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秋愁と青春を謳う者たち

居の更新分です!!!

 俺が後ろ指を指されながらも昼食時に教室から逃げる日々が終わりを告げてハロウィンイベントまで残り僅かとなっていた水曜日、平日五日間のど真ん中、身体に怠さが残る最低の曜日だと俺は考えている。そんな中、久々に友人たちと昼食を共にしていた。

 ロリ子との邂逅を経て、俺がハロウィンイベントに参加する旨を伝えたところ藤木田はいつにもまして笑顔の光を強めて、面倒な事を言い始めた。


「それでは某達も何かコスプレをしませぬか?」

「いや、だから俺はとある事情からカメラマンとして参加するんだよ」

「カメラマンがコスプレしてはいけないという参加規約でもありましたかな?」


 確かに言われて見れば、そのようなルールは無いだろうし藤木田の言う事は間違っていない。

 けれども……カメラマンと言うより俺がコスプレをしなくてはいけないルールも同時に存在しないのだ。

 正直な話、コスプレをしてもしなくてもどうでもいいのだが、ロリ子相手にカメラマンをするのだから楽な恰好で目立たず無難に終わらせたいのが俺の本音だ。


「騙されんぞ、巧みな話術で俺を騙そうとしている顔をしている」

「考えすぎですぞ……もう少し某を信用すべきですな」

「同感だ、俺もコスプレに興味が無いわけではない。藤木田がコスプレをしてみたいなら俺も付き合おう、そして木立……俺達仲間だぞ」


 いやいや、お前らがコスプレをするのは勝手だが、仲間とか言う曖昧な表現で誤魔化した絆を主張しないでもらいたい、なんか良い事言ったみたいな顔を止めてもらいたい。

 声に良い感じの太さがある黒川が言うと、それっぽいのだ。

 しかし、俺は騙されんぞ……。


「いや、俺は不本意ながらカメラマンとしての参加を余儀なくされているからそっちに専念したいんだよ、いいか大事な事だぞ」


 俺の言葉に藤木田と黒川は表情を暗くする、これもわざとだろうか? あまりの落胆ぶりに俺が悪い事したみたいに思えてくる。それにしても黒川は半分俺で遊んでいるような物だろうが、藤木田が何故ここまで執着するのだろうか?

 学生特有の青春に興味津々といったところなのか?


「夏休みは殆ど木立氏との思い出が作れませんでしたので、木立氏メモリアルが足りていないのですぞ!?」

「そうだ、木立が悪い!」


 俺がどのような意見を述べたところで数の暴力には敵わないのだろう、確かに夏休みは色々忙しくて頻繁に黒川と藤木田と会っていた記憶が無い。

 平日の放課後に遊びに行く程度の頻度でしか無かったと思う。

 しかし、俺としては今更なのである、後二回も夏休みが訪れるのは間違いが無いのだから、一度くらいそういう夏休みが存在していてもいいだろう。

 なので……数の暴力に負けると分かっていても俺にも抵抗する権利はあるのだ。


「思い出は、自ら作りにいく物じゃなく、気付いたら其処に在るべき記憶だと思うんだ、それでたまに思い出して笑みが零れる。そんなもんだろ?」


 藤木田と黒川の表情を見ると二人ともハッとしたような表情を浮かべているように俺には思えた。どうやら俺の言葉に納得してくれたらしいと俺は胸をなでおろし購買のパンの袋を破る瞬間。


「何か良い事を言ったような振りをして誤魔化さないでほしいですぞ、今日の放課後はペラペラで低クォリティなコスプレ衣装を買いに行くのは揺るがないのですぞ」


 抵抗はしてもいい。

 だが……無駄である。俺が本日学んだ教訓であった。


 放課後、難なく藤木田と黒川と大型ディスカウントショップへ向かっていると藤木田が何やら久しぶりに陰キャらしい事を話題として出し始めていた。


「某も幾度となく店の前までは足を運んだのですが、どうもあの手の店に入るのは少々抵抗がございまして……」

「店によって客層が存在するからな、確かに俺もイメージとしてはパリピやDQNといった陽キャとはまた違う苦手な人種が客層として選ばれている感が拭えないのは事実だ」

「俺は存在すら知らなかったが、パソコン用品やモデルガンもあるのだろう?」


 おかしいな、お昼はあれだけハロウィンイベントのコスプレの主張をしていたのに一人だけ興味が別の方向へ向いている。

 ある意味ブレていないという捉え方も出来るのだが……無理やり連れてこられた身としては釈然としない。


 大型ディスカウントショップの前まで到着すると見知った顔があり、見知った相手も俺達の存在に気付いたようだった。


「アンタが外にいるなんて珍しいじゃん」

「何を言う、俺は陰キャの中では比較的アクティブな方だぞ、自宅付近のコンビニとか行くしな、一人で」

「いや、それ出掛けた内に入らないから……そんで何処行くつもりなん?」


 田中の問いかけに俺は目の前の大型ディスカウントショップに指の先を向ける。


「アンタもこういうところ来るんだ、意外……ねぇ眼鏡と暗いの」

「田中女史いかがなさいましたかな?」

「木立、呼ばれてるぞ」

「自己分析が足りてないぞ黒川、客観的に見れば答えは一つだ」


 いや……俺も暗かったわ、うん。

 俺と藤木田と黒川の内、明るいのは藤木田のみである。


「お願いあんだけど、ちょっと木立借りていい?」


 田中の問いかけた内容に間髪を入れずに藤木田は答える。


「どうぞ! 持っていてくだされ!」

「ここからは分隊行動だ、生きていたら会おう」


 俺の連絡先がフリー素材となったのがこの間の出来事だったと言うのに、ついに俺の存在までもがフリー素材と化してしまったらしい。

 しかし、ここで俺が拒否をしても話は進まないのは分かり切っている、俺は特に反論もせずに流れに身を委ねる事にしたのだった。

最後までみていただきありがとうございます!!!!

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