手が届かない
冬休みに入って、彼女に会えなくなった。
何故だろう。毎年と同じように過ごしてるはずなのに、どこか満たされない。
気づけば大掃除が終わり、年越しのカウントダウンをしていた。
「翡翠…さん、今何してるんだろう。」思わず口から零れる。連絡先ぐらい交換しとけば…。まぁ後悔したって後の祭りだし…
これから機会があれば絶対交換するぞ!!
なんて考えたり。
そういえば、明日は陸と航で初詣に行くんだった。
初詣か…。翡翠さんも居るかな?
そんなことを考えながら、年越しのカウントダウンが終わり、眠りにつく。
待ち合わせ場所に行くと、陸が先に居た。
「透、明けましておめでとう。」先に言われてしまった。
「明けましておめでとう。陸早いね〜航は?」そう聞くと
「寝坊、ちょっと遅れるって。」そう言って、スマホの画面を見せてきた。
「だから、先に行っとくって送ってたところ。」と言った。
「じゃ、行こうか〜。」神社の鳥居を潜ろうとして、見覚えのある顔が2人いた。
「あれ?美咲と翡翠だ。奇遇だね、2人も初詣?」陸が聞いている。
僕としてはそんなことより翡翠さんに意識を持っていかれていた。
いつもと違う髪型、そして振袖。
好きな子が振袖ってだけでこんなに破壊力があるのか…。
面と向かって、改めて好きなのだと自覚した。
「翡翠…さん。じゃなくて、翡翠、明けましておめでとう。」
やっぱりさん付けしないとむず痒い感じがする。
「透くん、明けましておめでとう。」彼女は寒いからか顔を赤らめている。やばい、話題が…口が動かない。
聞きたいことがあったはずなのに、いざ面と向かって話すとこんなに喋れなくなるのか…なんか少し気まずいな…そんな風に考えて居ると
「陸!!透!!わり、遅れた!!」気まずさを吹き飛ばす寝坊助がやってきた。
「航、明けましておめでとう。」それにあやかって、航に言う。
「おう、今年もよろしくな!!って、あれ?美咲と翡翠もいるじゃん!!なんで?」航のこういう所に今は助けられている。
「たまたまそこで会ったんだよ。」そう陸が言う。
「2人も今年もよろしくな!!」「うん、よろしく〜」「よろしくね?」そんな会話が飛び交う。
「それで?私たちに対して何か感想は無いんですか〜」美咲さんがそう言った。
「2人とも似合ってるな!!」「うん、似合ってるね。」2人がそう言う。
「それで、透くんは?何かないの?」何故だろう、美咲さんから圧を感じる。
「2人とも似合ってると思います……よ」圧に負けてそう言った。
「みんなありがとぉ〜」美咲さんは満面の笑みでそう言い、翡翠さんに何かを言った。
翡翠さんは顔を赤らめて、美咲さんに怒ってる。
久しぶりに会ったからかな、翡翠さんがすごく可愛く映る。
境内を歩いていると、翡翠さんが歩きづらそうにしていた。
手を引こうか迷う。思い立ったが吉日とも言うし…
「翡翠さん、歩きづらくない?良かったら握って?人混みではぐれてもなんだし。」そう言って手を差し出す。
「え…?うん。ありがとう。」顔を赤らめて笑顔で言ってくる。何その反応、どっち!?
そんなこんなでお参りを済ませ、帰ろうとすると、
「腹減ったなぁ、売店でなんか買おうぜ!!」お腹を鳴らして航が言う。「良いね、まだ何も食べてないし丁度いいかも。」陸が言って、「あ、じゃあ私唐揚げ食べたい。」
美咲さんも言う「私も何か欲しい!」翡翠さんもそう言った。
「OK、じゃあ僕と航で行ってくるよ。透はここにいて?」陸がそんなふうに言うので航が「何でだ?みんなで行きゃ良いじゃん?」と言ったが「女子は2人とも草履だから待ってた方がいいでしょ?かといって2人っきりだと危ないから、透に居てもらおうって話。」航は納得したように、「そうか!じゃあ透、2人のこと頼んだぞ〜!!」
3人になると突然、「あっ、私ちょっと御手洗に行ってくるね?」美咲さんはそう言い、早足で行った。
「2人っきりだね…」最初に口を開いたのは翡翠さんだった。
「そうだね…」何もしてないけど気まずい空気が流れる。
ってあれ?今連絡先交換するチャンスじゃないか?
言おう、言おう。そう心の中で準備して、
「あの!!翡翠さん。じゃなくて、翡翠!!」突然名前を呼ばれてビクッとした翡翠さんがいた。「な、何?」驚きすぎたのか耳まで真っ赤だ。
「連絡先!交換しない…!?」翡翠さんは呆気にとられたのか、無言で動かない。
「あ、あの翡翠…?」名前を呼ばれ、我に戻ったのか、「も、勿論。交換しよっ…!!」翡翠さんはそう言った。
「ありがとう…!!」勇気出してよかった…。しみじみと思う。だけど、なんか…こんなに上手くいくと翡翠さんが俺のこと、好きなんじゃ…って勘違いしてしまう。
っていうか翡翠さんって誰が好きなんだろ?
やっぱり…陸かな?
細かい所まで見てるし、配慮もするし、俺より仲良さそうだし…。
…あまり考えないようにしよう。僕が翡翠さんを好きだってだけで、十分だ。
陸と航、続いて美咲さんも帰って来て、色々食べて、帰路についた。
家に着いて、ベッドに埋もれ、新しく増えた連絡先を見てはニヤニヤしてしまう。
気づけば冬休みが終わろうとしていた。
本当にあっという間だ。
傍目に見ると、5人の内2人がニヤけていたそう。




