雲に隠された空。
高い灰色のビルが所狭しと立ち並ぶ。暗い雲に覆われた空、空気も澱んで重い。
この世界に色を付けるとしたら?それはもちろん、灰色だ。
なんの個性もない、くすんだ色だろ?お似合いじゃないか。
そう笑う。鮮やかだった俺の世界はどこに消えてしまったんだろうか?
あの頃は良かったよなぁ……と学生の頃を懐かしむ。
俺はサッカー部で、MFをやっていた。そこまで強い学校ではなかったから地区予選を突破するのがやっとなくらいの弱小チームだ。
そんな弱いチームでプロだ何だ言っている奴はさすがに居なくて、もちろん俺もそんな夢を持っていたわけじゃなかった。
小さい頃、本当にガキの頃には、サッカー選手になるっ!とはしゃいでいたが、そんな夢など中学に上がる頃には、現実的に無理なんだと自覚した。
そういうのになれるのは本当に一握りで、天才的な才能がないと絶対無理。
凡人がなれたとしても補欠だろう。
こう考えると、随分自分の中学時代は現実主義だった。夢とか語ってる同級生に「現実見ろよ」と言いたくなったことも多い。
だったらいつが一番楽しかった?
部活に夢中になれたのは高校だったか……。
俺の行っていた高校は実力主義だったから、思いっきり練習していた気がする。
あぁ、今考えると、とても充実していたんだなぁ……。
「木暮先輩、何考えてるんですか?」
会社の屋上で某缶コーヒー片手にぼんやりと思案していたところ、高校からの後輩、片桐啓太が声をかけてきた。
「いや、ちょっと昔のこと思い出してただけだって。」
「……昔話すると老けるって知ってました?」
「うっせぇよ、大きなお世話だ。」
ニヤニヤとからかってくる片桐に若干苛立ちながらも、そういえば最近白髪が増えた事に気づく。余計なことを自覚させられ、仕返しに足を蹴ってやった。