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15話 襲撃

 途中、二体の骸骨と遭遇したが、危なげ無く倒す。やがて、台座だけがある開けた場所に着いた。八尋が言っていた、神社跡とはここの事だろう。


「そろそろお昼になるし、ここで休憩にする?」

「あー、お腹空いた。早く食べようよ」


 八尋が急かすので、昼食用に狩ったお弁当を取り出し、パクパクと食べ始める。身体を動かしてお腹も相当減っていたのか、お弁当は最高に美味しかった。魔物が出なければピクニックするにはいい場所だと思う。

 八尋は相当お腹が減っていたのか、すごい勢いで食べている。警戒してくれれば、別にどんな食べ方をしても良いけど。まあ、ここは開けた場所なので、何かが近付いてくれば直ぐに分かるから大丈夫だろう。

 なお、僕も八尋に負けないくらいの勢いでお弁当を食べている。あっという間に昼食を食べ終え食休みを取る。すると、お腹が膨れたこともあり段々と眠くなってきた。


『呑気ね。こんなところで寝たら死ぬわよ』


 美奈の言葉通り、魔物の領域がそう甘くはないと言う事を思い知らされる。

 八尋が何かに気付いた様子で辺りを見回した。


「気を付けて何か居る!」


 八尋の一声が切っ掛けになったのか、周囲の地面が盛り上がり何かが這い出ようとしていた。

 相手は複数、一先ず様子を見る。何が出てきても良いように中段の構えを取った。

 地面から姿を現したのは、錆びた剣や斧を持った骸骨が六体。ただ、その中の一体だけ他と違い、体格が一回り大きく切れ味が良さそうな長剣を持っている。


「気を付けて、《骸骨兵スケルトンソルジャー》だ!」


 八尋が警告する。確かに他の骸骨より見た目も強そうだ。それに体格に比例するように、骨が太くて丈夫に見える。厄介そうな敵だ。


『他のが邪魔ね。まず数を減らすのよ』


 美奈の言葉を、そのまま八尋に伝える。


「まず、数を減らすわよ!」

「りょーかい!」


 骸骨はバラけている。

 一番近いやつに素早く接近、眉間を狙い気合とともに突きを放つ。


「ハッ!!」


 木刀が眉間から後頭部まで貫通し、魔石の欠片が飛び出し骸骨は動きを停止する。

 刹那、何かが砕けたような音が聞こえた。音がした方を見ると《骸骨兵》に一番近い骸骨が顔を潰されて倒れている。

 残るは四体、順調にいけば何とかなる。

 意識の埒外から、接近した一体が頭を狙って斧を振り下ろしてくる。危険を感じ一歩下がった直後に、間一髪斧が頭を掠めていく。通過した斧が地面に食い込み、動きの止まった骸骨の頭部は隙だらけだ。この隙を逃さず、上段からの唐竹割りで骸骨の頭を割った。もう斧が振り下ろされることはない。


『危ないわね。自分の戦いに集中しなさい』

『ごめん、油断した』


 八尋も奮戦しているようで、一体が戦闘不能になっている。

 八尋に気に取られ、いつの間にか目の前に骸骨が二体。その内の一体は《骸骨兵》だ。

 《骸骨兵》が袈裟懸けに長剣を振るう。鋭い一撃に何とか左に躱し、長剣を下ろしきったところに右の小手を斬る。ゴッ! と硬いものを叩いた音がしただけで砕けない。カルシウム取り過ぎだろと思いながら、嫌な気配を感じ後ろに跳んだ。身体のあった位置に、骸骨の突きが横から放たれていた。思わず冷や汗が流れる。

 攻撃後に動きが止まったところを狙われた。何とか凌いだが、これは下手に攻撃するとやられる。危険な状況だが思った以上に動けているのが救いだ。


『骸骨の連携が厄介ね。早く一対一にならないと』


 返事をするよりも早く、右から《骸骨兵》の突きが来る。予想以上の速い突きに躱せるか分からない。長剣の腹を右から叩き軌道を逸らす。叩いた勢いを殺さず一歩踏み込み、柄頭で《骸骨兵》の顎をかち上げる。

 脳震盪は起こせないが体勢は崩せた。かち上げと同時に振りかぶった木刀を無防備な胴体に逆袈裟で叩きつける。骨が軋む音がするものの未だ砕けず。だが、力任せに振りぬいて《骸骨兵》をぶっ飛ばす。


