プロローグ
「いってきまーす」
と、言うと
「いってらっしゃーい。車には気をつけるのよ!」
と、母が送り出す。いつもの朝のやり取りを交わし家を出た。
ちょっと家を出るのが遅かったな。急ごう。
少し足早に、通学路を進んで行く。
自宅から高校までは徒歩十五分。遅刻まで後十五分。ギリギリだ。
いつもなら登校門限の三十分前には出かけている。しかし、昨日はネットゲームのやり過ぎで、寝るのが遅く深夜になっていた。その結果が朝寝坊という訳だった。
入学して一週間しか経って無いのに、また遅刻か……ちょっと不味いな。
ゲーム・アニメ・漫画が好きで、熱中すると時間を忘れてしまう事が多い。長い春休みの間は、ハマっていたネットゲームに毎日時間を忘れてログインしまくりだった。そんな生活を続ければ、春休み半ば頃には、昼過ぎに起きて深夜までゲームをするのが当たり前になっていた。
春休みが終わっても、一週間では昼夜逆転の生活はもとに戻らず、授業中に居眠りなんてしょっちゅうだ。
短い時間で止めようと思ってても、ついつい時間が経っちゃうんだよな……。
等と考えているうちに、交差点が見えてきた。
自宅と高校の間に国道が横切っており、この交差点を渡るとすぐ高校に着く。だけど、この交差点『開かずの交差点』と呼ばれてるほど信号待ちが長く、赤信号に捕まると確実に遅刻する。歩行者信号を確認した。
信号は……青だ!
急いで走りだし交差点向かう。交差点に着くころには歩行者信号が点滅し始めた。息を切らしながら、速度を緩めず横断歩道を渡る。渡りきったところで信号が赤に変わった。周囲には僕以外居ない。
なんとか間に合いそうだ。
安堵し、その場で立ち止まって息を整える。
刹那、左後方からキキキキーッ! と急ブレーキの音が響き渡る。何だ!? と振り返って見れば、急停止した軽自動車と、猛スピードの黒い乗用車が減速もせずこっちに向かってくる。段々近づく車を認識しても、焦って体が上手く動かない。
ぶつかる!!
逃げようと一歩踏み出すと、脹脛に衝撃が走る。足元が跳ね上げられ、体がフロントガラスにぶつかった。フロントガラスは粉々だ。反射的に頭を守ったが、衝撃で息ができない。そのまま車体後方に飛ばされた。痛みで意識が朦朧となり、アスファルトが眼前まで迫る。
グシャ!! 落下の衝撃が全身を襲う。全身の激痛と体から流れ出す血液を感じながら、僕は意識を失った。