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投稿遅い上に毎回短くてすみません。短くても一週間に一本くらいは投稿できるように頑張ります。
アナベルはその日、公爵家の馬車に乗って王宮に向かいました。ステファンとは現地で合流予定。理由は王族に堂々と家にこられると、余計な詮索を受けかねないからです。
……いよいよ、ね。
馬車に共に乗る両親を見ながらアナベルはため息をつきました。
「アナ?緊張しなくていいのよ?いつもと同じ、簡単よ。」
母親がアナベルに声をかけます。
「お母様、簡単だとおっしゃるなら、もっと社交界に出てもいいのでは?どこのパーティーに行ってもお母様について聞かれるの。まさか娘をおいて遊んでいるなんて言えないから、ごまかすのが大変で…。」
「遊んでないわよ!ただ見聞を広げる旅をしているだけ!!」
「それが遊んでいるというの!今回も到着したのが昨日で、余裕がないじゃない!シュゼットはお母様のドレスと私のドレスの両方をやってくれたのよ。私、作業しているあの人の腕が一瞬六本に見えたわ。」
「アナ、人間には腕は二本しかないわよ?大丈夫?」
「わかっているわよ。つまりシュゼットの作業が早業過ぎたのよ。で、無理してそんなことしたから今は寝込んでいるのよ。次からは気を付けてね?」
「…善処します。」
「今、『次はないのよ。』とか思っていたでしょ。」
「なんでわかるの…。」
「あなたの娘ですから。お母様、逃げないでくださいね?」
「えぇー。ねぇあなた、いいわよね?旅行くらい。」
……あっ、逃げた。
「確かに息抜きは大切だな。」
「やっぱり!そうよね!」
「しかし、貴族としての義務も忘れてはいけないな。」
「えっ?」
「旅行で十分休めただろうから貴族として社交に力を入れてもいいと思うんだがな。」
「そうかしら。」
「今でさえアナベルが苦労しているんだ。夜会に出るようになったら余計負担が増える。サポートくらいするのが母親のつとめだろう?」
「そうかしらねっ?」
「今までサボっていた分も取り返さないとな。」
「そうね…。」
「今アナが着ているドレスのレースはうちの領地で作り始めたものなんだ。売り込んでくれるかい?」
「ワカリマシタ、ヤリマス、ガンバリマス。」
……うわぁー、お父様の微笑み怖っ。普段は無表情なのに。
「旦那様、奥様、お嬢様。そろそろ王宮に到着致します。」
御者が外から声をかけてきました。
三人とも顔を引き締めます。
……さぁ参りましょう。
アナベルの心にはこれから向かう夜会へ望む大きな決意がありました。
ブクマしてくださる方、本当にありがとうございます。