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13話 買い物

 買物をする前にどんな依頼を受けたのか確認する。八尋から依頼の内容が書かれたメモを渡された。



 【〈骸骨の骨〉の納品】

 種別:個人依頼

 報酬:五つ毎 ¥五百



 【〈中華人草の茸〉の納品】

 種別:個人依頼

 報酬:一つ ¥五万~



 報酬の金額が極端に違う。骸骨スケルトンは分かるが、《中華人草》って何だろうか?

 八尋に聞いてみるか。


「《中華人草》は人型の生物に寄生して操ってしまう茸で、簡単には見つからないよ。大して強くないから、見つけたら大儲けだけどね」

「へぇーそうなんだ」


 飛散した胞子が体内に入ると寄生される可能性があるので注意が必要だが、手遅れになる前なら助けることが出来るらしい。

 依頼品の〈中華人草の茸〉は滋養強壮と軽い病気程度なら回復するため高額で取引されるそうだ。


 もう一つの依頼対象である骸骨の正式名称は《彷徨う骸骨》と言うのだが、長いので骸骨と呼んでいるそうだ。弱点は頭の中の魔石で、破壊するか取り出すことで動きが停止する。大抵の場合、武器を装備しているので実戦訓練には持ってこい、とは美奈の談だ。


「骸骨を倒しながら、《中華人草》を探して行くのね」

「うん。《中華人草》はおまけみたいなものだよ」


 依頼内容と方針を確認したところで、商店街へ買い物に向かう。組合から近いので五分と掛からず武器屋の前に着いた。外から見ても種類が豊富で中々の品揃えの店だ。


「骸骨には刃のない武器の方が良いんだっけ?」

「うん。後は美奈と相談でいいんじゃないかな」

「分かった。他に何か買うの?」

「捕獲用の武器が居るかな」


 捕獲用と聞いて首を傾げる。


「ああ、《中華人草》に使うのね」

「まあ、そうだね」


 店内に入ると、「いらっしゃい」と店のおじさんに声を掛けられた。自分たちで探すと時間が勿体無いし、店の人に聞いたほうが早いだろう。


「すいません、打撃系の武器を探しているんだけど、何かお薦めの物が無いかしら?」

「お嬢さんが何を相手にするか、にもよるけどな」

「相手は骸骨なんだけど、予算的に安いものでお願いするわ」

「ふむ。それなら、そこの樫の木刀なんかどうだい? 値段も手頃だよ。お嬢さんの得物は刀だからちょうど良いだろ」


 木刀が置いてある場所に行き、手に取って軽く振ってみると手に馴染む感触がある。中々良い感じだ。


『これなんか良いと思うけど、美奈はどう思う?』

『扱い方は刀と同じだし、変に他の武器使うより良いんじゃない』


 美奈の同意を得て、おじさんに購入を伝えるとおまけで鍔も付けてくれた。後は八尋の武器を買うだけだ。


「おっちゃん、オイラのもお願いして良いかな? 間接武器と捕獲用なんだけど」

「間接か……これなんかどうだい?」


 おじさんは少し考えた様子の後、棚からY字型の物を八尋に渡した。


「スリングショットだ。腕の支えがあるやつの方が、狙いが付けやすいくて良いだろう。骸骨なら河原を通って行くんだろうし、弾は小石で十分だ」


 Y字型形状に腕で固定する部品が付いていて、狙いがブレないようにしてある。八尋はゴムを引いて感触を確かめていたが、気に入ったのか満足しているようにみえる。


「さて、後は捕獲用か。このボーラなんてどうだ?」


 持ち手から三叉に別れ、その先に錘が付いているものを八尋に渡す。見ただけではどうやって使うのかさっぱり分からない。


「ネットでも良いんだろうが、射程が長いこっちの方がお薦めだな」


 八尋は扱い方が分かっているようで、ボーラの具合を確認している。


「おっちゃんこれ良いね。両方とも買うよ」

「まいどあり。木刀が二千、スリングショットが五千、ボーラが三千で合計一万だ」


 お金の管理は八尋に任せてある。


「八尋、払っといてね」


 八尋は金貨を一枚取り出して支払った。

 この世界のお金の単位は円なので、僕の居た日本と変わらない。ただ、紙幣が無く全て硬貨になっている。金貨は一万円、銀貨は千円、千円未満の硬貨は元と同じ。紙幣が硬貨に変わったくらいなので、お金に関して不都合を感じることはなかった。


 武器屋での買い物を済ませ、次は消耗品を買いに行くことにする。


「何処に行こうか?」

「『天海屋』で良いと思うよ」

「まあそうよね」


 『天海屋』は一階が食料品、二階が消耗品・道具、三階が魔道具を売っている。

 今回は消耗品を買うので二階に用がある。二階に着くと秋を見つけたので声を掛けた。


「秋、お店の方に出てたのね」

「あ、美奈、八尋。遺体の供養が終わって、他にすることもないですしね。それに、明日の準備も他の人がしていますから暇なんです」

「そうなんだ」


 八尋には秋と友人になったことは伝えてあった。「美奈の友達ならオイラも友達だよ」と言ったので、八尋も呼び捨てになっている。


「店に来たということは、何か買い物ですか?」

「オイラ達依頼で〈中華人草の茸〉を採りに行くから、念の為に何か対策をとろうかと思うんだ」

「そういえば、最近見かけたっていう話を聞きましたね。《中華人草》なら植物抵抗薬と除菌薬、あとマスクかな。必要なのはこれくらいですね」


 よく分からない商品の名前が出てきた。美奈も知らないらしい。


「色々必要なのね」

「ここまでしなくて良いのかもしれませんが、念の為ですからね」


 熟練冒険者の姫からも準備はちゃんとしておけと言われたし、秋が必要と言っているから買っておこう。


「秋が勧めるなら全部買うわ。全部四つづつでお願いね」

「分かりました。マスクは五つセットで千円ですから一つで良いですね。植物抵抗薬が一つ五百、除菌薬が一つ千になります。持ってきますので、会計のところで待っててください」


 秋が商品を取りに行ったので僕達は会計所で待つ。しばらくして、秋が商品を持ってきたので、八尋に銀貨七枚を支払って貰う。八尋が会計をしている間に、ラベルに書いてある商品の説明を見てみる。


 植物抵抗薬は植物系の魔物の花粉や胞子、植物由来の毒に対しての抵抗力を上げる薬。抵抗力をあげるだけなので完全に防ぐ事は出来ない。


 除菌薬は体の中に入った花粉や胞子を完全に除去する薬。今回の《中華人草》には有効で、感染した場合の切り札になりそうだ。


 マスクは胞子を吸わないためだろう。


「では、気を付けて行ってらっしゃい。茸がいっぱい採れたら分けてくださいね」

「いっぱい採れたらね。じゃあ行ってくるわね」

「行って来まーす」


 一階で昼食用の食料を買って西の門に向かう。


「準備にお金を使ったから稼がないとね」

「りょーかい。《中華人草》が見つかれば元は取れるよ」


 西の門の守衛に挨拶して町の外に出る。

 初クエストと実戦訓練の開始だ。


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