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歯車の事象  作者: 有栖18
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奏島 美鶴の過去 後編1

二部ある予定。前編に比べると長いかな。

何時だったろうか?父と話したのは...

祖父母が亡くなってからきちんと話した覚えはない。

まぁ、愛人の家にころがりこんでいる父なのだ、話そうとも思えない。




早く自立したい...

この私の生きづらい環境を捨ててしまいたい。





あれ、ここ何処だろう?あぁ私の家か。

ん?さっきまで学校に居たはずなのに何で...




「あぁ、目をさましたかい。気分はどうだい?熱があったようだけれども。」

私のベッドの横にさっき助けてくれた隣のクラスの委員長がいた。

「え、えっと...」

「おっと、すまない。勝手に家に上がらせてもらってるよ。」

「あ、はい。じゃなくて何でうちに?」

「君が...失礼、奏島さんが僕と話している最中に急に気を失ったので保健室に運んだんだけれど、あまりにも熱が酷かったようだから家まで帰しに来たんだよ。親御さんに挨拶でもして帰るつもりだったんだけど居られなくてね、独りにするわけにもいかないからちょっとの間お邪魔させてもらってるよ。」

「すいません、わざわざお手数お掛けしまして。もう大丈夫です。ありがとうございます。」

「気にしなくていい、と言うかむしろすまない、勝手にお邪魔して...女の子の家に僕なんかが...」

「いや、いいんですよw私はそういうところ気にしてないですから。」

「そうか、ならよかった。」

少しの間どちらも声をださない静けさが私の部屋を襲う。なんとも言えないいたたまれなさのなか彼が口を開いた。







「奏島さんは独りで暮らしてるんだね。」







彼はただ、ふと言っただけなのだろう。しかし、私には重くのしかかってきた。

うまくいかない父との関係性を見透かされてる気がした。

「すごいな、奏島さんは、」彼は続けた。

「自立してるんだね。」

「......してない...」

「ん?なんて?」

「私は自立なんかしてない。」

彼は少し黙って私を見た。

「...私はただ独りなだけ、誰も私と一緒にいないだけよ。父でさえ私と一緒に居たくないと思ってる。」

彼は黙って聞いていた。そして、

「そうか、すまない。勝手なことを言った。」

と謝った。

私は別に謝らせたい訳ではなかったのに、そう言えなかった。

二人の間でまた静寂になった。

「とりあえず、休んで。僕はそろそろおいとまするよ。」

この空気にいたたまれなくなったのか、彼が口を開いた。

「あ、うん、ありがとう。」

私がそう言ったのを聞いて彼は椅子から立ち上がった。

部屋から出ていく彼の後ろ姿を見ていると、また、私が独りになるようで辛い。また、ではなく最初から独りだというのに。あぁ...






「あ、そうそう、お粥作ってあるから食べてって...大丈夫かい?」

彼は伝え忘れていたことを伝えに戻ってきたのだろうが泣いている私を見て困惑しているのだろう。

私も病気で弱っているせいか、情緒がおかしい。いつもなら慣れているから大丈夫なはずなのに...


「独りは嫌なの...怖いの...自分がいないようで...辛い...」

「ふむ、そうか、でも、奏島さんは学校で人気者だろう?気にするほどではないと思うのだけれど。」

「学校に友達はいるよ、でも、友達なんだよ。どんなに仲がよくても私には意味ないの!」

所詮、そこまでの仲なのだ。友達でしかない。

「意味がない。ふむ、それで、君は何を求めてるんだい?」

「何を?」

「僕は奏島さんがそこまでの孤独を感じる理由が分からない。僕の知っている君は孤独とは無縁に見えるからね。そんな君がこれ以上何を求めようとするのか、それに今日だって告白されていたじゃないか、君は世間一般的に言うリア充というやつだよ。」

「勝手なこと言わないで!あなたに何が分かるの!」

「何も分からないさ、君と僕なんて今日まで無関係だったからね。君のこと僕はこれっぽっちも知らない。それが?当たり前だろう。君が何に高望みしてるのか知らないけどね。自分以外との関係なんて所詮そんなものだよ。違うかい?」

「家族といる暖かい家のある貴方は分からないよ、私が家に帰るたびに思ってることなんて、明かりの着いていない家に入る寂しさがわかる?近所の家の笑い声を聞きながら独りで食べるご飯の味がわかる?」

あれ?何で私この人にあたってるんだろう...

