プロローグ
「そっちに行ったよ!」
八尋が叫んだと同時に、《最速兎》が目の前に飛び出してきた。
《最速兎》は動きが素早いことを除けば、頭が腰まである大きな兎だ。素早い動きに注意すれば、比較的倒しやすい。
草むらを追い出された事に怒ったのか、こちらを目掛け脱兎の如く突っ込んでくる。正面からの突撃を紙一重で右へ回避し、すれ違い様、木刀で左脚に一撃を加えた。
「グウゥゥ!」
お互いの距離が開く。動きの鈍った《最速兎》に追撃を加えようと、間合いを詰める。右脚を狙い左から右へ木刀を薙いだ。機動力が落ちた《最速兎》は、鈍い打撃音とともに右脚にまともに食らい、地面に転がる。
「八尋! 今よ!」
合図をすると八尋が捕獲用ネットを投げ込み絡め取る。依頼の達成条件である《最速兎》の生け捕りに成功した。
「これが最後の三匹目ね」
「うん。まあ、捕まえるのは簡単だけど、その後が大変だから……」
「確かにね」
八尋が言っているのは運搬の手段で、道具箱の仕様上生きている物は入らない。そのため、人力で運ぶ必要があり、二人では三匹運ぶのがやっとだった。
「依頼の報酬を貰ったら目標金額になるし、装備を買いに行きましょうか」
「秋の知り合いのところだっけ?」
「そう。〈山犬の毛皮〉の加工も頼んであるみたい。革の服も壊れたままだし、〈火鼠の毛皮〉も頼んでみるつもりよ。でも、高いお店らしいから、加工費もそれなりにするみたいなのよね」
「そっか。お金は足りそうなの?」
「加工賃は何とかなると思うわ。お金が余ったら八尋の装備に使って良いからね」
地下街跡探索から一週間で十万程度は貯まっていた。加工賃だけなら十分足りると思う。装備を一新するところまではいかないが、余ったお金で八尋の装備を買うくらいなら出来るだろう。
「後は今日の夕食用に魔物を狩って帰りましょうか」
「うん。命さんの料理は美味しいからね」
食事の話をすると、美奈が膨れっ面になっていた。
『自分達ばっかり、美味しい料理が食べられて良いわね』
『それはごめん』
秋の家で食事を作ってもらう代わりに、食材を提供することになっている。魔物の食材は普通の食材より格段に美味しいので、依頼のついでに食材になる獲物を狩って帰る事も多くなっていた。生け捕りじゃないから、道具箱が使える分運搬は楽だ。
「今日は《最速兎》で良い?」
「良いと思うよ」
「じゃあ八尋、またお願いね」
「りょーかい」
八尋が《最速兎》を追い込むため駆け出した。
さあ、今日最後の狩りを始めようか。
刀を構え獲物が来るのを待ち構えた。
第二章 開始時点のステータス
【十六夜 美奈】
種族:人間
レベル:1 → 2
マナ:500/17500 → 4150/21150
筋力:18 知力:11
体力:15 精神:12
敏捷:16 魔力:14
器用:13 幸運:17
職技能:レベル
戦士:5
魔法士:1
能動スキル:レベル
連撃:2
強撃:2
薙払:2
捨身:1
飛撃:3
挑発:3
受動スキル:レベル
頑強:2
魔法:レベル
火属性魔法:1
付与魔法:1
補助魔法:1
【三輪 八尋】
種族:小人族 種族特性:鋭敏知覚
レベル:1 → 2
マナ:2500/17500 → 150/21150
筋力: 7 知力:15
体力:13 精神:14
敏捷:20 魔力:11
器用:18 幸運:9
職技能:レベル
盗賊:5 → 6
能動スキル:レベル
罠設置:1
罠解除:1
探索:2 → 3
追跡:1
隠密:1
隠蔽:1
解錠:1
道具鑑定:2
軽業:1 NEW
受動スキル:レベル
危険感知:2 → 3
罠感知:2
先制:1




