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秋愁と大嘘吐きの美少女

妙に長くなりましたがキリが悪いのでそのまま続行しました><楽しんでいただけたらハピハピ♪

 決戦前の体育祭昼休み、俺は藤木田と黒川への役目を告げてクラウドさんが場所取りをしている保護者休憩スペースへ向かった、そして決戦前の平穏を噛み締めようとしていたはずだった。


「涼くん、私のからあげ食べる?」

「ふっ……いただこう! 代わりに俺のほうれん草のよくわからない料理をやろう」


 なんか上から目線だけど、それ元々クラウドさんが作った弁当だからな。そしてからあげの対価としてほうれん草のソテーは相応しくない、そもそもお前が嫌いなだけだろ。

 何よりも……いつの間にか下の名前で呼ぶとか俺が想像していたよりも甘い、デザートとかまだ手付けてないからね?


「木立氏、処しますか?」


 逆光で眼鏡の奥の瞳が見えないが、藤木田としても俺と似た考えに至り、殺伐とした脳内になっているに違いないのは明白だった。


「こんな事で処してみろ、俺らがラブコメに飢えていると認めるようなものだぞ」


 まぁ、俺に関してはラブコメ欠乏症なのは間違いないだろうけど。認めてはならない事実だってある。

 藤木田も例のコスプレイヤーとの件があるからラブコメと言うより現実的な恋愛に興味を持ったのだろう。


「そうですな、木立氏の言う通りでございましたな」


 藤木田も口元をキュッと結び堪えている……いや、耐えている。俺にもラブコメ的未来は訪れる機会があるのだろうか? とりあえずは今日の結果次第と言ったところだろう。


「涼くん、口開けて」


 クラウドさんの一言は幾多のラブコメ世界を第三視点として渡り歩いてきた俺なら理解出来た、そして隣にいる藤木田も俺程では無いにしろラブコメ世界を渡り歩いてきた猛者であり同様の理解をしているだろう。


 黒川は何の疑問も抱かずに口を開ける。見ていると何やら介護されている人のように従順である、最早飼われてると言っても過言ではない。

 案の定クラウドさんは黒川の口へ自身のからあげを詰め込む。


「むっ! 口を開けるだけで食事が取れるなんて夢のようだ! FPSをやりながら空腹を満たす事が可能だな、実用化を希望する!」

「あ、あ、それって……つまり」


 ここまでくると鈍感系や難聴系主人公なんて目じゃない、カバ系主人公として扱われるべきだ。そしてクラウドさんの言動が見るたびに強化されていってるのは黒川が無自覚ながら適切な選択肢を掴み取っている事によるものなのだ。


「木立氏、処しますかな?」

「ぜっころ」


 前言撤回、友人に使っていい方法じゃない事をしてでも黒川を粛清する事に決めた。


 ラブコメ映画を見ているようなお昼の時を過ごし、クラスの席へ戻った俺は作戦決行を待つ。陽キャグループとは別に席に座って休んでいた笠木の方を何気なく見ると、素早く俺の視線を察知して、しばらく見ていなかった笑顔を俺の方へ向けて二人三脚用の紐をヒラヒラと手で踊らせていた。