「それでも君は恵まれているよ...1つ話をしよう、僕の知り合いの話だ...」




あるところに一人の子どもがいた。その子ども、少年は物心つく前から施設にいた。施設の玄関に捨てられていたらしい。故にその少年には生まれつき家族という関係をよく分かっていない。彼に存在するのは自分とそれ以外の2つのみ。彼は物事の機微に敏感過ぎていた。幼いころから施設の職員の話、顔色に気づいてしまっていた。小学生になるころには既に自分の境遇を理解していた。


ある日、彼を引き取りたいという里親が現れた。長年子宝に恵まれなかった熟年夫婦だった。小学六年になるころに引き取ってもらえることが決まった。いくら達観しているとはいえ彼はまだ子ども。それなりに期待に胸をふくらませていた。引き取り手の夫婦は本当に我が子のようによくしてくれた。


しかし、順風満帆であったのはたった2年で終わった。


彼が中学2年になり、何日か過ぎた頃、父親が殺された。実は父親は浮気をしていたらしい。その浮気相手との間に子どもができてしまい、おろしてほしい父とおろしたくない相手との争いで包丁を刺されたのだとか。自業自得に見えてしまうだろう。


その一件以来母親がふさぎこんでしまった。父が死んだことよりも、浮気されていたことにショックを受けて度々自殺しようとしていた。死ぬに死ねない何日かを過ごした。彼もできるだけ母親と一緒にいた。何とかしたかった。無力ながらも育ててもらった恩をかえしたいとも。


『近寄らないで!赤の他人の癖に!あなたがうちに来たからおかしくなったのよ!』


二日後母は住んでいたマンションから飛び降りた。

幸か不幸か飛んだのが住んでいた三階で、したに植えてあった木にあたって一命をとりとめてしまった。植物状態になって。彼はまた、一人に。いまも眠ったままの母親のところにはたまにいっているらしい。





彼の話はそこまでだった。衝撃的な話だった。


「少し失礼なことを聞く。君は家族はいないのだろうか?」

本当に失礼なことを聞いてきたので少し呆気にとられたが、父親はいる、母は小さい頃に亡くなったと言った。

「そうか、すまない。しかし、君にはまだ父親がいるのだな。」

「愛人と暮らして、私のことは捨てた父親だけどね。」

私は自虐的に言った。

「父親としっかり話しているのかい?」

「してないよ。何せ帰ってこないんだから。それにするきもないし、あんなやつ、いなくていい。」

「ふむ、それは矛盾していないか?君は寂しいのだろう?友達では補えないものを欲しているのじゃなかったのかい?」

「そうだけど...」

「ちゃんと話したことは?」

「祖父母の家に預けられたときからない...」

「一度、きちんと話した方がいい。いなくなってからじゃ遅いんだ。まずは君の思いの丈をぶつけないと。」

「もう、無理だよ。こんなに疎遠になったんだよ。今さら何を話すの?」

「寂しいのは我慢したらいいしね。でも、それなら、甘えたことは言うんじゃない。自分で何もせず諦めるなら、甘えは捨てるべきだ。」

「でも、無理だよ。どうしたらいいか、分からないよ。」

「どうしたらいいか、じゃない。どうしたいかだよ。それでも動けないなら、明日、体調が良くなっているのなら、僕の所に来てくれ。手助けはしてあげよう。」

「う、うん」

「僕のクラスは分かる?隣だけど。」

「うん。」

「じゃあ、今日はもう寝るといい。寝つくまではここにいるから、安心して。」

彼は、男だと心配かと苦笑いしながら持っていたスマフォをさわりだした。

泣いて疲れた性か、一人でない安心感なのか、彼の人間性は...は無さそうかな、すぐに寝ついてしまった。






「奏島さんは、まだ間に合うよ。それに、君はもっと知るべきだ。」








朝、目が覚める。やっぱり彼はいなかった。起き上がりリビングに行く。食卓の上にメモが置かれていた。


『鍵はポストに入れてます。お粥温めて食べてください。』


彼の文字は品行方正を字にした感じだ。なんだか彼らしい。




お粥を頂いて、学校に行く支度をして家を出る。普通に美味しいのが何か腹立つ。







学校に着いて荷物を置いて彼を探す。途中、友達から大丈夫?と心配してもらった。





隣のクラスで彼を探す。あれ?名前...




「おはよう、体調は大丈夫?」

彼の方から見つけてくれた。

「あ、うん。ありがと。お粥も美味しかった。」

「あぁ、それはよかった。ここで話はなんだから、少し場所を変えよう。着いてきて。」

そう言って彼は教室から出た。




「あの、職員室?」

「あぁ、少し学校から出るから、許可取らないとね。」

「え、外に?え?」

「まあまあ、詳しいことは後で。」

そう言って彼は職員室に入っていった。




「嶋野先生、頼んでいたことですが、なんとか出来ましたよね?」

「委員長、昨日の夜急に連絡してきたと思ったら脅迫してきやがって。相変わらず最低だな!」

「ははは、先生だから頼んでいるんですよ。くみちゃんも応援してますよ。...キャバクラで。」

「委員長、やったんだからばらすなよ。」

「はい、ありがとうございます。これ、今回のテープです。複製してないですよもちろん。信頼がモットーですから。」

「そのくせにあくどいことしてるな、ありがとよ。ほら、今日は公欠扱いだから。好きにしろ。」

ありがとうございましたと彼がでできた。

「あ、聞いてた?先生も奥さんいるんだからもう少し落ち着いたらいいんだけどね。」

あはは、と彼が笑う。何で知ってるんだろう。こわ


荷物を取ってきて校門に集合した。

「じゃあ行こうか。」

「ちょ、ちょっと待って。どこに?」

「君のお父さんの所さ。」

「え、何で?急に。」


後編2、近日中にはなんとか...

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