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9話 夏

 「この世界にも季節っていう概念があるんだな…」


 季節は夏。セミが鳴き始め、外は蒸し暑い。

 運よく生徒会室には冷房が設備されていた。

 凛は、この部屋にあるソファーの一部を占領していた。

 占領していたソファーで凛はくつろいでいた。

 僕は、数少ないソファーに座っていた。


 「この暑さのおかげで、この通りみんな倒れこんでしまっているわね…久吉は相変わらずこの暑さも関係なく元気でいるのが不思議だわ」


 久吉はいつもと変わらず、椅子に座って朝食を食べていた。

 いつもと同じ、焼きそばパンを。

 雫は生徒会長の席についていた。

 冷房の涼しさを感じながら言った。


 「この暑さだと外には出たくないわね。季節の概念は薄々気づいていたけど、ここまで再現されるとは、全く不思議な世界だわ」


 「そういえば雫が来た時っていつだったの?」


 僕はいつ雫がこの世界に来たのか聞いてみた。


 「そうね…春になるよりも少し前の冬ってところかしら。季節で言えば…一月か二月ってところかしら」


 「そう考えると、結構長いことこの世界にいるんだな。約半年ってところか…」


 「他の人たちはどうだったの?」


 「そうね…私が来て一か月後ぐらいに海がこの世界に来たんじゃなかったかしら。その後、七が来て優奈が来たでしょ。あのバカが来た後に、陣が来て、凛とはるが来たって感じだからね。少し空いて利木くんが来た」


 「一か月も一人って大変じゃなかったの?」


 「大変に決まってるでしょ。前も話したけど、一人で過ごした時間は長かったのよ。一人だったから余計にね」


 そうだよな…

 一人だと余計に時間が長く感じるのもわかる。

 そんな中でよく、一人で過ごせたことに、雫の凄さを感じる。


 「前にも話したけど、この世界に来た時は訳もわからなかったわよ。知らない場所で記憶なんてなかったのだから。みんな同じ反応もするわよ」


 この世界に来た時は、誰でも同じ反応をするに決まってるよな。

 当たり前と言えば当たり前か。


 「持っているものは、生徒手帳にスマートフォン。それ以外は持っていなかったのだから。最初に確認したのは生徒手帳よ。この世界の生徒手帳。学校名なんて聞いたこともなかったのだから。記憶がないだけだと思ったけど、記憶を取り戻した七とはるが証明してくれたわ。記憶があっても、この学校が存在しないことにね」


 少しずつ分かってくることが多くなった。

 それも記憶を取り戻したおかげでもある。

 それに、雫の経験談と。


 「その後は、校舎を探索して色んな人に話したけど『なにいってるの?』みたいな顔で見てくるし、校舎から出ようと思えば見えない壁があるしで、閉じ込められている気分だったわ。食事に関しては、食堂に行ったら知らない生徒が食券売り場でスマートフォンを翳していたから同じようにしたら買えたわけよ。どういう仕組みかはわからなかったけど。今となっては生徒会の仲間も、ご飯の時間になれば当たり前のように食べてるしね」


