を笠木ウォッチングをする事で折り合いを付けてきたのだが、笠木が俺の視線に気付いている事から笠木の方を敢えて向かないように気を配っているまである。
でもたまにはいいよな? 俺が笠木の方を向くと笠木も授業に集中しておらず何やら内職をしているようであった。
「何してるんだ?」
「ふぇ!? あっ……えっと、隣のクラスの子がネックレスの鎖切れちゃったって言うからなんとかしてみよっかなって」
相変わらず八方美人を振り撒いている笠木だが、流石に女性の力では難しい作業だろう、ロリ子ならまだしも……。
必死に力を込める笠木も可愛いが、笠木の白い指が赤く染まっていくのを見るのは俺の趣味じゃない。
「ちょっと貸してくれ」
「え? いいよいいよ!」
「それだけ力を込めてもどうにもならなそうだし、俺が一回やってみる」
笠木の手から俺にネックレスが渡される。笠木が繋ぎなおそうとした部分は触れてみると、他の部分と比べて熱を持っていた。
ある意味、笠木との共同作業みたいなものだ。流石にいくら俺がモヤシでもこのくらいは自力でどうにかしてみせようと力を込めると徐々に鎖の輪の隙間が縮まっていく。
「これでいいか?」
俺は輪の隙間が無くなったネックレスを笠木に手渡すと笠木はネックレスではなく俺の方を見続けている。
あれ? またオレ何かやっちゃいました?
「……ありがとう! 木立くんって結構なんでも器用にこなすよね」
「今回のは器用と言うより力技だけどな、向き不向きもあるから俺にも出来ない事くらいある」
「安川さんに木立くんが直したって伝えておくね!」
誰だよ……そんな奴なんか正直どうでもいい。俺のヒロインには成り得ないだろうしな。
「いや、無駄に縁を広げたくないし笠木がやった事にしといてくれ」
「ん~わかった! 木立くんは見返りとかメリットとかって気にしないの?」
笠木の言う見返りとは、今回の事で言うならば安川さんとの接点や貸しという意味だろうか? もちろんメリットや見返りはほしいが、笠木が困ってたら見返りとかメリットが無くても助けるのが俺の中の常識だ。
「いちいち気にしてたら頭がパンクする」
「そっか、木立くんみたいに考えられる人って珍しいと思うしいいかも」
何? いいかもって何? 予期せぬ好感度上昇? ステータス上がった? ワンチャンあるの?
やっぱり青春というのはこうでなくちゃならない。些細なイベントの積み重ねで一喜一憂する光景こそ現実での青春ラブコメに相応しいのだと俺は思う。
最後まで見ていただきありがとうございます!!!




