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53話 パーティ結成

 書庫での調べ物を終え休憩所に来てみると、すでに三人とも飲み物を飲みながら談笑していた。

 あれ、仲間外れにされた?


『楽しそうじゃない。仲間外れにされたわね』


 書庫での事からもう立ち直った美奈から、からかうような口調で言われた。


『同じ事思ってた。はっきり言わなくてもいいんじゃない?』

『あっそう。じゃあもう言わない』


 からかうのは僕だったはずだけど、いつの間にか立場が逆転していた。その内仕返ししてあげよう。

 しかし、このまま三人を見ていてもしょうがない。


「みんな早かったのね。待たせてごめんなさい」

「遅かったね。もう調べ物は終わったの?」

「ええ、謎は解けたわ」

「何だかよく分からないけど良かったね」


「私達もさっき来たところなんですよ」

「おー、そうなのだ。掲示板のところで会ったのだ」

「そっか。あっそういえば、三っちゃんと八尋は依頼を見てたんだっけ? 何か良さげな依頼あった?」

「オイラの方は特に無かったよ」

「同じく無かったのだ。ランクが上がると一人じゃ厳しいのが多いのだ」


 そうそう美味しい依頼は無いらしい。でも、三っちゃんの方は複数人居れば、依頼があるみたいな言い方だ。


「力になれるか分からないけど、一人で厳しいなら手伝うわ。出来れば、ずっとパーティ組んでもらえると良いかな」

「おー、それは嬉しいのだ。でも、パーティ組むのは父ちゃんが許してくれないかもなのだ……」

「気になったんだけど、特定の人と組んでないのは、和多志さんが原因なの?」

「そうなのだ。理由はよく分からないのだ。一時的に組むくらいは良いみたいなのだ」

「ふ~ん?」


 特定の人と長期間パーティ組むのが駄目なんだろうか? よく分からないな。


「じゃあ、今日は一時的に組むってことにしましょうか。後で、和多志さんにお願いしてみるわ」

「おー、そういう事なら大丈夫そうなのだ」

「もうお昼だけど、今日はよろしくね、三っちゃん」

「よろしくなのだ」


 という訳で昼から三っちゃんの手伝いをすることになった。詳しいことは食事をしてから聞こうかな。

 その前に、秋が何の技能を覚えたのか聞いておかないと。覚えた技能次第で、秋も一緒に誘ってみよう。秋はノルマもあるし、ちょうど良いかもしれない。


「そういえば、秋は何の技能を覚えたの?」

「便利そうだったので、魔法士ですね」

「やっぱり魔法士なんだ。魔法って覚えておくと便利だものね。属性魔法も覚えたの?」

「はい。一つは覚えた方が良いみたいなので」

「じゃあその魔法、実戦で試さないとね。人数いた方が良いし、午後から暇なら一緒に手伝わない?」

「私なんかが一緒で良いんでしょうか?」

「大丈夫なのだ。秋ちゃんが居てくれたほうが助かるのだ」


 僕が返事をするより早く三っちゃんが答えていた。流石、お姉ちゃんです。


「ほら、三っちゃんだって大丈夫って言ってる事だし。それに四人で冒険に行けたらな、って思ってたのよ」

「……分かりました。足手まといにならないように頑張ります!」

「危なくなったら八尋が守ってくれるはずだから」

「えー、オイラが盾になるの?」

「男なんだから当然でしょ?」

「うん。当然なのだ」

「お願いしますね」

「あーもう、分かったって。盾でも何でもやれば良いんでしょ」


 女性三人(一人は僕)の攻めに八尋は堪らず降参した。久々に八尋をからかうと面白い。まあ、秋が危なくなったら、僕がちゃんと守るから八尋の出番はないかもね。


『可哀想な八尋』

『そんなこと言って、美奈も面白がってるよね?』


 言葉とは裏腹に、美奈の口元には笑みが浮かんでいた。


『そんな事ないわ。一緒に八尋をイジりたいなんて思ってないしね』

『……だろうと思った』


 ちょっと前まで落ち込んでたような気がするけど、気持ちの切り替えが早いな。まあ、美奈のことだから、何も考えてないのかもしれない。


「危なくなったら八尋に頑張ってもらうって事で決定ね。お腹も空いたし、後は昼食後に話しましょうか?」

「おー、確かにお腹が空いたのだ。お昼にするのだ」

「そうですね。私もお腹が空きました」

「じゃあ八尋、注文お願いね」

「え? オイラが行くの?」

「だって、さっき何でもするって言ってなかった?」

「はいはい。行って来れば良いんでしょ」


 八尋は渋々ながら昼食を注文しに行った。

 しばし、三人でのガールズトーク? に会話が弾む。小耳に挟んだアキバのスイーツ店の話をしたら、一緒に行ってみる事になってしまった。二人共、甘いモノが好きらしい。

 八尋も加わり、注文した料理が運ばれてくるまで談笑して時間をつぶした。


「お腹も一杯になったし、どんな依頼を受けるのか聞かせて」


 昼食を終え、三っちゃんに尋ねる。


「う~ん? 時間も無いから《迷宮》に行こうかと思うのだ。欲しい素材もあるからちょうど良いのだ」

「《迷宮》には行ったことないわ。大丈夫かな?」

「初心者用だから大丈夫なのだ」

「なら、安心ね。《迷宮》までどのくらいで着くの?」

「早馬で一時間位なのだ。探索の時間も考えると、そろそろ出発した方が良いのだ」

「じゃあ早く出発しましょう」


 慌ただしく休憩所を出ると、三っちゃんの依頼といくつかの討伐依頼を受け組合を後にした。

 通常より速度の出る【召使人形】借りるのも忘れない。値段もそれなりに高いので、今回は割り勘とした。


 途中、大山武具店に寄り和多志さんに《迷宮》に行くことを伝えたが、「気を付けてな」と言われただけで特に反対されることも無かった。今は時間が無いので、帰ってきたら話をしてみよう。


 僕達は《迷宮》を目指し、北西に向かった。


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