《☆~ 目醒める室町カルテット ~》
西暦千九百四十一年の冬が終わる頃、パンナコッタ、後土御門天皇、三休さん、富子がジパング陸軍の拠点に瞬間移動させられ、同時に目醒める。
見知らない中年女性が立っており、毅然とした表情と口調で「ジパング陸軍大佐の津田松子である」と名乗って、冷凍睡眠用服からジパング陸軍の軍服に着替えるよう命じた。十五分後に、極秘の会議が開かれるという。
仕度を整えて更衣室から戻った四人に、津田大佐が言い渡す。
「きさまらは皆、ジパング陸軍少尉だ」
「少尉って、大佐のあんさんより格下でっか?」
三休さんがいきなりやってしまった。
「こらあ、上官に対して、その話し方はなんだ!!」
「あ、済んまへん。長いこと寝てたもんやから、まだ頭が冴えてまへんのやわ。勘弁したってや」
「ふん。話し方は、みっちり扱いてやるから覚悟しておけ! それと、ドーナツの言葉を完璧に修得させる」
「どーなつ? それなんでっか??」
「ああ、知らなくても無理はないか。きさまらが眠りに就いた頃には、まだ存在していない国だからな。当時は、確か《神聖ローマ帝国》と呼ばれる、いや、それはどうでもよい。今からきさまらを大本営に連れてゆく」
「だいほんえい? それもどーなつでっか?」
「違う! 大本営というのは天皇陛下直属で、最高の統帥機関だ」
「最高の陶酔期間? つまり、酔っぱろうてべろんべろんで最高に気分のええことになっとる間やな」
「いやいや、全然違う! しばらく口を閉じていろ! よいか、天皇陛下の御前で一言もしゃべるな! 承知したか?」
「……」
「承知したかと尋ねているのだ! さっさと答えろ!」
「……」
「きさま、おちょくっとんか!!」
「……」
黙りの三休さんに代わって、後土御門天皇が口を開く。
「大佐、彼は《しばらく口を閉じていろ!》という命令に従うてんや」
「は?」
「三休は頓智に長けており、こういう返しをするのじゃ」
「はあ~、きさまらとは話にならん。しかし、大本営まで連れてゆくのが、今のあたしに与えられた任務なのだからやむを得まい。黙ってついてこい!」
「大佐、さっきから偉そうに、朕を誰やと思うてんのや?」
「ああっ、後土御門天皇、陛下!!」
「ようやっと思い知ったな。上官かなにか知らぬが、数百年昔の天皇とはいえ朕に向かって数々の無礼、これは打ち首じゃな?」
後土御門天皇が、伝家の宝刀に手をつける。
「お、おお、お許しあれぇ!!」
「あはは。戯れやわ、戯れ」
「……」
津田大佐には返す言葉がない。
そして数分後、四人が大本営まで誘われた。
七人が席に着いている。最奥の位置に、威厳のある人物が一際豪華な座席に鎮座している。後土御門天皇は、胸の内で「あれが今上天皇やな」とつぶやく。
パンナコッタと同じような顔つきの男が立っており、話し掛けてくる。
「室町カルテットの皆さん、こんにちは。アデライード連合国軍最高司令官のドライド‐アプルサワー大将です。あなた方には、これから一年のうちにドーナツ語を完璧に修得させて、ドーナツ民国に潜入する任務に就くことを命じます」
「あんさんアデライード人やろ。ジパング語なかなかにうまいなあ。ところどころ意味の分からへん言葉、仰山あったけど」
「気にせえへん、気にせえへん」
「おっ、上手やなあ……」
この後、ドーナツ語の猛特訓が待っている。




