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14話 実戦

 西の門から出て南に下った所にある橋を目指す。骸骨が出没する山までは一時間程で着くらしい。橋を渡るまで魔物はほぼ出ないらしいので、散歩気分で歩いて行く。

 しばらく歩くと橋が見えてきた。橋は柵で通行止めがしてあったが、閂を外せば通れるようになっている。通った後に閂を掛ければ良いのだろう。開けっ放しはさすがに拙いしね。反対側も同じようになっていたので、通った後に閂を掛けておいた。


「此処から先は魔物が出て来るから、警戒しながら移動するよ」


 八尋の警告に頷き、いつでも構えられるように木刀を準備した。今日は木刀一本で戦うようにと、美奈から指示を受ける。実戦経験を積むための魔物狩りなので、それも良いか。八尋は小石を拾いながら、スリングショットを準備していた。

 橋を渡った先は草原もしくは林になっていて、障害物も無く見通しは良い。山の麓まで道が続いているので、それに沿って歩いて行く。麓まで半分程来たところで、道沿いに林がある。何か出そうな雰囲気で嫌な感じだ。


『あー、あの林何か居そうだわ。でも、訓練だから私は偵察しないわよ』

『分かってるよ。確かに何か居そうだね』


 美奈の言葉を八尋に伝えると、僕が前を八尋が後ろを警戒しながら進む事にした。林の中の気配を窺うと、何かの気配があるのを感じる。林の終りが見えても、何かが襲ってくる様子は無い。


『もうすぐ林を抜けるけど油断しちゃダメよ』

『了解』


 もう少しで林を抜けようとした瞬間、林の中から何かが背後から襲い掛かる。

 すかさず振り返り木刀を構える。

 何かは小柄な人型で、犬のような頭部をしていた。

 武器などは持ってなく、粗末な服を着ているだけだ。


「《犬頭鬼コボルト》だ!」


 八尋が言った。《犬頭鬼》は《緑小鬼ゴブリン》と同じく群れると脅威になるが、少数だと大したことはない。気をつけるのは牙ぐらい。相手は二体、実戦の訓練にはもってこいの相手だ。

 まだ距離がある。一体は八尋に任せよう。


「一体は任せるわ」


 声を掛けると同時に、構えたスリングショットから八尋が小石を打ち出す。風切音を鳴らし、《犬頭鬼》の顔面目掛けて飛んでいく。


「ギャッ!!」


 小石が《犬頭鬼》の顔面に命中、顔が凹み地面に倒れた。


「へぇー、流石ね。スリングショットも使い勝手は良さそうね」

「上手くやれば連射も出来そうだし便利かも」


 軽口を叩きながらも警戒は怠らない。あっという間に一体を倒され、危険を察知したのか攻めてこない。逃げ出す前に、こちらから仕掛けた。相手は素手だ、大丈夫だろう。

 一気に距離を詰め、牽制の突きを放つ。

 《犬頭鬼》が左に躱したところで、頭部を目掛け右から払う。

 《犬頭鬼》は躱すことも出来ずまともに食らった。犬頭がひしゃげ倒れ伏したが、しぶとく生きている。もう一体と合わせてとどめを刺しておく。


『相手が弱すぎるけど、まあまあの戦いぶりね』

『褒めてもらったようで、ありがと』


 このくらいの魔物の強さなら余裕で戦える事を実感できた。まあ、美奈の身体能力のお陰何だけど。

 八尋が《犬頭鬼》から魔石の欠片を取り出す。欠片以外の素材は取らずそのままにしていた。荷物になるし、依頼とは関係がないからだろう。


「時間も取られたし急ぎましょう」


 それから山の麓まで何事も無かった。目の前の山はその昔、神社や寺院が数多くあった場所らしく、その所為か今では不死者(アンデッド)が多くいる厄介な場所になっているようだ。骸骨は山の麓付近にも居るので、わざわざ山の奥まで行く必要はない。


「さて、ここからが本番ね。少し山の中に入った方が良い?」

「そうだね。このまま道なりに進めば、元神社だった場所があるみたいだよ」

「そっか。じゃあとりあえず、そこを目指すわ」


 山に入った途端、ひんやりとした空気に変わった。山道は木が生い茂っているため、かなり見通しが悪い。用がなければ近付きたくない雰囲気だ。


『何だか、いかにもって場所だね』

『そうじゃないと来た意味が無いわよ』

『確かにね』


 魔物を警戒しながら、美奈と会話をしていると八尋が警告した。


「ちょっと早いけど、お客さんが来たよ!」


 三体の骸骨がこちらに向かって歩いて来ていた。三体ともボロボロの剣を持っているが、一体だけ盾を持ってる奴が居る。


『落ち着いて対処すれば大した事無いわよ』


 美奈の言葉を受け、八尋に指示を飛ばす。


「八尋、盾を!」


 八尋は盾持ちを狙って小石を放つ。盾持ちは盾で防ぐ素振りを見せたが、間に合わず頭部が破壊されその場で崩れ落ちた。

 その間に二体の骸骨が接近する。木刀の先を骸骨に向け待ち構え、先に来た骸骨の右手目掛け木刀を振り下ろす。右手はあっけないほど脆く砕け散り、持っていた剣は地に落ちる。続け様、再び振り下ろした木刀で頭部を破壊した。

 振り下ろした隙をつき、残る骸骨が上段から斬りつけてくる。頭を狙った剣の一振りを一歩下がって紙一重で躱し、隙だらけの頭部に思いっきり木刀を叩きつけた。頭部を失った骸骨が糸を無くした操り人形のようにバラバラになって地面に落ちる。


 骸骨を殲滅したので緊張を解く。美奈からお褒めの言葉をもらった。地味に嬉しい。


「これくらいなら何とかなりそうね」

「これより多かったら厳しいけどね」

「そこは八尋の頑張り次第でしょ」


 冗談めかして言うと、八尋は苦笑いをしていた。砕け散った骸骨の頭部から魔石のかけらを回収し、〈骸骨の骨〉として大腿骨を持っていく。


「意外と骨が嵩張るわね」


 〈骸骨の骨〉をバックパックに詰めながら言った。


「バックパックに余裕があるうちに、帰ったほうがいいかもね」

「そうね。でも、訓練だから良いけど、骨だけじゃ元が取れないわね。《中華人草》はどの辺に居るのか分かる?」


 目的は実戦の経験を積むことだが、《中華人草》を見つけないと確実に赤字だ。どうせなら、元を取りたい。


「この山付近で目撃情報があるくらいで、正確な場所までは分からないんだよね」

「それなら、移動しながら骸骨を倒していった方が効率が良さそうね」

「じゃあ、神社跡まで行って、別の道から山を下りるってことでどう?」

「良いわね。そうしましょう」


 反対する理由もなかったので、八尋の提案に乗った。これからの行動予定が決まったところで山道を進む。

 山の中には、一体何が待ち受けているのだろうか。山の探索を続けた。


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