保育園
「やべっ間に合わねぇよ」
歩き慣れた道を今日は走る。
あと2分しかない。
「すいませーん、迎えに来ましたぁ…」
そういいながら門を開ける。そうしないと鍵がかけてあるこの門で時間をロスしてしまう。
「すいませーん…」
やべっ間に合わなかったか…
「はーい、今行きまーす」
その声を聞いて安心する。どうやら大丈夫だったようだ。
夕方の6時を過ぎると延長料が取られるから急いでいたのだ。
「あっ、小神さん。待っててくださいね。」そう言うと保育士の安達さんはオレの息子を呼びにひばり組へと入っていった。
小さなグラウンドに一人残される。ブランコ、滑り台、砂場。目を閉じると自分の幼かった頃の思い出が甦ってきた。
「パパっ」
目を開けるとまだうまくはけない靴を一生懸命に急いで履いている息子が見えた。
ゆっくりと息子のもとへ向かう。
「小神さん。もう少し早く来てくださいね。」
呆れたように安達さんが言う。
「パパぁ〜」
靴を履き終えた息子はオレの足に纏わり付いてきた。
「すいません。」
いつもの事なので安達さんはもうほとんど諦めているのは知っている。とりあえず謝り、荷物を受け取ると、
「そういえばもうすぐ1年ですよね。」
そうだ。もう1年経つんだな…
オレの前から大切な女性が一人消えた日…