姉上、落ち着いて
四月から高校に入り、忙しくなってしまい、更新できませんでした。
またぼちぼち書いていきます。
馬車に揺られながら、僕は外を見ていた。
「何見てるの?」
姉のルナが僕が見ていた方向を見ている。
「外を見ていたら車酔いしづらいと聞いて。」
半分本当、半分嘘である。
街の配置、魔物の有無などの確認をしたかった、というのもある。
だがそんな事を言って、面倒になるのはごめんだ。
(でも正直、車酔いきちぃ。)
この世界ではまだゴム製のタイヤが発明されていないので、馬車の乗り心地がカスなのである。
現代を経験したステラにとっては、ただの地獄、無理はない。
(早く、早く着いてくれ。)
もうステラの三半規管は限界である。
数時間後
「着いたぞ」
クロヤが馬車のドアを開ける。
母、スカーレットが最初に降りて、次にルナが段差を一段飛ばしで降りる。
「ステラ、だいじょぶ?」
ルナは後ろを振り向く。
「だ、大丈夫です。姉上。」
ふらふらと腕が出てきて、扉を掴んだ後、幽霊のように顔が白くなったステラが出てくる。
(現代の技術って凄かったんだな。)
そのままなんとか降り立つと、目の前に、というか、視界に入らない程に大きな城があった。
1人の燕尾服を着た男性が近寄ってくる。
「お待ちしておりました。ノクターン様。」
「久しぶりだな、セバス。」
クロヤはその顔を見ると、懐かしそうな顔をした。
「兄上は元気か?」
「はい、『クロはまだか?』とソワソワしております。」
クロヤがそんな事をしているのを見ながら、ステラは周りの人や、乗っている馬車を見ていた。
(あっちは公爵家、あれは…宰相の所か。)
想像以上に地位の高い人も来ているようだ。
「ステラ、早く行くよ!」
ルナがステラの手を引っ張って、何処かに行こうとする。
「ゑ、姉様!?」
いきなりの事に、全く抵抗できずにズルズルと引きずられる。そのまま諦めてされるがままになっていると、ルナが動きを止めた。
「ひっさしぶり〜」
その場で手を振り、誰かに呼びかける。
「ルナ!?」
その声に気付いたのか、同年代位の子どもが走って来る。
「来てたの!?」
「そうそう、あ、これ弟。」
「ア、ドモ」
慣れない。この距離感は本当に慣れない。
ぎこちなく挨拶をした後、相手からも自己紹介があった。
「こんにちは、ミキル・フロートです。」
「こんにちは、ルリ・フロートです。」
双子なのか、髪と目以外は殆ど見た目が一緒である。
「ルナ様、ステラ様、探しましたよ!」
セバスが慌てながら走って来る。
「陛下がお待ちです。」
2人を抱えて、セバスはすごい速さで走って行く。
階段をただの坂の様に、壁をアスレチックの様に。
一瞬ミキルとルリが手をブンブン振っているのが見えた。
3秒後、
「ルナ、またステラを連れ回して!」
なんで僕は母上と父上の前にいるんだ?
さっきまで一階にいたよな。ここ少なくとも一階じゃないよな。
この時、僕は決心した。セバスには逆らわないようにしよう、自分がどうなるかわからない、と。
「まあまあ、良いじゃないか。」
クロヤがスカーレットをなだめる。
「よろしいですか。」
一通り終わったと判断したのか、セバスがクロヤに問いかけてきた。
「あぁ、すまない、待たせたな。」
それを聴き、セバスは目の前の緻密な彫刻の施されたドアを叩く。木の温もりのある音が響いた後、一瞬経って、中から声が聞こえる。
「おお、待っておったぞ。」
ドアが魔法で音も無く開く。
「お兄様、お久しぶりです。」
全員中に入り、ドアが閉まってから、クロヤはお辞儀をする。
「息災であったか、我が弟よ。」
その声を聞いて、その威厳で、ステラは確信した。目の前にいるのが、国王、レグルスだと。
「さて、今日読んだのは他でもない。…ステラ。」
「は、はいっ!」
「此方に。」
手招きされ、緊張しながらクロヤと入れ替わりでレグルスの前に立つ。
「これを。」
目の前に出現した模様の描かれた箱を浮遊させてステラに渡す。
「開けてみろ。」
いきなり奇妙な箱を渡され、怯えながらもおそるおそる箱の梱包を解き、蓋を開ける。
その中には、
「杖?」
明らかに特殊な、細かい模様が入っており、芸術的にも価値があるであろう代物が、入っていた。
箱のデザインともまた異なる方向性であり、困惑して固まっていると、後ろからパンッと軽い音がした。
「誕生日、おめでとう!!」
そこには、自分の家族が、クラッカーの様な物を持っていた。
「???」
さらにびっくりしたステラは完全にフリーズしてしまう。
「…やり過ぎたかな?」
それを見て、サプライズを企画したルナは、しょんぼりした顔をする。
「いえ、」
ようやく状況の理解が出来たステラは貰った杖をギュッと抱き抱える。
「すっごく、嬉しいです。」




