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「ほんとっっうっに、大変だったんだから!」
問題ですこの発言をしたのはアナベルでしょうか?ステファンでしょうか?
「わかったから落ち着きなさいステファン。」
「落ち着けるか!!!」
ステファンでした。いつものようにアナベルのところに遊びに来ています。
「過ぎた過去のは取り戻せないのよ?今、喚いても無駄よ、無駄無駄無駄。」
「わかっているよ。でも、せめて愚痴らせて?」
「王族って、愚痴る生き物だったかしら?」
「裏の顔なら愚痴くらいこぼす。」
「あら、今は素ってこと?」
「そういうことだね。ところで、アナベル、話を戻すけど、バレーヌ公爵、が、本当に、本当に、しつこいんだよ!!!!」
「予想出来たことじゃないの?明日のこともあるから早く帰ってくれない?」
「アナベルが冷たい…。」
「あのね、明日は王宮で夜会よね?しかもカトレア様がデビューする。彼女はあなたの婚約者の有力候補、わかる?なのに前日の夜に婚約者でもない女の家に遊びに来ているのはおかしいのではないの?」
はい、アナベルは明日、再び夜会に向かいます。カトレア様がデビューするのです。きっと華やかでしょうね。
「でもアナベルは許嫁でカトレア嬢に並ぶかそれ以上の候補なんでしよ?」
「私は許嫁であって婚約者じゃない、これは大きな差なの。そして、カトレア様も私も有力候補ならば、お互いにある程度、対抗しないわけにはいかないの。だから準備に力が入るの。忙しいの。聞こえる?シュゼットが明日のドレスの仕上げをしているわ。」
確かに耳を澄ませば、女性達の騒ぎ声、金属製の道具を使う音が聞こえます。
「聞こえるけど…。あれ?仕立て屋って住み込みで働くものだっけ?」
「………………………………。」
「あれ?黙るの?…まぁ忙しいのはわかるよ?わかるけどさ、王宮にいるとどこまでもバレーヌ公爵が付いてくるんだ。」
「逃げてきたのね?」
「………………………………。」
「あら?今度はあなたが黙るのね?」
「………。ずっと付いて来るんだよ。あの様子だと明日の昼まで粘ってきそうで…。」
「なんと、進行形だったの。というかなんで受けないの?彼女をエスコートしないと公爵家同士の対立が激しくなるわよ?」
「そこまではいいんだ。だけど、バレーヌ公爵はクラルティ公爵より優位に立とうとしているからさらに色々要求してくる。で、クラルティ公爵もバレーヌ公爵のこと嫌っているみたいで、間に入ろうとしてくる。僕を挟んであの二人が火花を散らす。その場にいるだけで精神的ダメージがあるんだよ。」
「…お父様がご迷惑をおかけしています。バレーヌ公爵とは前から仲が悪いの。耐えてね?」
「これに関しては慣れないんだよなー。」
「親が仲が悪いと子供にまで影響してくるから嫌なのよね。」
「確かに、アナベルとカトレア嬢はあそこまで仲悪そうに見えないもの。」
「あら?仲良しよ?親の関係で距離を置いているだけ。今度のカトレア様のお茶会にも呼ばれているし。」
「なんか意外ー。じゃ、今度の夜会はカトレア嬢来るから楽しみだね。」
「そうね。ステファンは公爵二人の間を取り持って上げてね。」
「気乗りしなーい。」
「お仕事だと思いなさい。義務よ。逃げられない。」
「そんなー。地味に体力いるしー。」
「じゃあ、明日に備えて体力温存しなくちゃ。早く帰って寝なさいな。」
「うー。しょうがない。帰るか。」
「じゃあね。また明日。メアリー!ステファンが帰るそうなの。手伝ってあげて。」
「はい。今、上着をお持ちいたします。」
「あぁ。頼む。」
しばらくするとメアリーは土色の地味なコートのようなマントのような上着を持って来ました。ステファンのお忍び用の上着です。
「では、明日会おう。」
「はい、ちゃんと休んで頑張るのよ。」
ステファンはそれを着ると、メアリーに案内されて公爵邸の裏口から出ていきました。そのまま王宮の隠し通路を使って帰るのです。
空を見上げるとお星さま。
……明日はカトレア様はどんなドレス来てくるのだろう。
アナベルは思いをはせます。
つい会話メインの話になってしまう…。