 お金というものはこの世界に存在しているのかわからないけど、実際試してみたときは驚いたものだ。

 翳すだけで食券が買えた。それを渡せばご飯が出てきた。

 売店でもスマートフォンを一個ですべてが解決する。自動販売機も同然だった。


 「この世界の通貨はスマートフォンで解決できるってことになるよな。


 「そのおかげで私はデザートを食べ放題できるわけでして」


 凛は嬉しそうに言った。

 そんなことをしてたのか凛は。


 「あのバカも好きな焼きそばパンも朝から食べてるのも、多分売店で買って食べてるのよ。ほら」


 確かに。大量の焼きそばパンが並べられて食べている。

 本当に好きなんだな、久吉は。

 幸せそうに食べてるならいいか。


 「優奈がお菓子やお茶を出してるのはどこから出てるの?」


 「私の場合は食堂に行って言えば、材料やお茶がもらえるわ。それを使って、ここにある台所を利用させてもらっているわ」


 「そういえば、この生徒会室って何でも揃ってるよな。まるで使えと言わんばかりに」


 「そうね、不思議なくらいに揃っているわ。私が来た時、生徒会は存在しなかったからね」


 「それって本当なの?普通は誰かがやっているものじゃないの?」


 僕は驚いた。

 どの学校にも生徒会は存在し、誰かしらいるはず。

 でも、雫の話を聞くといなかったと言っていた。

 全てはこの世界で動かされてるかのようだ。


 「校舎を探索して、情報を集めたのよ。そうしたら、ここにたどり着いたってこと。そこからは、情報を集めることだけに集中したわ」


 「よくがんばったわね、雫ちゃん。偉いです!」


 優奈は雫を褒めた。

 僕も心の中で雫を褒めた。

 「偉い!」と。


 「まず、試したことは生徒会を見つける前だと、最初に言ったように校舎を探索したわ。まず、この学校を敷地でなければ外には出れないこと。出れたとしても、何かの行事が行われる時しか出れない。前回のマラソン大会のようにね」


 あれは特殊だったのか。

 あれ以降、校舎の敷地から出ることはしてないし。というより、今は外が暑くて出たくもない。

 生徒会室の中だけでいいや。今は。


 「後は、知らない生徒に話しかけた。結果、最初に言った通りよ。知らないの一点張り。そこからは、生徒会室を見つけ、生徒会を立ち上げた。そこからは、この世界に干渉できるのかどうか。干渉して影響がどうなるのかを調べたわ。例えば、生徒手帳に記載されている、教室に行って授業を受けてみたり、サボってみたりしてみた。わかったことは、干渉すれば影響がある。つまり、この生徒として認識される。干渉がなければ、生徒として認識されない。むしろ、存在しないと同じ扱いになるわ」


 なるほど…なんか難しい。

 最初の事のテストの時のように、僕たちが授業を受ければ生徒としてみなされる授業を受けてなかった、女子たちはいない存在としてこの世界は認識されたわけか。

 常連のように、久吉が先生を困らせたというか、怒っていたというか、あの様子だと常習犯だったんだろうな…


 「ミッションの焼きそばパン作戦も今回の例としてあげられるわね。授業内で売店に居たとき、先生に見つかれば生徒として指導される。実際、私がしたわけではないけれど、久吉を使って実験した時があったわ」


 久吉ってなんでも使われる存在なんだな…

 便利屋として扱われているじゃん。


 「僕は、何度もその実験とやらに利用されて生徒指導室送りにされたけどね」


 久吉も自覚はしているんだな。

 利用されているということに。


 「一人の時、ミッションというのはあったの?」


 「あったけど、やったりやらなかったりしたわ。その時は、なんの意味もなかった。あっても、食堂のメニューの内容だったり、訳の分からない内容だったりしたから、最終定期にはしなかったわ」


 雫が最後までやるような人じゃなさそうだし、わかってはいた。


 「一か月が経ったとき、突然スマートフォンに通知が送られてきたのよ。特定の場所を示した通知がね。それを頼りに探していったところ、海がこの世界に来たってわけよ。私と同じように、彼も何が何だかわからなかった様子だった」


 「突然知らない世界に来たら、誰でも困惑するわ」


 「あの姿は今思い返してみても、今の海とは別ものだったわ」


 雫は少し笑っていた。

 それくらい、今と当時とは違っていたんだろう。


 「笑うところじゃないだろ!仕方なかったんだよ!あんなの誰でも同じ反応するわ!陣については俺たちとは違って、冷静だったけどな。久吉は想像の通り、わくわくの気分みたいだったけど。まるで、初めて遊園地に来たかのようだったけどな」


