「会話」
「南那さん、お仕事ですか?」
「っと、大家さん。相変わらず気配無いですね。今日は休みでちょっと先輩の所に」
「それはさて置き、基本的に残酷荘はどんな住人でも受け入れています。まあ割と人の道から外れていても」
「…はあ」
「家賃を払って貰えれば異形でも幽霊でも受け入れます」
「…幽霊ですか」
「会話が成立すれば人でなくとも」
「…会話が成立しなければ?」
「入居は不可能でしょうね。なので、羽村さんは人間と言う種からは少々逸脱していますが、入居可能な範疇に入ります。危険度は高いですがなんとか会話は成立していますので」
「…」
「別に南那さんの部屋に居候するのに別料金は不要ですので、現状では問題ありません」
「…」
「恐らく南那さんの後にあの部屋に住むのは羽村さんでしょうから、一応ね。ただ、南那さんはこの会話の内容を覚えている事は不可能でしょうから、余り意味は無いのですよ」
「…」
「羽村さんに憑り付こうとする幽霊を羽村さんが取り込むと、羽村さんの性質はさらに異質なものになります。それは人類にとっては危険な水準です」
「…」
「懐かれている南那さんには影響はありませんが、長期的に見ればそれを発端に人類は…ああ、もう既に、聞こえていませんね」
「…」
「夜には雨が降るかも知れないので、早めに帰ってきた方が良いかも知れませんね」
「雨降るんですか?」
「小雨程度だと思いますが」
「なら傘は不要ですね」
「そうですか、では気を付けていってらっしゃい」
「はい、行ってきます」
「南那さん、どうして自分が死んだ人間に対してそこまでするのか、その理由がただの感情移入だと言う事を分かっていませんよね?」
「何か言いましたか?」
「いえ、何も。いってらっしゃい」
「はあ…。いってきます」
敬愛する故殊能将之先生の黒い仏の構成を参考に書きました。
基本的にはホラーですが登場人物の殆どが肉体か精神のどちらか或いは両方が化け物系です。
例外は先輩くらいでしょうか。
羽村や大家メインでも何か書いてみたいですが、現段階でその構想はありません。
ネタが降臨したら或いは。
閑話休題。
異形、異質は作中で怖がらせる事は考えず、怖い想像が出来そうな余韻を残す事に重点を置いた小説をと考えて書きました。要するに全部伏線で構成しようと。
なので、ホラーな要素(と言ってもほぼ幽霊(仮)関連ですが)をちりばめながら怖くならないようにと意識しています。
元より淡々とした書き方が好きなので書き手側としては難易度低かったです。
読み手側の満足度?貴方は如何でした?きっとすっきりはしていないでしょう。
次のジャンルは冒険辺りで何か。
最後に、拙作を読んで下さった方、ありがとうございました。




