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3-6

……この子の言っていることがわからない。好きは好きでも、推しとして好き?恋愛感情じゃない?


アナベルは激しく動揺していました。しかし、許嫁教育の賜物か、表情はピクリとも変えなくて済みました。

横にいるカトレア嬢を見ると、動揺した様子はなく、


「つまり、どういうことかしら?」


リリアーヌの発言の意図を聞いています。やっぱりカトレア嬢も意味がわからなかったのです。


「えーっと、ですね。推しって言っても人によって色々あると思います。私の場合はですね、なんというんでしょう、憧れに近いのですわ。」


……そういえば前にステファンがリリアーヌ嬢は憧れの人を追いかけているようだと言っていたけれど、図星なのかしら?


アナベルが考えている間も、リリアーヌ嬢の話は続きます。


「好きな人に近づきたいと思うのと同じで、私は憧れの人に自分を覚えて貰いたいのですわ。それもただの知人というのとは別枠で。」


「その別枠に愛する人ははいらないのかしら?」


カトレア嬢の質問は続きます。


「もし、そうなれば嬉しいとは思いますわ。けれど、私は少し親しい友人だったり、印象的な人間であると認識されれば十分なのです。」


「だから妃にはならなくて良いと。」


「はい。それに殿下の周りにはアナベル様やカトレア様のような素晴らしい方達がいらっしゃいます。私とは月とスッポンですわ。」


「そう。ありがとう。それで殿下に覚えてもらうために王宮へ?」


「はい…。あまり褒められたことではないとは思っていますわ。ですが、抑止力が効かなかったんですもの。」


……まぁ、世の中色んな人がいるのね。


少し遠慮がちに微笑むリリアーヌ嬢を見てアナベルはそう思いました。


「アナベル様とカトレア様はどうして王宮へ?」


「殿下方に呼ばれたの。」


今度はアナベルが答えました。


「そうなんですか、じゃあ邪魔になってはいけませんね。私はさっさと去りますわ。」


「あら、さっきの貴女の話を聞くと、無理矢理にでもついてきて、殿下方にあおうとするのかと思ったのだけれども。」


カトレア嬢がそうやってくすりと笑いながらいうと、


「私、そこまで図々しくはないですので。」


そう言って、リリアーヌ嬢は去っていきました。


……カトレア様が笑うと、なんかオーラが出るっていうか、少し怖くなるわよね。なに考えているのかわからない感じ。


アナベルはそんなことを思っていました。


「さぁ、アナベル様。参りましょう。」


「そうだ、カトレア様。私、歩きながら出来るいい暇潰しを思い付きましたの。」


「あら、なにかしら。」


二人は歩き始めます。



しばらく歩くと、ちょっと廊下の人通りが増えてきます。

「あら、アナベル様とカトレア様よ。」

「本当だわ。」

「いつ見てもお綺麗ね。」

「ええ、お二人でいったい何の話をなさっているのかしら。」

「きっと私達には想像もつかないお話よ。」

「そうね。そうに決まっているわ。」

通りすがりのマダム達はそう噂しました。


しかし、マダム達もまさか二人が道すがらに廊下に飾られている絵の製作年代を当てるゲームをしているとは思わなかったでしょう。


王宮の絵の知識の確認になるし、周りに話している内容を悟られないようにする訓練にもなるからと、二人ともノリノリだとはもっと思わなかったでしょう。

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