昔話2
「話がズレたね。ここから先はスムースに進めたいから、とても気になること以外はなるべく質問を控えるように」
(えー、きになるー)
チラッと伏し目がちに見上げてくる。いつもなら早々に許可を与えてしまうが、今日ばかりは割と真面目なのでダメだ
「今日は涙目で見上げてもダメだからね」
そう言ってやると、ほっぺを膨らませて抗議の視線を向けてくる。可愛いけどガマン。
さっきからあざとい行動が多いが、これは全部素だったりする。理由は、恐らくだが、まだ甘えたいお年頃なのだろうと勝手に思っている
(…わかった)
不承不承っぽいが、頷いたので良しとしよう。大事なのは、一応でも聞く姿勢だ
「じゃあ始めようか。面白い話と、悲しい話、どっちがいい?」
正直、どちらを選んでもいいのだけれど…。両方話すつもりだし。
でもまあこの子なら…。
(面白い話!)
だろうね。そう言うと思った
「面白い話からだね。あれは今から約200年前になるかな、今いるココから南の方にずっと行くと、1つの街があるのさ。街の名はリーディア」
(りーでぃあ?)
「そう、リーディア。私は、その街に住んでいたんだけど、当時、街で泥棒が噂になっていたの」
(泥棒が噂に?捕まえればいいじゃん)
問題はそこだ。単純な泥棒なら治安維持機関である、街兵が捕らえただろうけど、当時はそうも行かなかった理由がある
「なぜ捕まらなかったか。それは盗んでいたのが農作物のみで街兵が真剣に捕らえようとしなかったから、しかも、自分が持ってきた別種の農作物を交換だと言わんばかりに、盗った場所に植え直してたから。とどめに、瞬間移動で逃げられるから」
瞬間移動とはニンゲンの魔法である転移とは違って魔族の特殊能力だ。使える奴はよっぽど上位の魔族だけなんだけど、ソイツは使えていた
(うへ、瞬間移動は面倒そう)
実際面倒だったから街兵も諦めてたしね。あと、代わりに植えてった野菜が美味しかったから、不満が出にくかったのもある。
(美味しかったの?食べてみたい!)
なんでこの子は「食べてみたい」という感想になるのだろう。しかも、目を輝かせながら。訳が分からない
好奇心が旺盛なのは私譲りだろうけど、得体の知れないものに平気で手を出す勇気は、私にはない。まあ、私も確かに食べたんだけど、1人目じゃなかったし
「美味しかったよ。見た目は真っ黒、地面から引き抜くと叫び声を上げたけどね」
白菜の見た目で真っ黒な野菜はアレを見たっきりで、それ以降は見たことがない
あの見た目は白菜じゃない、黒菜だ。
ちなみにウチでは茹でて、鍋にして食べた結果、食感は白菜、味はチョーケンと呼ばれる鶏肉に酷似していた。美味しかったといえば美味しかったが、どちらかと言えば、面白さのほうが圧倒的に上だ
ウチでは鍋になったが、量が多かったため近所一帯に配られた黒菜は様々な料理になっていた。1番美味しかったのはハンバーグだった。なぜ入れたし
遅れ兄さん