チュートリアル
こんにちは、小松晴です。新しい連載を始めます。
両方頑張って両方続けたいと思います。
思えば、あの時が僕の人生で一番の時だったかもしれない。
静かな部屋、響くコントローラーの音、記録を塗り替える瞬間、
いや、過ぎた事を考えても仕方ない。今の自分の身に起きている事を考えよう。
ここは何処だ?
「おお勇者よ。死んでしまうとは情けない。」
目の前に羽の生えた天使の様な人物が居る。
意識がはっきりして来て、自分の周りを見渡すが、何も無い事に気づいた。
「いや、僕勇者じゃ無いですけど。」
変な事を言われ、よく分からない突っ込みしてしまう。
「仕方ないでしょう。これがテンプレなんですよ。」
面倒くさい様な顔をして、説明を始める。
「簡単に言うと、貴方は勇者として異世界に行く事になったんですよ。」
よく分からない力で、モニターの様な物を作り、これから行くことになるという世界を見せてくれた。
「はえ~、けっこう凄い所なんですね。」
顎に手を当て、冷静に分析を始める。
「それでは、いいですか。」
右手を閉じて、モニターはあっという間に消える。
「あっ」
消える様な声で寂しそうに呟く。
そんな事は気にせず、何処からか紙を取り出し、棒読みで読み始めた。
「えー、異世界転生するにあたり、何か質問はありますか。」
適当だなあと思いつつ、気になっていた事を聞く。
「そうだ、僕はそっちに行ったら、何をすれば良いんですか。」
紙をめくり、探すような仕草をした後、紙に顔を近づけて回答を出す。
「えー、まぁちゃちゃっと魔王を倒して頂ければと思います。」
紙を畳み、さっさと転生の準備を始めようと振り向く。
「ちょっと、え、それだけ?」
慌てて手を伸ばすが、後ろに開いたポータルに吸い込まれていった。
「あ、起きた。お母さん、起きたよ。」
そして、僕は目を覚ました。後に最もイカれた勇者と呼ばれる事も知らずに。