昔話1
子を独り立ちさせることにした。
理由は特にない。が、強いて上げるなら、なんとなくがしっくりくる。
なんとなくで育児方針決めるなって?
知るか、こちとら初育児だぞ。それどころか、こんな子育て前例がないから、先人の知恵を借りたりもできない。
まあ、そんなことは置いておいて、よくよく考えると不安しかない。
どうにも抜けているというか、間抜けというか。
この子生まれてから1回も口から音発してないけど大丈夫なんかね?普段から私が思考会話してるからダメなのかな?
普通のニンゲンは思考会話できないんだけど……まぁ、自分でなんとかするだろ!へーきへーき。
……一応耳が退化してないか、確認のために口で話しとこう、そうしよう。
とにかく過保護に育てたせいでどうにも不安だ。なんせ子育てなんて、初めてだったから。
と、いうわけで私は、自分の昔話を子に聞かせることにした。
経験豊富な私の話を聞けば、この子も賢く生きるに違いない!ってね。いやー、私マジ天才。
「むかーし、昔。あるところに、一匹の龍が居たのさ」
(りゅうってなに?)
計画が最初期から頓挫した。
自分の種族知らないってマジか。と一瞬思ってしまったが、よくよく考えたら親である私が教えていないのだから、当然だと思い直した。
この子に教えたのは、テキトウな一般常識と、適当な魔法だけだ。
……教えなくてもいいや。
知らなくてもなんとかなるでしょ、私もそうだったし。
「龍ってのは壮健で、この世の中でも大きな力を持つ生命体。とても希少な存在なんだ」
漠然とした概要しか説明していないが、こんなもんでしょ。私も最初はその程度だった。
いや、説明しようとすれば、いくらでもできるんよ?例えば、龍が最初にニンゲンに認知されたのは、今から大体2000年前の話で、ってまあ私なんだけど、当時は文明がまだまだ発展してなかったから、石槍を投げてきたんだよね…懐かしいなぁ、一本も刺さらなかったけど。
んで、なんやかんやあって、今もめちゃくちゃ恐れられてるけど…っていかんいかん。これじゃあ説明じゃなくて、思い出になっちゃうわ。
(ふーん。おかあさんよりつよいの?)
私が謎の自問自答?をしていると、我が子が問いかけてきた。
え?さっきの説明でいいの?追求しなくていいの⁉︎
……不安だけどまあいいや。
そんで質問の回答だけど…決まっている。
「もちろんおかあさんの方が強いよ!」
過去の自分になんて、負けてたまるか。
昨日より強く、生涯現役、が私の龍生テーマだ。
龍に寿命は無いに等しいんだけど。そんな気持ちだよっ!って事で。
遅くなりました。次話は昔話2です。