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4 小説家になろう――そして物語がはじまる

 そしてコロナ期を迎える。

 私は当時何社目かの転職先で働いていた。


 だがなんと転職先の業界は、コロナの外出&消費自粛ムードで大打撃を受けてしまったのである。


 ――そして私は、事実上の退職勧告をうけた。

 このままウチで働くなら、九州に異動してくれないか?


 おバカさんな私でもよーくわかる。

 左遷だ。


 九州は美味しい食べ物が沢山あって素敵だけど、今はコロナで外食も行けないし……

 

 って言うか、関東から遠すぎんか???

 ひとりぼっちの新天地。

 ひとりぼっちのコロナ禍。

 コロナに罹ったら、誰にも食料を届けて貰えず、なんならアパートの個室でひとり寂しく死んでいくのかな……


 もちろん次の日、退職届を出した。

 ……いつか潰れそうな業界に命をかけるのはちょっと怖すぎる!!



 ――それから何度か転職活動をして、今の職場に巡り会った。

 給料が良いわけじゃない。

 でも、休みがちゃんと休みだ。

 休み(休日出勤)ってこともないし、休み(サービス出勤)ってこともない。

 しかも、1日10時間働く代わりに週休3日制。


 

 もう、仕事のために生きるのは辞めた。

 ちゃんと上手に生きようと、下手くそながらにみんなみたいに頑張って仕事に打ち込んできた。

 でも、コロナみたいな大きな禍が起きたら業績はあっという間に傾いてしまう。


 これからは、給料を上げて出世することより、楽しく生きよう!

 休みを謳歌しよう!

 だって今度の職場には、夢にまで見た有給もあるんだから!



 そう決心した私はつい先日、5年ぶりに親友に『いつ遊べる?』とLINEをした。



 ****



 私も大概なんだが、親友のテンションも13歳のあの日からずっと変わらない。


 外で大人の振りをしてるから、友達の前だとつい童心に帰ってしまうのかもしれない。

 ……私たちの精神年齢が育ってないとかじゃなく。きっとそうだ、そうにちがいない。


 親友は子供の時からボキャブラリーが豊富で、喋っていて楽しい。ツッコミみたいな活きのいい相槌が、すごい速度で返ってくる。

 打てば響くどころじゃない。打てば響きまくって反響音までどデカいって感じ。


 私は彼女の相槌が好きだった。今まで出会った誰より、彼女の選ぶ言葉が好きだった。


  

「さっすが、語彙力の嵐って感じ!」

 私が褒めれば、謙遜が返る。 

「そうかあ? 最近じゃ本も読めてないよ。仕事場と家の往復だけで時間が溶ける」

 

「そっかなあ、昔の経験値じゃない? 子供の頃、超本読んでたじゃん!」

「あー、まあ昔取った杵柄かな〜。あん時はめっちゃ読んでた!

 一緒に話考えたりもしたよなぁ、懐かしい〜!」

 

 

 あの日と変わらない親友の笑顔とやり取りに、私の脳裏に13歳の日々がありありと蘇った。

 あの日一緒に考えたキャラクターたちとその物語が、私の中で息を吹き返すのを感じていた。


 ずっと埃をかぶっていた物語。


 ずっと、心残りだった物語。



 親友と遊んだ帰り道、私は電車の中でテキストエディタを開いていた――



 ****



 勢いのまま、私は20話程の『魔女の娘は正義を知らない』のストックを書き上げていた。

 鼓動の高鳴りを感じる。


 最初は休みの日に数時間だけ開いていたテキストエディタは、今や毎日開くものになった。

 ちょっとした隙間時間にも、とめどなく言葉が溢れてくる。

 私は溢れる言葉をすくい上げ、物語に落とし込むのに夢中だった。


 13歳の時、夢中になって毎日ルーズリーフに向かっていたように、今の私も夢中になって指先をスマホに滑らせる。

 あっという間に、テキストエディタのカウントする文字数は増えていく。


 楽しかった、本当に。

 ――今も、すごく楽しい。



 ****



 そして私は、親友にこの物語を絶対に見せたいと強く思った。

 だって彼女は、ちゃんと私との思い出も、この物語のことも覚えててくれた。


 ……私の心残りを、形にする時が来たんだ。



 そして私は、投稿プラットフォームに『小説家になろう』を選んだ。



 どうせ、小説を書くならちゃんとした形で親友に見せたい。

 それなら、ずっと憧れていた『小説家になろう』に投稿してみたい!

 親友以外の誰かにも、もし届いたら……嬉しいからね。

 


  

 私の物語は13歳の『小説家ごっこ』から始まった。

 

 小説家ごっこから、小説家になるんだ。

 ――今これから。



 ****



 今までお付き合い下さり、ありがとうございます。

 これにて私の、『なろうに投稿しようと思ったわけ』のエッセイは終わりです。


 幼い頃からの長い思いが詰まった私の言葉たちが、いつか誰かの胸に届く日を夢見て、これからずっと筆を執ろうと思います。

 私の物語は、始まったばかりなのですから。

 


「物語を書こうと思ったけどやめてしまった人」や「これから物語を書いてみたいと思っている人」のちょっとした後押しにもなれたら嬉しいな。


 では、また物語でお会いしましょう。

 

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