三話 イベントなんてなかった。
《前回のあらすじ》
やはり異世界のスキルは間違っている
本当に誰にも出会わないな。
こういうのはすぐ近くから
「キャァーーーーーーー!!(おにゃのこの声)」
とか
「うわぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!(野郎の声)」
とか聞こえるものなんだがなあ。
まあ、イベントに出会うまで歩き続けるしかないか。
「アッーーーーーーーーーーーーー♂」
・・・歩き続けるしかないか。
あれからどれだけ歩いただろうか。
まったく人に出会わないなんてこんなことあるのか、フラグ的な意味で。
ふと前を見ると遠くに人の影があった。
きた、ついにきた。
ヒロインイベントキタァァアァァァ!!!フラグさん、回収乙!!だけど仕事が遅ぉぉぉぉぉいッ!!
そして俺は恐る恐る、内心はエキサイティン!な気持ちで近づいていった。
そして現れたのは、銀色の長い髪を垂らし、花や蝶と戯れる可愛いお嬢様…
ではなく、上半身を裸にし、キラリと光る汗をその全身にまとい斧を持って木と格闘するガチムチマッチョな男、いや漢のきこりであった。
マジデスカ。異世界にきたら始めて出会うのが美少女or美幼女という法則がっ、出会ったのは「きこり」だよっorz
まあ、回収してしまったものはしょうがない。とにかく話しかけて王都へのルートを聞かないと。
ああ、マップ?あれ周囲10㍍ほどしか表示されないんです。町に入ればその町全域が表示されるらしいよ。使えねー。
「あの、すいません。ここ、どこですか?」
「…お前さん、どっから来たんだ?ここの森は結構危ないから普通のやつは絶対に入らねえんだが。まあ、俺が知らねえだけかもしれねえんだがよ。それはそうとお前さん、男か女かわからねえ顔してんな。」
「あはは、一応男です。」
「おう、すまんな。で、何してんだ?」
「ここから一番近い都市に行きたいのですが…やっぱり王都ですかね?」
「このラゼラ森林に接しているのは王都だけだが…ああ、迷ったのな。それじゃあっちのほうだ。」
「ありがとうございます。」
そして俺は木こりの人に別れを告げ、教えてもらった方向へ歩いて行った。
ー◆◇◆ー
しばらく歩くと何か高い建物が見えてくる。
ん?何か少し斜めっているような…よし、鑑定だ。だけどわざわざ言わなきゃいけないの邪魔だなあ。少し調べるか。
「鑑定、条件発動、スキル無声発動、ラン」
《成功しました。『能力無詠唱』を確認しました。獲得…成功しました。発動します。》
よし、これでOKなはず…念のため、能力を鑑定させよう。
《『能力無詠唱』
能力を発動する際、脳内で発動を要求しても発動が可能となる。》
…つまり、言わなくてよくなっただけですか。まあいいや。
(鑑定、条件発動、注視している高層建造物、ラン)
《ヒザな視野塔、(-しやとう)ディッツランド共和国にインスマス王国が対抗して作られた高さ50㍍程の塔。オリジナルよりも少しだけ高く、国民はそれに誇りを持っている。ディッツランド共和国には100㍍級の建築物が大量に立っているのは余談であろう。》
おい最後。はあ、まあいいが。あそこが多分王都だろう。さて、もう少しだ。俺は今にも崩れ落ちてしまいそうな足に鞭を打って進んでいった。
せめて、少しは筋トレしておくべきだったな。そしたら『>>10から始める異世界生活』みたいなこと出来たのになぁ。
ー◆◇◆ー
おっ、あれは城壁か?城壁が石垣っていつもの中世ヨーロッパ風かファンタジーですね。そして城壁があるとなると…あ、あった。門扉。行ってみよう。
「…おい、そこの君、王都に入りたいのか?」
と鉄の鎧を着た男の人に話しかけられた。
「あ、はいそうです。」
「だったらこの石板に王都に入る理由、名前、年齢、性別を書いてくれ。」
渡された石板は真っ黒なA4サイズ、厚さ1㌢くらいの直方体に王都に入る理由、名前、年齢、性別といった欄が彫られている…そういえばなんで俺はこういった文字が読めるんだ?
《解、『鑑定』『隠蔽』の相乗効果で自動翻訳しております。》
なるほど。さて一緒に渡されたペンのような何かで『道に迷ったため』と書く。他に『九条隼人』、『18歳』、『男(?)』っと。
と、書き込み終わると俺が書いた文字がなくなり、『許可』の文字がある。
「よし、通っていいぞ。」
「ありがとうございます。」
さて、王都キタァアァァァ―――――!!!おお!あれはエルフ!?ドワーフ!?あの猫耳は獣人か!!
この時俺は異世界サイコーー!!ヒャッハー!!などと思っていた。これから俺がどうなるのかも知らないで…ま、ほんとに知らないんですけどねww
でもこれからどうしようか、冒険者ギルドみたいなものでもあればいいのだが、ってん?
「あの、すいませんその記章は何ですか?」
「ああ、僕はつい先日やっと《エウロペニア国際防衛組織》のCランクにようやく成れてね、うれしくてさ。」
「《エウロペニア国際防衛組織》…ですか。」
「ああ、そうだ。『インディラインスマス王国本部』はこの先にあるよ。」
「ありがとうございます。」
え、エウロペニア国際防衛組織…長いな、おい。
まあ、多分冒険者ギルドと類似する組織だろう。
ー◆◇◆ー
さてと、ここがインディラインスマス王国本部…めんどくさいから防衛本部でいいや。何か神々しいオーラを放っておられる。では、
我、防衛本部ニ突入ス!
ふむ、やはりにぎわっているな。受付さんもきれいなお姉さんだし。とうろうろしていると
「あの、防衛者登録の方ですか?」
あ、やっぱり登録制のやつか。せっかくだし登録しておくか。
「あ、はい、そうです。」
「では、こちらへどうぞ。」
と個室へ通らされた。やばい、美人と二人ってめちゃくちゃ緊張する。
「はい、ではこの装置に手をかざしてください。」
そうして出てきたのは…どこからどう見てもプリンターだ。そのスキャナーの部分に手をかざすらしい。まあ、さっさと手をかざしますか。
「・・・はい、どうぞ。」
そうして渡されたのは白い小さな石板に
RANK:E
九条隼人
上記の者を防衛者として認める。インディラインスマス王国本部
と書かれた裏に
筋力:普通 持久力:平凡 魔力:平均並み 加速力:常識的 運:最低最悪
と書かれていた
「受付さん、これ…」
「ア、アハハ…」
どうやら俺の異世界人生はどうやら終わりを告げたらしい。
『能力無詠唱』