 「七の時も、陣と同じだったわね。すごく冷静で考えていた様子で」


 「まあ、私の場合は性格が性格でしたから。驚くっていうのはあまりなかったですが」


 「僕も同じかな。よく小説であるでしょ?異世界転生でもしたのかと思ったくらい、わくわく感あったけど」


 陣や七らしいと言えばらしいか。


 「この世界については秘密が多すぎるのよ。利木くんが来てからは、この世界が百八十度変わった。その理由はなんでなのかは知らないけど」


 「雫の話を聞くと僕が来る前の出来事が知れた。僕も少しはこの世界を知ることが出来たよ」


 「それよりも、この世界になんで季節なんて存在するんのよ!最近暑くて、冷房の効いた部屋から出たくなくなったわ」


 ソファーで横になっていた凛はアイスのように溶けていた。

 凛は夏は嫌いなようだ。


 「昨日マラソン大会をした次の日が、なぜこんなにも季節が激変するのか、もうなんでもありな世界だわ」


 バーベキューした時は少し暑かったけど、マラソン大会が終わった翌日からは一気に気温が上がった。

 この制服も来ていて暑く感じる。


 「雫、夏服バージョンの制服とかあったりするの?」


 僕は雫に聞いてみた。


 「そんなの知らないわよ。あるかどうかなんて」


 雫も知らないみたいだった。

 けど、優奈が何か言いたそうにしていた。

 それをみた七が優奈に言った。


 「優奈さん、さっきから言いたそうにしているみたいですが、何かあったのですか?」


 「制服で思い出したのだけどね、朝、いつものようにロッカーを覗くと、ロッカーに夏服が用意されていたのよ。まるで四次元に繋がってるみたいな。一応、夏服は用意されているけど…」


 この世界は便利に作られている。

 僕たちに対しては。

 何もかもが、うまく出来すぎている。


 『え!?』


 みんな同じリアクションをした。

 そんなの初耳だった。

 初耳も当たり前か。いま、初めて知ったばかりなのだから。

 みんな驚いた後、各自ロッカーの中を確認しに行った。

 すると、ロッカーの中には本当に夏服が用意されていた。

 他の人のロッカーにも夏服が確認された。


 「この世界、必要なものを言えば何でも出てくるのか?訳がわからない」


 海が不思議そうにしていた。


 「多分、今日の朝からもともとあったのだと思うわね。昨日はなかったようだし、今日からあると思うわ」


 凛は夏服をみて目を輝かせていた。

 多分、少しでも涼しくなれるのがうれしいのだろう。


 「早速、これ着てくるわ」


 そういった後、凛は更衣室の方に向かっていった。

 それを追うように、はるも夏服を持って後を追った。


 「今日は私、いいわ。着替えるの面倒だし」


 今日は冬服で過ごす雫。

 優奈や七も今日は着替える様子はなかった。

 男性組は久吉と陣が着替えに行った。


 「海は着替えに行かないの?」


 「もう面倒くさいし、今日は冬服で良いよ。それこそ利木は行かなくていいのか?」


 「僕は今日は良いかな。明日からで」


 夏服が用意されていることに驚いた。

 ロッカーの中にずっと入っていたら、なにか起きたりするのかな?

 試すことでもないのはわかっているけど。


 「ロッカーにも夏服があるみたいだし、明日からは衣替えとします。暑いので」


 やっぱり、雫も暑かったんだ。

 それでも我慢しているのがすごい。

 この部屋は冷房がついてるから、冬服でもなんとかなるんだけどね。

 そんなこんなで凛たちが帰ってきた。


 「夏服にするとこんなにも涼しくなるものなのね。部屋が快適だわ」


 はるや凛の夏服姿を見ると涼しそうな制服をしていた。

 はるはベストを着ていて、凛はリボンとブラウスだけだ。


 「はる、ベスト似合ってるな」


 「そんなことないよ、利木くん」


 はるはベスト無いよりはあった方が、はるっぽくていい。

 そんな会話をしている間に、所定の位置にもどりソファーで寛ぎ始めた。

 凛がソファーに居座った時、久吉と陣が帰ってきた。


 「なんかすごく動きやすくなったよ!涼しくていいね!」


 久吉はすごくはしゃいで帰ってきた。

 陣は、はると一緒でベストを着ていた。


 「陣は何を着てもイケメンになるな。なんか羨ましいわ」


 「そんなことないさ。利木くんも見た目悪くないよ?自信持ちなよ」


 そんなこと言われても、陣と並ぶとなんか薄く感じる。


 「久吉!騒ぐな!暑苦しくなるからじっとしといてよ!」


 凛と久吉はいつものようにわめいてる。

 凛からしたら久吉を見ると暑苦しく感じるんだろうな。


 「この世界は一体どこへ向かっているのかしらね。想像も出来ないけど、一度整理してみる必要がありそうね」


 雫は一度、この世界について考え直すことにした。


 「まずはどこから整理していけばいいのか…」


 雫は考える。

 考えてる雫をみて七は言った。


 「もう一度、雫の実体験を話せば良いと思いますよ」


 七は雫にアドバイスをした。


 「…そうね。そうしたら、まずは、この世界の仕組みについて話そうかしら。さっきも話したように、干渉できるもの、出来ないものが存在する。詳しいことは最初に言った通りよ」


