5 奪われた日(回想)
激しい物音でアニーは目を覚ました。
不安感を抱いたまま、彼女はベッドを降りて寝室を飛び出した。暗い廊下を慎重に進み、物音がした一階へと降りていく。
リビングの明かりをつけた瞬間、倒れている鳥籠が目に入った。中には石化した小鳥がいて、アニーは悲鳴を上げた。石になってしまった小鳥を手に持って、彼女は急いで母親が眠る寝室へと向かった。
「お母さん、開けて、ブルーが石になっちゃった」
アニーは泣きながら扉を叩いた。いくら待っても反応がなく、扉を開ければ中には誰もいなかった。助けを求めて今度は父親の寝室にやってきたが、鍵が閉まっていて扉を開くことができなかった。パニックに陥っていたアニーは、わんわんと泣きじゃくりながら何度も扉を叩いたのだった。
「来ないで!」
中から聞こえてきたのはクレアの叫び声だった。
「クレア、お父さんを起こして、ブルーが石になっちゃったの」
「できないわ、お願いだから静かにして」
「はやく起こしてよ、ブルーを助けてよ」
「どうして言うことが聞けないの!」
クレアは声を荒らげて激しく怒鳴った。
初めて聞くクレアの怒鳴り声に驚き、アニーは訳もわからぬまま泣き続けた。
「クレアのばか、クレアがブルーを石にしちゃったんだ」
アニーは心の中に渦巻く悲しみをすべてクレアにぶつけた。クレアからの返答はなく、寝室から窓を開くような音が聞こえてきた。
アニーはそれからしばらく扉の前で泣いていたが、そのうち泣き疲れて眠ってしまった。彼女が目を覚ました時、夜は明けてすっかり朝になっていた。
石化した鳥を持ったまま、彼女はよろよろと動き出して家を飛び出した。庭に回り込めば開け放たれた寝室の窓が目に入った。中を覗き込むと石になった父親がベッドで横たわっていた。床には割れた鏡の破片が散乱しており、争ったような形跡が残っている。
「お父さん?お母さん?」
アニーは家族を呼びながら部屋に入り、床に転がる母親の石像を見つけた。目の前の現状を受け入れられず、彼女はその場にへたりこんでしまった。鏡の破片を踏んで足から血が流れたが、彼女は痛みすら感じられないほど混乱していた。
「クレア?」
救いを求めて姉の名前を呼ぶが、返事はない。たった一晩で消えてしまった家族を前に、アニーは一筋の涙をこぼした。
まるで彼女に寄り添うように、外ではブランコがきいきいと鳴いていたのだった。




