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2-3

「お嬢様!今回のこと、本当にありがとうございますわ!!」


アナベルの部屋には今、シュゼットがいます。壁際にはメアリーがいます。


「シュゼットにはお世話になっているもの、恩返ししなくっちゃ。」


「でも!私では大通りに近いあの場所を確保することなんて出来ませんわ!!公爵家様は流石に違いますわね!!」


ぎゅっと手を握りしめてシュゼットは熱弁します。


「まぁ、あそこの建物は元々うちのものだったから大したことないわ。それよりもね?シュゼット、あなたは独立したとか言っていたけど、店から出てきただけで、独立して店を構えるどころか利益を得るための算段もろくに立てていなかったことが問題なのよ!」


「………………始まりはちょっとした意見の相違だったんですわよ…?」


ええ、シュゼット、実は勝手に店を出てきて、独立したといっても、商売を初める準備を全然していませんでした。とりあえず公爵家に居着いていただけだったのです。


「まぁ、あなたの店はうちも関わって、我が家に利益も多少入るからいいんだけど。それで?シュゼット、話したいことがあるって言っていたわよね?」


「そうですわよ!お嬢様!!店に移るため、お借りしていた部屋を掃除していた時のことですわ!!!私達、鞄を見つけたのですわ!小さくて、箱のような鞄で、私達には何の鞄なのかわからなかったのですわ!それに、鍵がかかっていますし、何より個人のものの可能性もございますから中身を確認することも出来ませんわ!それでメアリーに相談したところ、お嬢様ならご存知ではないか言っていたのでこうしてお話ししに来たのですわ!!」


「確かに、あなたに貸していた部屋は、前に私の部屋の改修をしたときに一時的に私の部屋として使っていたわ。もしかしたらその時に忘れた物かもしれないわね。シュゼット、その鞄、見せてくれるかしら?」


「勿論ですわ!!!!少し待っていてくださいませ!!」


シュゼットはそういって部屋から出て行き、しばらくすると、手に鞄を持って戻って来ました。


「こちらですわ!!不思議な鞄ですわ!!」


シュゼットがアナベルに渡した鞄は百科事典一冊ぐらいの大きさで、横に革の持ち手がついています。水色の布が張ってあって、青の刺繍が入り、白いビーズも所々ついています。金具もついていて頑丈そう。鍵穴も確認出来ます。


サイズや色柄的には物の保管用や旅行には向いていません。でも、日常用やお洒落用にしてはがっちりしています。


シュゼットが不思議だと言ったのはそのことでしょう。


「あぁ…。懐かしいわねこの鞄。」


「お嬢様!!ご存知でしたの!!!」


「この鞄はね、子供用の玩具なのよ。」


「玩具ですか?それにしては装飾がしっかりしてますし、作りがしっかりして子供向きではないように思えますわ。」


「ええ、これはそれなりに高価よ。だから貴族の子供が使うの。飾りがついているのは、高価な物を大切に扱う癖をつけるため。頑丈なのは子供がある程度雑に使っても壊れないようにするため。鍵がついているのは大切な物は鍵のあるところにしまう必要があることを覚えるため。小さな宝物を入れる可愛らしい宝箱ね。」


「まさに貴族のための知育オモチャですわね!!!」


「そうね。そしてこれは私が使っていた物よ。本当に懐かしいわ。なんで忘れちゃったのかしら?知育オモチャの意味がないわよね?」


「……お嬢様、忘れてしまって当然かもしれませんわ!!」


「え?何故?」


「実はその鞄、床下から出てきましたわ!」


「…どういうこと?」


アナベル、驚いて少し固まってしまいました。それにしても床下とは。メアリーも驚きで目がまん丸です。メアリーは鞄が床下にあったことを知らなかったようですよ。


「掃除の際、少し剥がれていた絨毯をめくったら、床板が少しずれていましたわ。そしてその下にありましたわ。見てはいけない物かとも思いましたが、素直に報告して、判断を仰ぎたいと思いましたの。」


「…、一時期、絨毯剥がして遊んでいたわね、私。それで剥がし過ぎて、部屋を改修したのよね。確か。」


あっ、絨毯剥がした犯人この人だ。


「それで、床下にまで入れて、何を鞄に入れたのか知りたいですわ!!」


「うーん。さっぱり覚えてないわね。…開けてみる?」


「いいんですの?」


「いいわよ。確か鍵は引き出しの奥にあったはず。」


アナベルはしばらく机の引き出しをあさり、奥から小さな箱を見つけ、中から青い紐の付いた小さな鍵を取り出しました。


「確かこの鍵よ。」


「糸の色が鞄の刺繍と同じですわね!!」


アナベルが鍵を差し込んで回すと、カチャリと可愛らしい音をたてて鍵が開きました。


「何が入っているのかしら。」


「ドキドキしますわ!!!!!!!」


そーっとアナベルが鞄を飽けると……




「…お嬢様、これはなんですの?なんか草が干からびたような感じですわね。古いせいか少しカビ臭くありません?」


シュゼットは中身が想像からかけ離れていて、何かわからず、答えを求めます。


「…シュゼット、これは花輪よ。」


アナベルが声を震わせながら言いました。


「え?花輪?確かに言われてみると花輪の成れの果てのような気もしますわね。でもなんでこんなところに?あれ?お嬢様?声が震えてましたけど…」


シュゼットがそっとアナベルを見ると、


「…あれ?お嬢様、目が空いたままですわ!結構驚かれていますの?」


「そっか、そっか。そうだったのね…。」


「お嬢様ー。聞こえていらっしゃるかしら。」


完全に失敗したドライフラワーと化した花輪のようなものを目の前に、ぶつぶつ考え事をしてアナベルは動きません。

シュゼットはしばらくその周りをうろうろしていました。

次回、回想回に入るかも

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