思い出②〜アイス〜
「ほら、着いたぞ。ここがオレの行きつけの黒蜜アイスの旨い店。」
オレはそう言うと店内に入った。
「すいませーん。野原さーん。」
大声で呼ぶ。
「おう、碧くんか。いらっしゃい。そっちのお嬢さんもようこそ。」
この人がこの[日々茶屋]の店主、野原爾さん。今年、八十七歳になるおじいちゃんだ。
野原さんはオレのことを小さい頃から知っていて、本当に祖父のような存在だ。
「野原さん、黒蜜アイスの二つね。オレのは蜜多めで。…万里奈はどうする?」
『あたしもあおちゃんと同じのでいいよ。』
「じゃあ蜜多めを二つ。」
5分ほど待つと、野原さんがアイスを運んできた。
一口食べる…
「……っ!つめてぇ〜!!やっぱうめぇよ。野原さん。」
そういいながら万里奈を見る。
「……はぁ?!」
万里奈の皿にはもうアイスはなかった。
『むっちゃ美味しかったぁ!!なぁあおちゃん、もう一個食べていい?』
「いいけど…」
驚いたが、優しい気持ちになれた。コイツ、すげぇ嬉しそうに、旨そうに食うやつだな。見ているこっちが幸福になれる笑顔だった。
『ありがとーございましたっ!!』
万里奈は元気よく野原さんに言った。
「また来きなさいよ〜」
野原さんも顔を皺くちゃにして笑って言った。