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1-1

文章の書き方が難しい

王宮の庭には着飾った貴族令嬢達が集められ、まるで大輪の花々が咲いたようでありました。


アナベルはため息をつきながらそれを見ているのでありました。


……面倒くさい。この世から社交なんて無くなればいいのに。


アナベルの目の前に可愛らしい水色のドレスを着た少女がやって来ました。


「ごきげんよう。アナベル様。」


「ごきげんよう。リリアーヌ様。お久しぶりね?」


アナベルはすぐさま応えました。素晴らしく完璧な笑顔です。誰が彼女が心のなかであぐらをかいて愚痴っている姿を想像できるでしょうか。


「ええ。ご無沙汰しております。アナベル様、今日は大変素敵なお召し物ですね。」


「まぁ、ありがとう。あなたのも素敵よ。」


アナベルは今日はピンク色の刺繍の入ったシンプルなドレスを着ています。


「ありがとうございます!ところでアナベル様、今回の王妃様主催のガーデンパーティー、ご令嬢ばかり見かけますが、何故でしょうね。」


ちらりとリリアーヌ嬢はアナベルを探るような目をしました。


……下手ね。


アナベルの実に素直な感想です。


「そうね。わからないわ。でもとりあえずこのパーティーを楽しみましょう?せっかく王妃様が開いてくださっているのだからね。」


アナベルは笑顔で返します。


「そっ、そうですわね。」


……動揺を隠せてない、本当に下手。私が本当に気付いてないとでも?このパーティーが第二王子の婚約者候補を絞るためのものだってことに。


そうですその通りです。


……どちらにせよ王妃様はやる気なさそう。最初に挨拶してから全然出て来ない。



アナベルがリリアーヌ嬢としばらく話をしていると、庭の隅の方から騒ぎ声が聞こえてきました。


……遅い。


「アナベル様、あちらの方が騒がしくなってきました。」


「あら、何かしら?」


……知ってるけど。


騒ぎの方を見ると、カラフルな令嬢達が集まっています。よく見ると中心に一人、美形の男子がいるのがわかります。


「あっ!ステファン殿下じゃないですか?」


「あら。」


……大方嫌がっているのを王妃様が公務だからとか言って叩き出してきたんでしょう。それにしても、


「本当に素敵な笑顔です。あぁー、お近づきになりたい。」


……相変わらず猫を被るのが上手い。あと、リリアーヌさん?そんなキラキラした目であちらとこちらをチラチラ見ているけど、なに?そんなに紹介してもらいたいの?


令嬢達にもまれるステファンを見ていると、バッチリ目が合いました。


…ちっ。



(舌打ちをするな、早く助けろ‼)


ステファンの目がそう言っているように見えました。


……お仕事でしょう?頑張りなさい。


(…………)


アナベルがウィンクで返すと、ステファンは黙りました。

しばらく令嬢達の群れを見ていると、途中で気の強そうな令嬢が横からやって来て、追い払われています。ステファンは彼女と一緒に話しながら歩き始め、アナベルの近くにやって来ると、彼女と別れてアナベルの方へやって来ました。


……やれやれ


「ご機嫌うるわしゅう、殿下。」


アナベルは礼をすると、ステファンと向かい合いました。


「アナベル嬢か、母上のパーティーを楽しんでくれているか?」


「ええ、とても楽しいですわ。」


……んな訳あるか!


(仕事だろ!)


口と目で別の事を語りつつ、アナベルは近くにいるリリアーヌ嬢を近くに呼びます。


「殿下、紹介しますわ。こちらアスラン伯爵家のリリアーヌ様ですわ。一緒におしゃべりさせていただいていましたの。」


「そうか。初めまして、リリアーヌ嬢。」


「こっ、こちらこそ。リリアーヌでございますっ。」


(おい、面倒を増やすな!)


……しょうがない。


ステファンはリリアーヌ嬢と二言三言話すと、礼をして去って行きました。


「わぁー。ステファン殿下とお話できて良かったです!本当に素敵な方でした!」


「そう、良かったわね。」


……この子は私から離れる気がなさそう。


その後アナベルがリリアーヌ嬢との会話に付き合い、リリアーヌ嬢の『ステファン殿下のここが素晴らしい!』な話を聞いていると、ガーデンパーティーがお開きになりました。


「それではアナベル様、ごきげんよう。」


「ええ、ではまたね。」


アナベルはリリアーヌ嬢と別れて公爵家の馬車に向かいます。リリアーヌ嬢含む令嬢達は、その場を名残惜しいように去っていきますが、アナベルはさっさと帰りたいのです。


アナベルの家の馬車の隣の馬車の横に、さっきの気の強そうな令嬢が立っていました。


「ごきげんよう。アナベル様。」


「ごきげんよう。カトレア様。」


カトレア=バレーヌはアナベルと同じ身分である公爵家のご令嬢です。同い年でした。


「アナベル様、聞きましたわ。今度の夜会でデビューするそうですわね。」


「ええ、そうですのよ。カトレア様はよくご存知ね。」


……やっぱり知ってたか。


はい、そうです。アナベルはもうすぐ夜会デビューなのです。


「カトレア様は私がデビューする夜会の次の夜会でデビューするそうね。」


……そして私も知っている


「そうなんですの。でもアナベル様のデビューも見たかったと今さら思っているんですのよ。」


「あら、そしたらカトレア様の美しさで私が霞んでしまいますわ。」


「あら、アナベル様はお世辞がお上手ですのね。おほほほ。」


楽しそうに話しているように見える二人はお互いの夜会デビューの話で盛り上がっています。しかし、帰るのが名残惜しそうだった他の令嬢達は二人の会話を聞いてざわつき始めました。


「ねぇ?聞いた?アナベル様次の夜会でデビューだそうよ。」

「きっと華やかよね?」

「私、同じ夜会でデビューする予定だったの。どうしましょう。アナベル様のデビューで私の存在なんて忘れられてしまうわ。」

「それは残念ね、でも私はカトレア様と同じ夜会だわ…。延期しようかしら。」

「そうしましょう。デビューにどんなに凝ってもインパクトはあの二人には負けるわ。そうなったら、社交界に忘れられそう。」

「あっ、でも我家は目立たず控えめ希望だから、逆にいいかも。」

「…あなたの家変わっているわね。」


アナベルもカトレア嬢も有力者の家の子ですから、デビューはそりゃあ、目立ちます。気にならないはずがありません。


「アナベル様のデビューが成功することを祈っておりますわ。」


カトレア嬢は目を細めてアナベルに微笑みかけました。


「ありがとうございますわ。私は夜会でカトレア様と会えるのを楽しみにしていますわ。…それではごきげんよう。」


アナベルはカトレア嬢に別れを告げて馬車に乗り込みます。


……今日も疲れた。


馬車はアナベルを乗せて公爵家に向かいます。

投稿頑張ります


6/17 リリアーヌの家名と爵位を変更しました。

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