 それは僕も経験済み。ミッションで一度それを体験している。焼きそばパンのミッションだ。

 男子たちはテスト受けていても、この世界に存在する女子は生徒会室に居ても、何も言われなかった。


 「後は…この世界に誰かが来るとき、スマートフォンに通知が来ること。それから、この世界に来た人は過去の記憶はないこと。それから、謎の人物からミッションが届く。そのミッションを行うと、誰かの記憶が戻る。失敗すればランダムで誰かの記憶が戻ること。これくらいかしら」


 大事なのはミッションくらいか。僕からすれば。

 これまで二人の記憶が戻った。七と凛の記憶。

 凛については少し特殊で、はるとの関連があるということ。


 「言い忘れていたけど、スマートフォンは重要であり万能であることよ」


 「それ、いう必要あるのか雫…」


 「なによ、別にいいじゃない!スマートフォンで何でもできるのだから、重要なことに必要変わりないわ」


 「雫のスマートフォンは正直、誰よりも重要な人物だね」


 ミッションはみんなに届くが、やり取りできるのは雫しか出来ない。

 僕たちはその謎の人物と連絡は取れない。

 それが出来るは雫だけだ。 


 「次は行動制限はこの学校が所有する場所なら移動が可能。例外として、イベントが起きたときは学校が所有する場所以外でも行動ができるということ。これは、マラソン大会でみんな知っていると思うわ。この世界についてわかることはこれくらいかしら。他に目立った発見はいまのところないしね」


