思い出③〜歩いてきた道〜
歩き始めて15分。佐々原町らへんに来た。
宮家城にはあと3分ほどで着く。
「万里奈、せんべい食うか?」
ぶっとうしで歩いてきたので疲れてるだろう…と思ってオレは言った。
『だいじょーぶ。早く行こっ!!』
確かに万里奈の表情からは疲れは見えない。
でもこういうやつは我慢ばっかりして自滅してしまうことが多い。
オレはもう一度確認した。
「本当に大丈夫か?無理してねぇか?」
オレの心配をよそに、無邪気に答える。
『大丈夫だって!早く来ないと先行くよっ』
「おいっ、待てよ!!」
こんなシーンってよくドラマにあるよなぁ…なんて思いながら万里奈の後を追った。
宮家城に着いた。
二人で話しながら階段を登っていく。
あと5段、4段、3段、2段、1段…
宮家城は周りの石垣は残っているものの、土地自体は公園になっている。
「行くぞ。」
オレは歩きだした。
でも…万里奈は動かない。
「どうした?具合が悪いんか?!」
オレは本気で心配になった―オレが歩かせたから―そんな悪いことばかりが浮かんでくる。
『ねぇ。』
万里奈が口を開いた。しかしうつむいているので表情は分からない。
「どうしたん?」
もう一度オレが聞く。
『ここって…あんまり人いないかな。』
体調が悪いわけでは無いようだ。
少し安心してオレは答える。
「だいぶここも寂れてきてるしなぁ。あんまりいないんじゃねぇか?」
確かに今日はこの宮家城で人を見ていない。
『じゃぁさ…』
「うん。」
『手繋いで歩いてもらっても良いかな…?』
「もちろん。」
考える前に言葉がでた。
顔をあげた万里奈の頬は朱に染まっていた。
オレと万里奈は手を繋いで歩きだした。
「………」
『…………』
万里奈の手は温かくて柔らかだった。もう離したくない、と思った。
「……着いた!!」
『うわぁ……綺麗…!』
久しぶりに見るその景色はいつもと違った。
…そうだ。万里奈がいるんだ。
その景色はそこにいる分だけオレに勇気をくれた。
「あのさ、万里奈。」
『なに?』
「ずっとここにいたいな。」
『うん…風が気持ちいいね。』
「そうだな。………万里奈。話しがあるんだけど。」
『ふぅん…』
「ちゃんと聞けよっ!オレが言おうとしてるコト、だいたいわかるだろう!?」
『わかるよ!!!こんな雰囲気じゃぁ…』
「わかるだろうけどオレは…オレは…ちゃんとお前に伝えたいの!!」
『……』
「心の準備は??」
『……OK…』
「じゃぁ…」
一呼吸おいてから、オレは万里奈に言った。
「オレは……お前のことが…好きです。
オレはまだ、江口万里奈の事を10分の1も知らないかもしれない。でも…オレから見た万里奈は……頑張りやで明るくて、人の話をしっかり聞いてくれて。笑顔がすげえ似合う子なんだ。
今まで万里奈が歩いてきた道はどんなものかわかんねぇけど少しずつ知っていきたい。
んで、オレの歩いてきた道も少しずつでいいから知ってほしい。だから………だから…
オレと付き合ってください。」
最後にオレは頭を下げた。
『………………あたしも……あたしもあおちゃんのことが…好きだよ。…っていうよりも……大好きだよ。』
「……じゃぁ…」
『こっちこそ…付き合って下さい!』
万里奈も頭を下げた。
「万里奈っ!!」
『えっ!?えっ!?』
「ありがとう!…ありがとう!!!!」
オレは万里奈を抱きしめた。万里奈も強く、返してきた。
帰り道はずっと、手を繋いで帰った。
長く…嬉しい1日だった。