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40話 魔法

 案内図で確認してから講義室に向かった。講義室は四部屋あり、何処に入ろうか迷っていると誰かが講義室から出てきた。


「あらあら、貴女見ない顔ね~。新人さんなの~?」

「ええ、そうです。魔法を教えてもらえるというので来ました」

「あらまあ、そうなのね~。なら、ちょうど良いわ~。あたくし、魔法職の指導員やってる『諏訪 佳名(すわ かな)』よ~。よろしくね~」


 老婦人に自己紹介をして講義室に入る。


「さあさあ、どの魔法を覚えたいのかしら~」

「まだ、どれにするか迷っていて、お薦めとかありませんか?」

「あらあら、こういうのは自分で決めないとダメなのよ~。少し魔法体系の話をした方が良いみたいね~」

「お願いします」

「魔法は大きく分けて五種類に別れるのよ~。攻撃系・回復系・支援系・使役系・その他になるのだけれど、回復魔法は魔法士には使えないわ~。それから――」


 佳名さんの話によると、攻撃系は各属性魔法、支援系は付与と補助、使役系は召喚・創造・死霊、その他は幻術等の特殊な魔法になるようだ。


「――とここまでは理解できたかしら~?」

「はい。何とか理解できています」


 魔法を理解していくうちに、種類が豊富過ぎて、ますます何を選んでいいのか分からなくなった。『任せたわ』と、人任せにしている人は放って置く。

 

「理解したなら次に進むわね~。属性魔法は他の魔法と組み合わせる事で、特殊な魔法が使えるようになるわ~。例えば、火属性魔法と付与魔法を組み合わせると

火属性付与ファイアウェポン》、補助魔法とで《火属性抵抗ファイアレジスト》というふうになるのよ~」

「へぇ~そうなると属性魔法は必須ですね」

「そうね、一つか二つは覚えておいた方が良いと思うわ~。でも、人それぞれだから好きなものを覚えれば良いのよ~」

「なるほど」


 そうなると、属性魔法を覚えて他をどうするかな。召喚魔法にも興味はあるけど、無難に支援系を覚えたほうが良いのかもしれない。道具で代用も出来るけど、お金が掛かるし。


『攻撃魔法をバンバン撃てば良いじゃない』

『それは無理。「任せた」って言ったんだし、ここは僕に任せてもらうよ』

『ちぇっ、分かりましたよ―だ』


 魔法を撃ちまくってみたいのは分かるけど、普通に考えて魔法は有限だろうしね。ここは支援系魔法を覚える事にしよう。属性は火で良いや。


「決めました。火属性魔法と支援系の魔法を覚えたいです」

「あらあら、そうね~。それじゃあ、鍛錬場の方に移動しようかしらね~」


 攻撃魔法を使うには講義室では狭いので、鍛錬場に移動した。


「魔法を使うにはマナの扱いに慣れないとね~。やってみるから見ててね~」


 佳名さんは右手を出し掌にマナを集中させている。掌の上に見えない力が集まっているのが感覚で分かる。


「ここまで出来れば、後はどの魔法も同じだから簡単よ~。いくわよ~。

火弾ファイアボルト》!!」


 見えない力が火の弾となって高速で飛んで行く。離れた地面が爆発音とともに土煙が舞った。


「すごい……」

「初期の魔法でも魔力が高ければ、このくらいは出来るのよ~。さあ、やってみて~」


 佳名さんと同じ様にして、右手にマナを集中させる。《飛撃》を使った時もマナの集中はやったので、すんなりとマナを集めることが出来た。


「あらまあ、初めてにしては上手ね~。さあ、そろそろ良いわよ~。発動させてみて~」


 佳名さんに促され魔法の発動条件である魔法名を発音する。


「《火弾ファイアボルト》!!」


 右手から火の弾が飛ぶ。すぐに着弾し軽く砂煙が舞う。

 佳名さんのと比べるとやっぱりショボい。実戦に使えるのか微妙なところだ。


『う~ん、ショボいね』

『確かにショボいわ。もうちょっとどうにかしないと、役に立たちそうに無いわよ』

『初めてなんだから、そこは大目に見てよ。慣れればマシになるんじゃないかな』


 まあ、マシにならないと覚える意味が無いし大丈夫だろう。


「こんなものなんでしょうか?」

「初めてなら上出来よ~。後は、練習すれば良くなると思うわ~。とりあえず、次に進みましょうか~」


 その後、付与魔法と補助魔法を教えてもらい、魔法の習得を終了した。ただ、終わる頃には大分気分が悪くなっていた。


「あらあら、顔色が悪いけど大丈夫かしら~?」

「ええ、少し気分が悪いだけです」

「多分、魔法の使いすぎだと思うわ~。少し休めば大丈夫よ~。でも、魔法を使いすぎると気を失ったりするから気を付けてね~」

「はい、分かりました。今日は、ありがとうございました」

「はいはい、またいらっしゃいね~」


 佳名さんと別れた後、あまりの気分の悪さに、地下の休憩所で休むことにした。気分の悪さはスキルと魔法を使ったせいなのは分かってるが、結構辛い。スキルと魔法を考え無しに使うと、かなり拙い事になるのが分かっただけでも良しとしておこう。


『やっぱり魔法ってバンバン撃てないのね。良く分かったわ』

『だから無理って言ったでしょ』


 まあ、美奈は置いといて、少し休んだことで大分気分が良くなり、そろそろ八尋を探しに行こうと思う。確か、終わったら休憩所で待つ事になっていた。下手に探しまわるより、休憩所に行った方が良さそうだ。それに、まだ完全に良くなっていないので、歩き回りたくないのもある。


 階段を登り休憩所に向かうと、八尋がすでに待っていた。


「あら、もう終わってたの?」

「うん、大分早く終わったよ。美奈は遅かったね」

「スキルと魔法、両方習ってた割には、早かったと思うわよ」

「ふ~ん、そうなんだ。でも、何だか顔色悪いみたいだけど大丈夫?」

「魔法の使いすぎみたい。少し休めば大丈夫よ」

「そっか。じゃあ、早く座って休んでよ」


 八尋に気付かれるくらい、顔色が悪いらしい。椅子に座り休憩所を見渡すと、昼前の割にはあまり人が居ない。


「ここで昼食にしましょうか? もう少し休みたい気分なの」

「オイラは別に構わないよ。もう用事は済んだし、気分が良くなるまでゆっくりしていこう」

「うん、ありがとう」


 休憩してお腹がいっぱいになれば、回復するだろう。習ったスキルや魔法も試したいし、午後から依頼を受けて魔物を狩りに行ってみても良いな。

 そんなことを考えながら、昼食が運ばれるのを待っていた。


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