42話 地下街跡探索
地下街は薄暗く、明かり無しでは周囲がはっきり見えない。借りてきた魔石灯で何とか支障なく戦えそうだ。階段を下りた先に少し広い場所があり、八尋とどう探索するか話し合う。
「何か気配はある?」
「今のところないね。もっと奥に行かないとダメじゃないかな」
「そうだよね」
地下街跡だけあって細かく区画分けされている。元々は店舗があったんだろうけど、全部見ていくのは手間が掛かりそうだ。ただ、依頼の内容が《巨大溝鼠》退治なので、虱潰しに探さないといけない。
『これは時間掛かりそうね。鼠相手なら私は必要無さそうだし任せるわ』
『りょーかい。見物でもしてて良いよ』
元々、美奈が出来る事は少ないし、危なくなったら逃げる予定だから、見物でもしててもらおう。
「背後から襲われたら嫌だから、じっくり行きましょう」
「安全に行くならそうだろうね」
「じゃあ、先頭は任せるわ」
「うん。でも、《巨大溝鼠》がいたら交代するよ」
「りょーかい」
通路が広いので入れ替わるのは簡単だ。但し、群れで来られた場合囲まれる可能性がある。囲まれたら八尋に頑張ってもらわないと厳しいだろう。今回の依頼、二人だと厳しいような気がしてきた。
「二人だと厳しいかしら」
「人数居たほうが楽だけどね。この依頼が終わったら探してみる?」
「終わったらね。良い人が居れば誘いましょうか」
美奈にパーティメンバーを増やす許可を求めると、あっさり『良いんじゃない』と言われた。言質も取ったし鼠退治が終わったら探してみよう。
地下街跡は中心部に向かう二本の広い通路があり、入り口に近い方から探索を始めた。通路の両側が全て元店舗のようで、一箇所ずつ中を確認していく。何カ所目かの探索で十字路に到着した。
「右は上りの階段っぽいわね」
「じゃあ、左に曲がってもう一つの通路の方を探索しようか」
「ぐるりと一周回る事になるのね」
「まあ、それはしょうがないよ」
同じようなことを二回ほど繰り返し、徐々に奥へ進んでいくと通路の様子が変わった。二本の広い通路が行き止まり、代わりに右の方に更に広い大通路と呼べるものが見える。
「《巨大溝鼠》も見当たらないし、大通路に行ってみましょう」
「りょーかい」
大通路へ入ると上りと二つの下りの階段を発見した。上り階段は調べる必要がないし、一つずつ下り階段を調べる事にする。
「どっちが良いと思う?」
「ちょっと調べてみるから待ってて」
八尋は下りの階段まで行って、聞き耳を立てたり様子を窺っている。八尋が調べ終わるまで辺りを警戒しておく。調べ終わった八尋が戻ってきた。
「どっち共居るよ」
「いよいよね」
刀を構え先に階段を下りる。通路よりも階段のほうが狭いので、囲まれる心配が無く戦い易い。八尋には後ろを警戒してもらう。
警戒しつつゆっくり階段を下りていくと、物音が聞こえてきた。八尋が物音のする方を魔石灯で照らす。複数の巨大な鼠がそこに居た。照らされた瞳が不気味に光る。
『嫌! 気持ち悪い!』
『ちょっとそこ、五月蝿いよ』
《巨大溝鼠》は確かに気持ちが悪かったが、先に叫ばれたことで冷静になれた。しかし、鼠に驚くとは美奈も女の娘だったんだな。
『身体がこんなんじゃなかったら、絶対ぶった斬るのに!』
うん、やっぱり美奈だった。さっき思ったことは撤回しよう。
そんなやりとりの隙を突いて、《巨大溝鼠》が襲いかかってくる。
「「キィキィー!!」」
《巨大溝鼠》の巨大な前歯が迫る。回避が間に合わないと判断し、すかさずスキルを放つ。
「《薙払》!!」
刀が横一閃に煌めくと、前方に迫っていた三匹を瞬く間に斬り倒す。残るは一匹。飛びかかってきたところを落ち着いて突き殺した。
刀を《巨大溝鼠》から抜いていると、八尋が話しかけてきた。
「さっきのはスキルなの?」
「そうよ。前方数Mの範囲攻撃なの」
