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異形、異質  作者: 魚の涙


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8/9

罪状

 目が覚めると昼下がりだった。

 部屋には俺一人。

 昨晩五十キロ以上焼いた鶏肉は跡形も無く消え去っていた。

 俺が食べたのは三キロ程なので、後は羽村が食べたのだろう。

 生霊に触られると恐ろしい程腹が減る。

 塩胡椒は病院からの帰りにコンビニで買った。

 そして現在胃もたれが激しい。

「羽村?」

 腹を摩りながら部屋中どこを探してもあの迷惑な同居人が居ない。

 現実問題、追い出さなければならなかったのだから都合がいいのだが。

 結局の所、木藤苗と鮫島繭の確執が何だったのか。正確な所は分からない。

 先輩の情報から構築した仮説はあるが。

 鮫島繭は木藤苗の生霊から逃げていたのではないか、と俺は考えている。

 普通なら逃げる為に自分から死ぬなんて真似はしないだろうが、二人が犬猿の仲だったと言う情報と照らし合わせると、まあ突飛な発想ではあるが無理は無いように感じる。

 俺は鮫島繭のぶっ飛んだ性格を知っている。

 その性格が両者の間の溝をより深いものにしていたのではないかとも思う。

 今更どうでもいい事だが。

 やるべき事は全て成し遂げた。

 羽村の放逐。木藤苗の殺害。先輩への依頼。写真の破棄。包丁と服の破棄。

 ぼんやりしながら、一人の部屋を眺めていた所で扉が叩かれた。

 お迎えか。

 先輩は上手くやってくれたのだろうか。

 扉を開けると、男が二人立って居た。ベランダの下にも誰か居るのだろう。

 男の一人が紙切れを俺に見せてその内容を意訳した。

 俺は緊張しながらそれを聞いていた。

 どちらだろうと。

 黙して男の言葉を聞く。

 最終的に殺人と言う単語は無かった。

 俺の罪状は住居不法侵入と窃盗。

 木藤苗と鮫島繭を含む八十二人への殺人罪は含まれない様でほっとした。

 これは一種の賭けだったのだ。軽い罪で重い罪を隠すと言う賭けだ。

 こんな事をしているのは、木藤苗の母親は警察関係者だったからだ。

 元警視庁のエリート。

 木藤親子の放火殺人が報道すらされないのはそう言った理由からだと先輩は言っていた。

「面子が大事なんだよ警察は。だから身内の罪は隠すし、身内が事件に巻き込まれたら全力で捜査する」

 資料課とは言え警察組織に属する先輩の言葉は妙な重みがあった。

 だから俺は、先輩に木藤苗殺害時のアリバイを作って貰う事にした。

 俺の職業、泥棒を先輩に代行して貰ったと言う訳だ。

 そして過去の殺人が絡まない窃盗罪と併せて検挙される様に仕向けて貰った。

 しかし、ここまで上手くやってくれるとは、先輩は有能過ぎる。

 笑いそうになるのを堪える。

 目の前の刑事に間違いありませんと神妙に伝え、俺は部屋を後にする。

 暫くは戻ってくることも無い部屋を後にする。

 残酷荘を出る時ふと空を見上げると、遠くの家の屋根の上に羽村が座っていた。

 その後ろに木藤苗の生霊が一瞬だけ見えた気がした。

 羽村は屋根伝いにどこかへと去って行った。

「あー」

 俺は思い出して声を出した。

「何だ」

 隣の刑事が怪訝な声をあげる。

「買い溜めした鶏肉が、まだ五十キロ位ある」

 もったいないから食べといてくれません?と聞くと、刑事は呆れた顔で何も言わずに俺を追い立てた。

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