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誤字報告、ありがとうございました。
ステファンは王宮の廊下を歩いていました。
隣にくっ付いているのはリリアーヌ嬢。
「殿下!殿下!廊下でお会いできるとは、光栄ですわ!」
「…あぁ、そうだね。」
(君が出待ちしてただけだろうに。)
リリアーヌ嬢はうっとりした目を向けて、彼に話しかけています。少し鬱陶しいくらい。ステファンの護衛の近衛兵もうんざりした顔をしています。
「殿下は、何をなさっていたのですか?」
「そこで、クラルティ公爵と、バレーヌ公爵に会ってな。ちょっとお話していたんだ。」
(正確には二人の口喧嘩の仲裁。いい年した大人が何をやっているんだか。)
「それはそれは、お疲れ様です。殿下、この後はどうされるのですか?」
「兄上に会いに行く。ちょっと呼ばれていてな。」
「そうですか。」
「ところで、リリアーヌ嬢は何故ここへ?母上のサロンからは結構離れているが。」
「えっと、野暮用があったので…。」
「この辺りは王宮の監査部の部屋が並んでいる。官吏でもないご令嬢が来るところではない。変に目をつけられても困るだろうから、早く移動することを勧める。」
「お優しいのですね。」
(何が"優しい"だ、当たり前のことを言っているだけだ。早く帰れ!というか、君が色んな所に入りまくるから、悪評は既にたっているというのに。)
「ありがとう、さぁ、早く解放されている庭園か、図書館に行った方がいい。」
「あっ、そうですね。では失礼いたしましたわ。」
名残惜しそうに去っていくリリアーヌ嬢を見て、ステファンは思わず、
「やれやれ。」
と、呟きました。
「まったく、困ったもんだ。他のご令嬢は、わきまえるべき所はわきまえてくれるのに、彼女はそれをしないから、面倒だ。な、そう思わないか?」
ステファンは自らの護衛に問います。
彼等は小さく首肯していました。
「さぁ、兄上の所へいこうか。約束の時間には少し早いかも知れないが、それはそれでちょうど良いだろう。」
「はっ!」
護衛達の元気の良い返事を貰い、彼等は目的の方向へ進みます。
やがてついたのは、ステファンの兄である第一王子の執務室の前、木でできた大きな扉があります。
ステファンがノックをしようとした時、中からドアが開きました。扉を開けたのは少し太った中年の貴族でした。彼はステファンがいたことに少し驚いたようでしたが、すぐに恭しく挨拶をすると、立ち去って行きました。
「あっ、ステファン、来ていたの?どうぞ入って、入って。」
中にいた兄王子はステファンを見つけて声をかけてきました。
「兄上、ご機嫌麗しゅう。今のは公国の大使の方でしたよね?」
「あぁ、良く覚えていたね。」
「当然のことですから。」
(ちょっと、驚いたけど。)
公国は、ステファン達のいる国との繋がりが深い国です。何代か前の王弟が、その土地を治めたのが始まりです。王弟の手腕により、その土地はみるみる発展し、やがて独特の文化も産まれます。ある時、王様は、その王弟の功績と彼等の訴えを受けて、公国の独立を認めました。だから公国は兄弟国なのです。
さっきの大使のおっちゃんは、その公国の貴族で、国と国の友好のために頻繁に両国を行き交っていました。
「公国と何か話でもあったのですか?」
「まぁ、そんなところかな。そうだ!話があったんだよね。さぁ、さぁ、ステファン、座って、座って。今、お茶を入れて貰うから。」
「では、お言葉に甘えて。」
二人は一つのローテーブルを挟んでソファーに座ります。
やがて、お茶が運ばれて来て、二人の前に置かれます。ステファンは優雅に一口、お茶を飲むと、口を開きました。
「ところで、兄上、お話というのは?」
「ん?あぁ、それはね、アナベル嬢の話。」
近衛兵は、兄王子の顔が少しニヤついているように見えました。
今まで、一週間に一度のペースで更新してきました。が。作者のリアルの都合上、次週とその次の週はお休みしたいと思います。ついでにネタも練っておきます。ただ、更新出来そうならするつもりです。