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第二話 宇宙に行くとは。


 …………


 ………………


 ……………………


 ………………


 …………


 と、ここまでが先達である第十一宇宙隊の最後の記録か。かなり主観的かつ断片的な事しか分からない上に、第十一宇宙隊が宇宙隊第二本部に向かったことしか記録されていない。

 第十二宇宙隊も似たような内容の記録しか残っておらず、潜航して間もなくアンノウンに襲われてからの記録がブッツリと消えている。


「なあ、俺達本当に宇宙なんか行けんのか?」


 隣で俺の資料を見ていた【ゼクス】が弱音を吐いている。筋骨隆々でイカつい見た目の割に臆病でネガティブな俺の同期。

 

 地上の【宇宙湖畔】に設置された【宇宙隊第一本部】で近年稀に見る好成績をたたき出したコイツが、なぜよりもよって中身がダメダメなのか。時々引っぱたきたくなる。


 カチカチと小さく揺れるゼクスに呆れつつも、俺は彼に「ダセぇな!」と言い背中を叩いた。強めに叩いてやったために痛がってたが、猫背でナヨっとしていた姿勢が伸びる。


()()()宇宙隊、まもなく潜航いたします。本船の隊員は速やかに甲板へ集まり、そうでない隊員は直ちに舟から降りていただきますようお願いいたします」


 …………っと、潜航のアナウンスが鳴ったな。

 俺は座っていた椅子から離れて()()を持ち、準備を素早く済ませて自分の部屋から廊下へ出る。筋肉に見合わず控えめな動きのゼクスも共に部屋を出て廊下を歩き、無機質な鉄の階段と上がって外へ出る。

 外は快晴。雲ひとつない青々とした空が俺を出迎える。太陽、今日も元気に俺の周りを回ってくれてありがとう。


 青く広がる空とは違い、舟の下には深淵の如き闇が広がっている。俺達がこれから潜る場所、宇宙。その宇宙には選ばれし者しか潜ることが出来ず、また五体満足で帰ってこられるもの選ばれし者しかいない。


 第十一宇宙隊が潜航してから約三年後、第十二宇宙隊が潜航。ただの一人も生還者はおらず、また、ただの一人も宇宙隊第二本部に辿り着けた者はいない。


 前回の潜航から四年後の今、今度は俺達第十三宇宙隊が宇宙へと潜航する。

 

 この為に俺は生きてきた。

 この為に俺の人生があった。

 この為に俺は()を飲んだ。


「早く行こう……」


 甲板の船頭にゼクスと立ち、俺達のことを真っ直ぐな目と姿勢で見る第十三宇宙隊の隊員達に向け拡声器を構える。


「いいかお前ら、俺達はこれから宇宙に潜航するッ! 何のために訓練を積んできたのか、何のためにここまで来たのか、それを証明する時だッ!」


 ――――うぉおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!


「死ぬ気で耐えた訓練や娯楽の一切を絶たれた生活とはもうおさらばだ! この先は死と探求しかない全くの未知がお前らを待っている。総員準備は良いかぁ!?!!」


 ――――うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!!


 まさに咆哮と呼ぶに相応しいほどの隊員の雄叫びが舟の外まで響きわたる。ある者は武器を掲げ、ある者は仲間とがっしり腕を組む。今俺の目の前にいる三十名の第十三宇宙隊は大いに盛り上がり、本部から見ていた他の隊員達から激励が飛んでくる。


 そんな激励を浴びながらゆっくりと動き出す舟。全体が鉄出できており、宇宙環境における戦闘に特化させた装備が積んである。宇宙を探求するという目的に逸れることなく、自分らよりも上位の存在へ対抗するための手段を多く得た。

 

 名を【ブロシーカー】。


 俺が造らせ、俺が名付けた。


 なぜなら俺は………………


「隊長! 潜航地点までに稽古つけてください!」


「ダメだよ、隊長は俺と猥談するんだ!」


「ほんとキモイお前。それよりも隊長、私とお話しましょうよー」


 また始まった。


「俺はお前らの隊長なの。(たい)(ちょう)。馴れ馴れしくすんじゃねェよボケども」


 ワーワーキャーキャーと騒ぐ()()()のヤツら。俺達第十三宇宙隊が編成されてからというもの、毎度こんな調子で過ごしてきた。

 賑やかなんだかやかましいんだか。それでも俺は、なんだかんだとこの雰囲気が嫌いじゃない。嫌いじゃないのだけれど…………


 (また騒ぎたいよ()()())


 度々思い出してしまう。


「ほ、ほら【アルバート】、またみんなが呼んでるよ」


 ゼクスの弱々しい声に振り返ると、ニカニカと微笑む十三隊の面々。やかましい程の声でポーカーしようだの、飯を食おうだの、稽古したいだの。まったく、センチメンタルにすらなれやしない。


「ったく、しゃーねェなぁ!」


 俺は持っていた()()の剣からなる盾を傍に立て掛けて隊員達の群れへ飛び込む。暗い宇宙にも負けない明るい者達の中へと。

あらすじでデイヴィッドが主人公と言ったな。

あれは嘘だ。


というわけで、本作はアルバートくんが主人公の物語でした。

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