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8.


 

 

 エドワードと和解してから数日後、イブリンは屋敷を訪ねてきたマリアンと対峙した。

 マリアンはどことなく哀愁を帯びていた。


「エドワード様のことが、ずっと好きだったわ」


「えぇ、存じ上げております」


 いつでもマリアンはイブリンに対して敵愾心を剥き出しにしていた。


「エドワード様は、どんな時もあなたを見ていました。私は……幼馴染で、妹のまま。そこから抜け出せなかったの」


 自分がもしマリアンの立場なら――そう考えるが、それはマリアンにとって失礼に当たると思いやめた。


「私は自立した女性になりますわ。イブリン様に負けないくらいの」


 紅茶を飲み終えたイブリンは椅子から立ち上がると、イブリンの目を見つめた。


「私に縁談が来ておりますの。ですが断りますわ。私は私の道を見つけるまで独り身でいると決めたの」


 厳しい道だがマリアンは過去の自分を悔いた結果、自立する道を選んだのだ。


「どうかエドワード様のことを頼みますわ。不器用な方ですけど、イブリン様を思う気持ちは誰よりも強い方ですから」


 マリアンの顔は晴れ晴れとしていた。新たな道を模索し、冒険する一人の女性がそこにはいた。


「それでは、ご機嫌ようイブリン様」


 玄関前でマリアンは礼をした。それは決別でもある。

 イブリンもそれに答えて礼をした。


「ご機嫌ようマリアン様」


 去っていくマリアンの背中は希望で満ち溢れていた。




 一方、ハートフォード商会はイブリンが夜会で離縁されたゴシップの影響を受けていた。

 だがイブリンはそれを払拭するのは簡単だと思った。


 懇意にしている顧客の夜会に招かれたのはイブリンだけだったが、その隣には彼女を守る騎士のように夫エドワードがいた。

 夜会は騒然となった。離縁された妻と離縁を宣言した夫が仲睦まじく話に興じ、音楽がなれば楽しそうに踊ったのだ。

 ゴシップ誌を賑わせた離縁された妻の話は、結局あっという間に鎮火した。




 夜のアッシュフォード邸の庭の石段に二つの影があった。


「今まで馬鹿な言葉ばかり投げつけてすまなかった」


「わたくしの方こそ、夜会に勝手に出かけたりしてすみませんでした」


 イブリンの頭がエドワードの肩にそっと寄せられる。


「俺はトマスにも嫉妬していた。俺を捨ててトマスを選ぶのではと恐れていた」


 イブリンは手袋をそっと外した。

 今まで直接触れるのが恐ろしかったイブリンには、もう必要のないものになった。

 夫エドワードの腕にそっと手を置いた。

 エドワードはその手に己の手を重ねた。


「わたくしたち、やり直せますよね」


「当たり前だ。せっかく手に入れた大切な妻を離したりするものか」


「いつまでも共にいてくれますか?」


 イブリンが少しの不安を滲ませる。


「君が嫌だと言っても俺は君と共にいると誓う」


 そうして見つめ合う二人の影が、そっと近付く。見ているのは星々だけだった。


 

 

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