 この世界に来て僕はそんなに経ってはいないが、短い期間ではあるものの、この世界についてわかってきた。

 それは実際に暮らしていてわかってきた。


 「この後どう行動するかなのよね…」


 そう呟きながら、優奈はみんなにお茶とお菓子を用意してくれた。

 凛はソファーで横になりながら、お菓子を食べていた。

 それを見たはるは、凛に注意した。


 「凛ちゃん、お行儀が悪いよ。ちゃんと座って食べないと」


 「別にいいでしょ。誰の迷惑にもなっていないんだし」


 「そういう問題じゃないよ…」


 はるは少し困っている様子だ。

 そんなことを言われながらも、凛は横になりながら満喫していた。

 僕は優奈の入れてくれたお茶とお菓子を食べた。

 相変わらず優奈の入れてくれたお茶と、手作りのお茶は美味しい。

 食べすぎるとご飯が食べられなくなるから、ほどほどにしておこう。

 お菓子とお茶をいただいた僕だが今日は何もすることがなく暇だ。

 各自何かをしながら時間が過ぎていった。

 お昼になり、僕たちは食堂へ行くことにした。


 「僕たち食堂でご飯食べるけど、雫たちはどうするの?」


 「そうね…たまにはみんなで食堂でご飯を食べるのも悪くないわね」


 生徒会メンバーと一緒に食堂へ向かうことにした。


 「今日の日替わり定食は中華定食とハンバーグ定食か。中華の方は酢豚なのか」


 僕は中華定食にした。

 いろんなメニューがいっぱいあるが、悩んだ末に中華定食を食べることになった。

 陣はハンバーグ定食を選んだ。久吉はラーメン定食で海はカレーライス。

 女子たちは何を選んだのだろう。

 出てくる間、僕は何を選ぶのか様子をうかがった。


 「私はデラックス定食にするわ」


 「またデラックス定食にするのですか?よくあの量を食べれますね」


 「いつも飽きないわね。雫ちゃんわ」


 「なあ、デラックス定食ってなんだ?」


 「あら、利木くん、覗き込んで何見てるの」


 「いや、女子って何を食べるのか気になってな」


 「デラックス定食っていうのは、ハンバーグやエビフライ。唐揚げにパスタ。ご飯はカレーかオムライスを選べれるのです」


 丁寧にはるは僕に教えてくれた。


 「雫って結構たべるんだな。僕には無理だ」


 「これくらい余裕よ。美味しいもの詰め合わせ」


 「こう見えて雫って大食いなのよ。ありえないでしょ。私はきつねうどんにするわ」


 「お菓子食べすぎたんじゃなくて?」


 「うるさいわね、利木くん!」


 怒られた。凛に


 「私は…カレーうどんにしようかな」


 七はカレーうどんか。


 「私もきつねそばにしようかしら。凛ちゃんとは少し違うけど」


 「私も優奈さんと同じものにしようかな」


 女子も選び終わったところで、僕の中華定食が出来たので取りに行くことにした。


 先に出来た、陣たちはテーブルに座って先に食べていた。


 「陣のハンバーグ定食美味しそうだな」


 中から肉汁が出てきてデミグラスソースと絡み合って美味しそうだ。


 「一口たべるかい?」


 「いいよ、また機会あったら食べるから」


 僕は断ったのだけど、一口を僕の皿に置いた。


 「陣の分が無くなるから良かったのに。なら、私の中華定食もあげよう」


 僕は陣の皿に酢豚のお肉を置いた。


 「ありがとう、利木くん。いただくとするよ」


 あげた酢豚を陣は美味しそうに食べていた。

 中華定食はとても美味だった。

 本格的で学校が出すような味ではなかった。

 まるでお店に出ている味だ。

 ハンバーグも見た目通り、ジューシーで肉汁がにじみ出る。デミグラスソースとの相性も抜群だ。

 海は黙々を食べていた。

 久吉はラーメン定食を食べたが物足りないのか、焼きそばパンを買いに行った。

 半分食べたところで女子がやってきた。

 雫が持ってきたデラックス定食がすごいことになっていた。

 さらに収まってない…


 「ん?利木、デラックス定食を見るのは初めてか?」


 「初めてだよ。聞いたこともないし。聞いたとしたら雫が買うときに、はるが教えてくれたくらいで」


 「初めてだと、まあそんなリアクションになるよな」


 笑いながらカレーを口に運んだ。


 「雫…それ一人で食べれるのか…?」


 「余裕よ、いつも食べてるし。欲しいといってもあげないからね」


 僕はこの中華定食でお腹がいっぱいだ。

 雫の食べてるデラックス定食は、僕の1.5倍ものサイズ。

 大食いな一面も見れた。

 購買へ行ってきた久吉も帰ってきた。

 久吉もかなりの量を買ってきたようだ。


 「久吉もそんなに食べれるのか?」


 「うん?食べれるよ。余裕でね」


 「何度見ても久吉と雫の量をみて、胸がいっぱいになるわね」


 凛はそんなに食べる人ではないみたいだけど、昼ご飯を食べる前は優奈のお菓子を食べていたんだよな。

 お菓子でお腹いっぱいになったから、この量をみてお腹がいっぱいになるんだろう。

 この食堂の味は料理亭のようでとても美味しかった。

 現実でもこんな食堂であれば良いのにな。

 食堂の味を楽しみながら昼休みの時間は過ぎていった。

 昼休みを食堂のご飯を食べ、満喫した生徒会メンバーは再び生徒会室へ戻った。


 「雫、この後はどうしますか?」


 七は雫に今後どうするかについて聞いてみた。


 「とりあえずは、今日みたいにゆっくり過ごすのもいいわね」


 デラックス定食を食べたいだけなのではと僕は思った。

 あの量を平らげるとは驚いたけど。

 今後もゆっくり過ごす日々が続くんだな。

 この世界が許してくれるなら、この生活も悪くはない。

 僕はこの世界について一つ疑問が生まれた。


 「この世界でわかっていることって、ミッションを成功すれば記憶を取り戻すことが出来るんだよな?」


 「まあ、今現在はそうなってるわね。利木くんが来る前はそんなことはなかったけどね」


 「じゃあ、仮に今みんなの記憶が戻ったとしたら、その後この世界はどうなってしまうのか、ふと疑問におもってしまってな」


 「確かに…それは気になる疑問ではありますね」


 七は考えるように答えた。


 「そんなの私に聞いてもわかるわけないし、みんなもわからないわよ」


 「まあ…そうだよな」


 「世界が滅んだりしないわよね…」


 「まさか、そんなことがあるわけないでしょ」


 凛が否定したがそれもあり得るのがこの世界。

 何が起きてもおかしくないのが現状。

 未知の世界だから今後どうなっていくかは誰もわからない。


 「今考えても仕方ないし、今はこのあたりにすれば?」


 海の言う通りかもしれない

 僕が言い出したことだが、その時に起きたときに対応すればいい。

 この生徒会メンバーなら何が起きても絶対に乗り越えられる。


 「とにかく、今はできることだけをやっていくしかないわ。記憶を取り戻してるのは、七、はるの二人だけ。これからも、みんなの記憶を取り戻していくことになると思うは。記憶が取り戻しても大丈夫なように、心構えをしておく必要があるわ」


