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青春ラブコメは存在しない?

 青春の一幕を経て、藤木田の希望通り駅前のカフェへ藤木田と向かう事になった。


「しかしだ、藤木田……やはりお前との友情で三年間過ごすのも悪くはないが俺はラブコメがしたいんだ、ハーレムやら実はクラスのあの娘はアイドル!? なんて物じゃなくていい、というか現実にあんなのがあったらやり過ぎどころではない。ささやかでいいんだ、人並に自転車の二人乗りをしたり、一緒に登下校するような存在が欲しいんだ!」


「そのくらいだったら某が付き合いますぞ!」


 藤木田は先ほどの一幕以降機嫌がいいのかエネルギッシュとも取れる様子である。

 しかし、そうじゃない。藤木田は分かっていない、エレキギターとエレキベースくらい違う。

 男と男のラブコメなんざ俺は求めていない、それはまた別の友情という青春の要素で置いておきたいのだ。


「それは既に半分ほどやっているけど、俺が言っているのは、男女の青い春みたいな……もっとほんのり桜色みたいなだな……」


 自分でも思うがピュア過ぎる。何かこれまで経験してこなかった分野の為、どこか言葉にすると恥ずかしさが押し寄せてくる。


「木立氏の言い回しは気持ち悪いですぞ……某以外の人間の前で言わない方がいいですぞ、ドン引きされますぞ」


 えぇ……めっちゃ嫌そうな顔しながらディスるなよ、陰キャの心は百均に売ってるゴム風船より薄くて柔らかいんだ、丁寧に扱ってもらいたい。

 それとも言葉の裏を取るように、好意的と捉えた方がいいのだろうか? 他の奴に言わないで俺だけに言え! という男らしい意見にも解釈出来るな。

 ……いや、ないわ。


「こうしてカフェやファストフード店で夜中に駄弁るのも青春の形としては間違っていないが、青春は恋愛と思うんだ、欠かせない要素みたいな感じだ」

「某に関しましては、恋愛はあまり興味がないと言いますか今まで友情すら培ってこなかったのであります故……今はこの状態を楽しみたい所存でございますぞ」


 詳しい内容は聞いていないが、コイツ本当に小中とどんな扱いを受けてきたのだろう、少々顔が俯き声色が心なしかトーンが下がったように聞こえる。

 言いたくなったら勝手に語るだろうから俺からは聞かないけど。


「あっ! そういえばだな、今日の昼休みの話し合い以降、笠木が授業中に俺の事をチラ見してた気がするんだ」

「またその話ですか……陰キャ特有の病気と言いたいところですが某も少々気になる点がございまして、某、実は放課後に笠木女史に木立氏についての内容で話しかけられまして」

「え? 何それ、言えよ。 笠木が俺の情報を集めていたって事だな。よし分かった、ラブコメするわ」


 俺の食いつきように藤木田は若干顔を引きつらせる、でも仕方ないじゃないか、なんたってあのエンジェル笠木の話題だ、大げさと言ってもいいくらいの反応になるのは致し方ない。


「えぇ、マジでございますぞ」


 内心九割疑っていたが、笠木は俺に気がある可能性が……。


「笠木が俺の事を好きで絡みたいって話なら聞こう」

「いえいえ、木立氏のボーリングの参加の有無とグループチャットについての件ですな」


 あっ……間違えたわ、陰キャ特有の持病が発動してしまった。目が合ったら気になってしまうし、話しかけられただけでもう付き合ってると勘違いするし、俺の話題が口から出ただけで耳を傾けてしまう、俺だけじゃないはずだ、どこぞの青春ラブコメ主人公も似たような事言ってるし、陰キャの世界の常識だ。


 しかし笠木が俺をチラ見していたのは間違いなかったようだ、というか俺は視線に敏感な方だからかもしれないが、笠木も俺同様、視線に敏感だった場合には俺が笠木ウォッチングしているのもバレているのではないか?


「どうしました? 木立氏、いきなり顔が真っ青になりましたぞ、やはり寝間着で外に出たのは季節的に早かったのではないでしょうか?」

「いや……別件だとは思うけど、なんで笠木が俺の参加の有無を気にするんだ?」


 藤木田は少し考えるそぶりをしつつ藤木田なりの答えを提示してくる。


「某は笠木女史ではないので本心は分かりかねますが、笠木女史は誰にでも優しいですからね、グループチャットにも入っていない木立氏を単純に気にかけたのだと思いますぞ」

「あーそういう感じか……それが妥当だろうな」


 悲しい結果ではあるが解答としては俺も納得できる。

 笠木はスタンダードに見えない事もないが俺の目からは結構特殊なタイプだったりする、これも偏見になるが美人だとケバ子のように何か性格に欠陥があったりとどこか穴があるのだ。

 しかし、笠木に関しては欠陥が見当たらないのだ、そう完璧な模範的な美人な生徒であるからこそ違和感を感じる。

 欠点のない人間なんてこの世に存在しない、だからこそ完璧な笠木は俺の目には魅力的且つ非常に強固なペルソナを被っているように見えているのだ。


「そういえば木立氏に質問なのですが、笠木女史のどこに惚れているのでしょうか?」

「ん? 別に好きなわけじゃない、気になるだけだな。まぁ理由は二重の意味だけどな」

「ふむ……某は好きや気になるの違いがあまり分からないので割愛させていただきますが、外見や性格という事ですかな?」

「そうだな、ただ性格の部分が個人的にネックなんだよなー、悪い意味ではないんだが……気になる点があるというか」


 藤木田は納得しかねる素振りをしているところ悪いが、そろそろ帰らなきゃ時間的に両親が心配をする。


「んじゃ、今日は色々あったがそろそろお開きだな、いい時間だ」


 藤木田は全く時間を気にしていなかったのか焦ったような表情と仕草で店内の時計を探す、時計がないならスマホがあるじゃない、たまに抜けているんだよな。


「さようでございますね、それでは本日はこの辺で終わりですな、それでは店内から脱出を図りましょうぞ!」


 今はこうして何気ない会話を出来る事が俺の精一杯の結果であり、青春なのだ。

 こうして俺と藤木田の壁は無くなり、今日お互いに一歩を踏み出した。


 多分俺は壁を作り過ぎていたんだと思う、またそれを良い物と勘違いし拗らせてしまった。

 陰キャと陽キャという誰かが作ったカテゴリ、悪い事ではないと思う。

 煽られる目的で使用されている事もあるが……俺なりの青春を送るように、理想の青春を送れるように俺はこの高校生活で新しい一歩を踏み出すべきなのだ、藤木田がそうしたように。

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