表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

絵を描く手

作者: 悠蛹
掲載日:2026/06/07

 俺のクラスにはいじめられっ子がいた。

 いじめの内容は典型的なもので、持ち物を隠されたり壊されたり、落書きをされたり。

 髪や服を引っ張られたり、ズボンを下げられたり、転ばされたり…悪ガキたちは飽きもせずアイツをいじめていた。


 いつも荷物をたくさん抱えていて、それを奪われたり隠されたり、そのせいで授業に遅れている。

 先生が犯人探しのような会を作り、そこで彼らが怒られてからイジメはむしろ勢いを増した。

 次の授業に関係ないものはロッカーにしまえばいいのに、と思ったが、ロッカーに置いたらそれこそ何をされるか分からない。

 俺はアイツを横目で見てるだけだ。

 

 加害者にはなりたくないし、被害者にもなりたくなかった。


 美術の時間、各々が描いた絵を壁に飾った。

 アイツは案の定、授業中に絵の具を隠されたり、紙に落書きされていた。

 悪ふざけしていた奴らはみんな授業中内に描ききれず、休み時間や家での宿題になった。


 絵が貼り出された当日、俺はなぜかアイツの描いた絵の前に立っていた。


 アイツは絵がうまかった。

 上手いという表現で合っているのか、俺には分からなかったが、アイツの絵は子供が授業で無理やり描かされた中で、目立っていたのだ。


 絵を見た時、周りには悪ガキたちもいた。

 俺は、アイツがなぜこんな授業の課題に真面目に取り組んだのか、馬鹿だなぁと思った。

 目立つということは、彼らにとって不愉快であり、アイツへのいじめがより激しくなるのが目に見えていたはずだからだ。


 俺も、なんだか腹が立っていた。


 俺は運動が出来るわけでもなければ、勉強も大して出来ない。

 絵が描けるアイツに、負けた気がしたのだ。

 傍観していながらも、冷ややかに、確かにアイツを下に見ていたのだ。


 俺は絵を描き始めた。

 だが思うようにいかず、誰に見られるでもないのに、丸めた紙が開かれたり、繋ぎ合わせて見られないために、上からのぐちゃぐちゃと線を引き、細かく千切って捨てた。


 ある日、下校中の河川敷でアイツといじめっ子の集団を見かけた。

 アイツは彼らに囲まれ、バッグを両手で抱えたまま俯いている。

 人一倍身体の大きな悪ガキに馬乗りになられ、頭を地面に押し付けられる。

 俺は黙って、川沿いの道から眺めていた。

 彼らはアイツを罵倒しながら、その両手を踏みつけた。


 執拗な両手への暴力で、アイツの爪は欠け、血が滲む。

 なぜだか、猛烈に怒りが湧いた。


 俺は近くの交番へ走り、河川敷で見たものを話した。警察官は礼を言うと交番を出て行った。

 俺は交番からまっすぐに家へ帰り、いつものように絵を描き始めた。


 アイツは学校に来なくなった。

 俺を含め、みんなはイジメが原因だと口々に囁いた。イジメていた彼らは、何の変わりもない。

 少しして、アイツは親の都合で転校することになったと、担任の教師から説明を受けた。


 それから俺は、絵を描くのをやめた。


 踏みつけられたアイツの手は、まだ絵を描くのか。

 俺は気にならなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
主人公が絵を描き始めた理由と止めた理由。無意識の見下し。リアルですね。主人公は最後に、いじめられっ子が絵を描いてるかなぁ…?と気にかけてるかと思えば、忘れるかのように無関心になる。 もし、いじめられ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