 心構えか…

 僕はいつ来ても大丈夫だけど、他の人たちが心配だ。


 「私はいつでも準備OKだよ。どーんとこいって感じで」


 優奈は余裕そうだけど、実際みんな記憶を取りもどすと、言葉に出来ないほどの状態になっているんだよね。


 「今後の予定は白紙だけど、何かしたいものとかあるの?みんなは」


 僕は今しかできないことをやっておきたい。この世界で。

 だからみんなに提案をしてみた。


 「ないわ。この暑さで何もやる気起きない」


 だよな…凛はぐうたら状態だから予想はしてた。


 「僕は楽しかったら何でも良いから、みんなに合わせるよ」


 「僕はなんでもいいよ」


 「俺も合わせる」


 みんな特にやりたいことはないみたいだ。

 女子たちも特にやりたいことはないみたいだ。


 「そういった利木くんはどうなのよ」


 「僕は…ない…」


 「ないのかい!」


 「やりたい事ではないけど、今のこの楽しい時間を過ごせたらいいなって思うことしかない。ずっと楽しい時間がね」


 「それはみんな同じよ。よくわからないこの世界だけど、不便はしないしデラックス定食は最高だし」


 それは雫だけだよな。デラックス定食のことについては。

 美味しく食べてる姿を見れば、残酷な世界になってほしくないと願いたい。

 今後、謎の人物からいつ何が届くかなんてわからないから。


 「やりたいことがないとなると、このぐうたら生活が毎日過ごすことになるわね。謎の人物からいつ何が送られてくるかはわからないし」


 「そうなのよね…だからいつでもミッションが出来るように心構えはしているつもりよ。いつもお菓子やお茶を入れているけど、こう見えても私はしっかりと準備はしてるつもりなのよ」


 流石、優奈。

 頼りがいのある姉というか先輩感がすごく伝わる。


 「することがないなら、明日はみんなで探索をしましょうか。この世界について何かわかるかもしれないし、改めて確認もしておきたいしね」


 「僕はまだ来て間もないけど、まだ実際に知れたものもないから良い機会かな」


 「この暑い中、探索するの?本気で言ってるの、雫」


 「本気よ。衣替えで夏服になったじゃない。たまには外に出なさい。凛」


 「雫がいうなら拒否権はないわけね。わかったわ。たまには、役にたってあげるわ」


 「凛ちゃんが珍しくやる気になってる。それなら私も凛ちゃんと一緒にがんばろ」


 はると凛は必ずペアで動く。はるがいるから、凛はどうにかなるか。

 はるがいないと、凛は好き放題するからな…

 はるがいないとき見ていていつも。


 「私は雫と優奈と一緒に同行します。何か役にたてれれば良いのですが」


 「七がいるだけで役に頼っているわよ」


 「そうしたら男子たちは四人で行動しなさい。別れてもね…」


 「雫…最後なんで濁したんだ?」


 「いや、特に理由はないわ。何かやらかすんじゃないかと思ってね」


 「もう少し頼りにしてもいいだろ。久吉を見なきゃいけないのはちょっと大変だけど」


 「僕をなんだと思ってるの?やる時はやる男だぞ!」


 「バカは頑張ってもバカなんだよ!」


 「なんだと!凛さん僕はね…!」


 「二人とも、ちょっと…」


 始まった…

 いつもの凛と久吉のもみ合いが。

 これはもう風物詩だな。


 「とにかく、男子たちは四人で探索するように。何かあればスマートフォンは連絡ね。各自、明日の為に準備をして、今日は自由行動ということで」


 雫の指示が入り、僕たちは明日の探索の為に準備をした。

 明日は何が待っているのか。

 この世界の謎を少しでもしれたらいいな。

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