第四話 戦闘班とは。
突然だが。
宇宙隊第二本部は第六宇宙隊が発見した宇宙の土地に建造されている。その土地はあまりにも広大で未だに全容が見えていないらしい。それに、その土地に近づくと地上のような重力に引っ張られ、立ったり歩いたりする事が出来るそうだ。
だがその土地に行くためにはまず、土星の環のようになっているデブリ帯を抜ける必要がある。それがまさに、今目の前にしている宇宙のゴミだ。
「わー、結構色々あるんですね」
乾ききっていないなにかの肉片、撃墜されたであろう宇宙隊の残骸、謎の木や明らかな人工物の破片など。科学的、歴史的観点から見てもゴミと呼ぶには宝の山すぎる。
「気をつけろよ、ゴミに混じってアンノウンが出てくるかもしれねぇ。索敵班には十分警戒させておけ」
宇宙には光が無い。厳密に言うと光源が極端に少ない。本来は太陽が地球の周りを回っているはずなのだが、一向にこちら側へ太陽が回ってくることが無い。ゆえに光というのはこちらから照らさない限りアテにならない。
索敵班は舟から照らし出される光の他に、【動流探知反響機】という索敵班専用装備を使って周囲を警戒している。
この装備は中々どうして優秀な物だ。一定範囲内の動く物又は物体を精巧に地図へ投影し、リアルタイムで周囲の状況を把握できる。
「今のところアンノウンらしきものはないみたいですけど…………、あ、そうでもないみたいです」
索敵班と船内電話でやり取りしていた操縦班の一人が慌てながらこちらへ来る。
「マズイっす、アンノウンっす」
潜航から約一週間とちょっとが経過し、そこからデブリ帯に突入してから半日が経過した今、ようやく一体目のアンノウンと遭遇した。
俺はすぐさま船内アナウンスでヤツらを呼び付ける。
「あーあー、アンノウンが出たみたいだから戦闘班は甲板集合。最後のやつは晩飯減らすぞー」
ありがた迷惑ではあるが、俺は十三隊の奴らに嫌われてはいない。
しかしカジしかりゼクスしかり、おかしなヤツというのは人生で一度や二度は関わりを持つ時がくる。それはもう人生において逃れようのない事柄だ。
だが俺の十三隊は、そんな逃れようのない事柄が助走をつけてぶん殴った後に地面に叩きつけてくるくらいに、イカれたヤツが多い。マトモなヤツが慕ってくれる分には、素直にありがたいのだがな。
操縦室から船内へ戻り、鉄の階段を下って甲板へ出ると、五人五色のイカれたメンツが遊んでいた。
「あ、隊長! アンノウンの処理が終わったらまた稽古つけてくださいよ!」
一人目の狂人は【プロティーン】。十三隊を象徴する渋めの黒い隊服を着ているのだが、他の隊員は違和感なく着こなしているのだが、コイツはめちゃくちゃピチッとしている。今でこそ俺に稽古をせがんで来るが、十三隊に入りたての頃は自分の筋肉しか信仰せず周りとトラブルばかり起こす脳筋だった。
ちなみに宇宙隊への入隊希望の面接の際、「宇宙とかどうでもいいですけど、第八宇宙隊隊長のようになりたくて来ました」と、宇宙隊そのものより個人に憧れて入ってきたという癖強エピがある。
「たいちょ、稽古より、宇宙の神秘が、泳いで来てます。ウウウゥゥゥゥゥ!!!」
二人目の狂人は【オピウム】。見ての通りのヤク中。呼吸と身体が小刻みにリズムを取っている。身体は細身で髪の毛は整っておらず、またどこからか取り出した錠剤を一粒口に運ぶ。存在自体の癖が強い。
「まーたオピちゃんはガンギマってるのー? アタシにも下さいよー」
三人目の狂人は【マイン】。宇宙空間ではその性質上ふわふわとした動きにならざるを得ないのだが、コイツは地上にいた時もふわふわした動きをしていた。
綺麗と言うより可愛らしい顔付きの女なのだが、そんな顔と動きとは裏腹にドス黒い性格をしている。あ、またオピウムがキマってる隙に薬盗んでる。
さーて、四人目の狂人は…………――――
ゴルルルルルルルルアアァァァァァァ!!!――――
おっと、紹介が待てなかったのか、接近していたアンノウンが宇宙を揺らす咆哮をあげる。しかしその姿はまるで、何かに怯えているような焦燥した様子だった。
五つの人面が叫んでいるような顔面に、胴体は軟体生物のようにモゾモゾとした動きでこちらへ来る。
「さーて戦闘班の諸君。蛭型のお出ましだが、ナマった身体を温めるには少し強めな相手かな?」
俺がぱしんと手を叩くと、それまでまるで話の通じなかった五人は顔を上げる。言われた事さえこなしていれば、俺に叱られることもシバかれる事も無い。しかし言われた事すら出来ないのであれば…………と彼らは知ってる。
だからこそ、この俺の一つの動作で統率が取れる。
「お互いを殺し合わず、アンノウンにだけ集中。俺は手を出さないからあとはお好きに」
俺は手のひらを五人に見せるようにして戦闘を促す。すると彼らは一糸乱れぬ動きで、腰に着いている【接地面重力装置】を駆動させる。
まるでトランプケースの中に赤い扇風機を入れたような見た目の接地面重力装置は、その羽を目まぐるしく回転させてだんだんと効力を使用者へともたらす。
ズンッと身体に重みが入ったのか、五人は肩を回したり屈伸したりと、準備運動を念入りに行いそれぞれの武器を構える。
そして五面の蛭型へと挑戦的な笑みを浮かべた。
ちなみに第十一宇宙隊は全員が戦闘訓練をガッツリ受けていたため、専用装備をもつ三人目以外も割と戦えた。
でも班分けをして役割を細分化した第十三宇宙隊の戦闘班は、個々人が専用装備を使用して戦う戦闘特化集団。アルバートとゼクスを含めた七人で残りの十三隊を守り切れるくらいには戦闘力が高い。
べ、べつに四人目と五人目の設定が練りきれてないから紹介しなかったとか、そんなんじゃないんだからね!