 恐らく俺の作戦は成功する。

 しかし、俺の作戦はフィールドを整えるだけに過ぎない。大事なのは後の事であり笠木では無く俺が行わなければならない事だ。

 そして笠木が席に座っている事が作戦の始まりを意味している。


 陽キャグループが昼から戻ってきたら笠木は動くだろう、そして田中は……。

 俺の知っている田中は必ず、手を差し伸べる。


 陽キャグループが戻ってきて、午後の体育祭開催の合図がスピーカーから流れていた。同時に午後の第一種目の生徒と、第二種目である二人三脚の生徒の招集が始まる。


 田中と笠木との負の三者面談の時から思っていたが、笠木は意外と演技派だ。笠木の方へ目を配らせると笠木は何やら痛がるように足首を抑えていた。

 俺は笠木の方へ近寄り声を掛けようとしたが、俺よりも田中が笠木の異変に気付く。


「雪、足の痛みは引かない感じ?」

「だ、大丈夫だよ! 二人三脚くらい……なんとか、痛っ!」


 田中が先に気付いたのは意外だったが特に支障はない、俺も笠木の方へと足早に近づく。


「何があったのか知らんが、笠木は二人三脚無理そうだな」

「大丈夫だから……出れるから!」


 笠木は声のボリュームを上げて周囲に聞こえるように懇願する、周囲の人間が笠木の状態に気付き心配する声を掛け始める。

 これでも足りているとは思うが、念には念を入れる。俺は藤木田と黒川の方へ視線を向け合図をする。


「笠木女史の言葉と表情が一致しておりませぬ、これは代役を立てる必要がありますな……」


 藤木田の言葉で代役を立てる方向へ周囲を誘導するが、余計な邪魔が入る。


「代役つったって相手はその陰キャだろ? 誰が一緒に走りてぇんだよ?」


 相変わらず池田は俺を目の敵にしているようだ、ガタイはデカイ癖に器の小ささが目立つが池田の言葉はクラスの人間には効果抜群だ。

 周囲の視線が俺に突き刺さるが、好意的な視線では無く哀れむのような視線だ。屈辱だし惨めだと言われている気分だ。


 クラスメイトの気持ちは分かる。俺のような陰キャと二人三脚に出るという事は、田中みたいにイジられる可能性がある、彼女らはそれを危惧しているのだ。

 傍観者で居たいと言うのは真っ当な判断で在り、理に適っている。


 俺は陰キャだ、これまで辱められることは幾度となく在ったし、これからの人生も間違いなくそういう風に出来ているだろう。客観的に見ていい人生を送っているとは言えない、むしろ最底辺と言っていい。


 ただ、お前みたいにガタイを利用した暴力で統制を行うような楽な人生を歩めなかった分、俺がお前如きに知略を含む作戦で劣る事は無いんだよ脳筋野郎。


 今日、この場に限り言わせてもらおう。

 俺は陰キャでよかった。


 池田には悪い……いや何一つ悪いという気持ちは湧かないが形振り構っていられないんだ、それすら利用させてもらおう。黒川と藤木田に再度合図を促す。


「田中……田中はどうだ? 身長差はあるけどな」


 最後の一言が余計だけど池田が下手に突っかかってくる部分を先に排除出来たと思えばいいのだろう、黒川にしてはナイスムーブと心で賞賛を贈ろう。

 黒川の発言で周囲の視線が俺から田中へとシフトする。それでも尚、葛藤している様子の田中に笠木が決め撃ちをする。


「綾香……ごめんね、お願い出来ないかな?」


 笠木の弱々しい笑顔は、先ほどの演技では無くこれまでの謝罪の意味も含んでいるのだろう。そしてお願いという言葉も恐らく……。

 笠木が手に持っていた二人三脚用の紐を田中は受け取っていた。


「木立……アンタはいいの?」


 そもそも田中が相手だと俺に拒否権は無いし、謹んで……いや快く俺の方から願いたいくらいだ。


「俺は知らない奴と足首を密着するよりもだな……た、田中がいいと思う、うん」

「……言い回しが気持ち悪いし、そこは言いきる方がカッコイイの覚えときな、とりま代役の事伝えに行くからついてきな」


 田中が二人三脚へ代役として決まると、空気とされていた池田が前に出て田中に詰め寄る。


「おい、あんな奴の為に綾香が代役に出る必要ねぇだろ!」


 コイツ何を勘違いしてるんだ? そもそも俺の為じゃなく笠木の為だろ。目的を履き違えるにも限度がある。


「あっれ~? 池田の言い方って~綾香と木立くんが組むのに抵抗あるみたいに言ってるし~何か別の意味見えちゃうんだけど~」

「い、いや、そういうんじゃねぇから! マジで!」


 猫かぶりにも程があるだろ、俺に鬼の形相で詰め寄ってきた人間と同一人物とは思えない……だが、池田封じとしては完璧な働きをする。

 本当に色々な人に助けてもらっている、スクールカースト最底辺ながら恵まれていると勘違いしてしまいそうだ。


「アタシが出るって決めたんだから横やりいれなくていいっしょ? それよりも誰か保健室に雪連れて行きな」

「んじゃ俺が――」

「俺が行こう」


 池田の言葉を遮るように黒川が前に出るように志願する。何やらいつにもまして黒川が積極的だ、いや池田に任せるのも色々な面で不安だから黒川の方が俺としては有り難いのだが……。


 池田が笠木を抱えると美女と野獣になるだろうけど、黒川が笠木を抱えると絵になるのは血の涙が出そうになるが、黒川に着き添っていく藤木田の存在が今は目に優しい。


 残りは俺一人の戦いだ、ここまでお膳立てしてもらったんだ、俺が望む結末を手に入れて見せよう。

最後まで見ていただきありがとうございました!!!明日もお楽しみに;w;w;;

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