 これでしばらく時間が稼げた。この隙に骸骨を倒す。

 骸骨は警戒したのか攻撃してこない。こないならこちらから打って出る。

 骸骨の眼前に木刀の切先を突き出しながら近付く。警戒して立ち尽くす骸骨の右脛を、素早く振り下ろた一撃で破壊。バランスを崩し倒れたところに止めを刺そうと振りかぶる。しかし、いつの間にか接近した《骸骨兵》の上段からの攻撃に邪魔された。


「クッ!!」


 回避が間に合わないと即座に判断し、鍔で攻撃を受ける。鍔に重みを感じた瞬間、鍔を支点にテコの原理で長剣の下をかいくぐる。長剣が木刀の鎬を削っていくが、構わず《骸骨兵》の左側を走り抜け、振り向きざま後頭部へ一撃を加える。後頭部は脆いのかひびが入った。倒れている骸骨から距離を取り《骸骨兵》に集中する。

 やはり硬い、狙うなら脆い部分しかないか。

 《骸骨兵》と睨み合うと、突然何かが割れる音がした。音がした方に視線だけ動かすと倒れていた骸骨の頭部が割れている。

 八尋が止めを刺したんだろう。これで周りを気にしなくて済む。


『上手く戦えてるじゃない。流石、私の身体ね』

『こっちは必死なんだけど』

『訓練だし当然ね。後は《骸骨兵》だけなんだから一人で倒す事』

『鬼だ、鬼がいる』


 一対一になったことで会話する余裕は生まれたが、まだ油断は出来ない。

 まず、《骸骨兵》の顔に軽い突きを放ち牽制する。当然のように《骸骨兵》は持っている長剣で木刀を打ち払う。払われたと同時に木刀を引き戻し、《骸骨兵》の左脛へ木刀を振るった。狙ったのは腓骨。バキッ! 骨が折れる音とともに《骸骨兵》がぐらつく。体勢が崩れたところに、一箇所に狙いすました逆袈裟の一撃。乾いた音がし鎖骨が砕け、支えを失くした右腕が下がる。

 《骸骨兵》は足掻いて掴もうとしてくるが、後ろに下がって回避する。下がり際、右手に一撃加え指を砕く。武器を取り落とした《骸骨兵》に、此処ぞとばかりに畳み掛ける。

 木刀を右手側に寄せ天に向かって突き上げる。


「キィェーッ!!」


 気合の掛け声とともに《骸骨兵》の脳天へ木刀を振り下ろす。

 手が痺れる程の衝撃とともに打撃音が響き渡る。蹌踉よろめいた《骸骨兵》を見ると、頭蓋骨に大きなひびが入っている。ここぞとばかりに二撃、三撃と連続で叩き込む。一撃ごとにひびが大きくなり、何度打ち込んだのか分からない攻撃も終わりを告げる。限界を超えた頭部が悲鳴を上げて砕け散り、魔石が飛び出す。魔石を失い力を無くした《骸骨兵》が地面に倒れた。


 フーッと大きく息を吐く。少し疲れてその場に座り込む。

 八尋が近付いてきて心配そうに声を掛けてくる。


「何とか倒せたね。怪我してない? 大丈夫?」

「大丈夫。少し疲れただけよ。それにしても《骸骨兵》硬すぎ」

「うーん? 魔石持ちだから強かったかもしれないね」


 そういえば、魔石持ちの個体は普通のより強くなるんだった。


「ああ、そういうことね。さーて、それじゃあ八尋、素材の回収をお願いして良い?」

「うん。疲れてるみたいだから、もう少し休んで良いよ」


 素材の回収は八尋に任せて寝転がる。


『今回の戦いは、先ず先ずといったところかしらね。まあ、もっと実戦を積む必要があるけどね』

『もっとか……。今日はお腹いっぱいで遠慮したいです』

『死なれたら私が困るし、拒否権は無いわよ』

『分かったよ。僕も死にたくはないからね』


 美奈の言うことも最もだから納得はするけど、もっとお手柔らかにお願いしたい。毎回命懸けはキツすぎる。言っても無駄な気がするので、口には出さないが。


『考えてる事、全部分かってるんだけど』

『うん。知ってる』


 美奈をからかうのは終わりにして、疲れを取る為に身体を休める。

 雲ひとつない空が目に映る。時間的に昼過ぎた頃か。荷物も増えてバックパックの余裕が無くなってきたし、そろそろ帰って良いかもしれない。

 そんな事を考えていると、素材の回収が終わったようだ。


「終わったよ。長剣は使えそうだったから一緒に持っていくね」

「良いんじゃない。でも、結構早かったのね」

「骨と魔石を拾うだけだからね。それより、これからどうするの?」

「荷物のことを考えて、少し早いけど帰りましょうか」

「そうだね。バックパックの空きも無くなってきたしね」


 僕達は下山のために、その場を後にした。


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