さて、お楽しみの剥取の時間だ。【素材剥取人形】を取り出し《巨大溝鼠》を食べさせる。自動人形だから命令するだけで済むので楽だ。口が大きく変形し《巨大溝鼠》をバクッと丸呑みにした。全部食べ終え、しばらくすると素材だけを吐き出した。吐き出した素材は魔石の欠片と、皮と前歯の三つだ。
「剥取に時間が掛からないのが良いね」
八尋が感心していた。まあ、剥取は八尋がやっていたからな。素材を拾い道具箱に入れた。癒やしとして【素材剥取人形】はこのまま出しておく。
「さあ、次行きましょう」
続けてもう一つの下り階段で《巨大溝鼠》を狩っていく。この階段を下りた先は空間が広く七匹も居たが、八尋の援護もあって何とか倒すことが出来た。
「ふぅ、危なかったわ」
「まあ、数も多かったし」
「《巨大溝鼠》って地下二階にしか居ないみたいだから、下り階段を探した方が早いわね」
「確かにね。じゃあ、下り階段を探そうか」
今のところ地下一階には居ないようなので、下りの階段を探して行く。隈無く探した結果、計四カ所の下り階段を発見し、その都度《巨大溝鼠》を倒していった。その結果、全部合わせて三十体もの《巨大溝鼠》を討伐し、軽くノルマを達成する。
『結構、倒したわね』
『始めはどうなるかと思ったけどね』
今、目の前には五ヶ所目の下り階段がある。ぐるっと一回りして二本の広い通路のところまで戻ってきていた。
「どうする? 行ってみる?」
八尋が聞いてきた。ノルマは達成しているから確認ということだろう。
「ここまで来たんだし、せっかくだから行きましょう」
階段を下りると、今までの地下二階より広い。それに、今までは直ぐに見つかった《巨大溝鼠》が見当たらない。少し探索してみると下りの階段が見つかった。
「あら? 更に下る階段があったのね」
「物凄く嫌な予感がするんだけど」
「ここまで来たら気になるし行ってみましょう」
八尋は渋々地下に下りることを了承した。『気を付けるのよ』美奈の注意を受け階段を下りていく。すると、階段の終わりに扉が見え、その前に《巨大溝鼠》とは違う赤っぽい鼠が居た。
「何あれ?」
小声で八尋に聞いてみる。
「分からない。本か何かで見たような気がするんだけど……」
八尋が珍しく首を傾げている。
赤鼠はこちらに気付いているので、いつ飛びかかって来てもおかしくはない。こうなると、距離が離れているうちに先制した方が良い。
「魔法を使ってみるわ」
実戦で試したかったので八尋に提案した。
「分かった。でも、気を付けて」
八尋に頷いて魔法を発動させる。
「《火弾》!!」
火の弾が赤鼠目掛け一直線に放たれる。火の弾が直撃し赤鼠が燃え上がった。
「やったわ!」
燃え上がったのを見て倒したと確信した。刹那、赤鼠が後ろ脚で立ち上がり、口から火の球を放つ。ゴオォと周囲を焼き尽くさんとする火の球は、瞬く間に眼前に迫る。とっさに八尋を突き飛ばした瞬間、火の球が身体に直撃した。耳を劈く爆発音と、皮膚を焼く熱気で意識が飛んだ。
【十六夜 美奈】
種族:人間
レベル:1
マナ:11500/17500 → 500/17500
筋力:18 知力:11
体力:15 精神:12
敏捷:16 魔力:14
器用:13 幸運:17
職技能:レベル
戦士:3 → 5
魔法士:1 NEW
能動スキル:レベル
連撃:2 NEW
強撃:2 NEW
薙払:2 NEW
捨身:1 NEW
飛撃:3 NEW
挑発:3 NEW
受動スキル:レベル
頑強:2 NEW
魔法:レベル
火属性魔法:1 NEW
付与魔法:1 NEW
補助魔法:1 NEW
【三輪 八尋】
種族:小人族 種族特性:鋭敏知覚
レベル:1
マナ:2500/17500
筋力: 7 知力:15
体力:13 精神:14
敏捷:20 魔力:11
器用:18 幸運:9
職技能:レベル
盗賊:5
能動スキル:レベル
罠設置:1
罠解除:1
探索:2
追跡:1
隠密:1
隠蔽:1
解錠:1
道具鑑定:2
受動スキル:レベル
危険感知:2
罠感知:2
先制:1




