第4章 リサイクル
「なあグレーゴル。
もう一度、人生を歩めるとしたら
お前は誰のために生きる?
お前がここに来た時、私は言った。
かくも醜く、かくも美しい。
儚く散った夢のように残酷で淡い。
それがお前だと。
お前の今の姿を見て醜いと思うか、美しいと
思うかは、その人間次第だ。お前の家族は
生前、虫になったお前を醜いと言い、今の姿
を見れば、より醜いと蔑むだろう。
だが、ある芸術家は半蟲人間となったお前の
今の姿を美しいと言い、女神のように崇める
だろう。ある作家はお前の人生を悲劇的で
ロマンチックだと言い、憧れるだろう。
お前は家族に捨てられたが、それがきっかけ
となって、素晴らしい出会いがあるかもしれ
ない。例えば私と出会ったように。
"見方"なんだ。
グレーゴル、結局は自分の見方次第なんだ。
そう、全ては自分で決めることができるんだ。
他人の見え方は多種多様、
この世の神とて、"グレーゴル・ザムザ"を
定義することはできない。
お前は人であり、蟲であり、ゴミであり
芸術であり、どこまでも優しい兄であり
美しい化け物でもある。
ゴミさえも生まれ変わることはできる。
捨てられた割れ瓶は、宝石の一部になる。
そうだな、人間のことばでは"リユース"と言ったかな?」
*
ある朝、グレーゴル・ザムザが何か気がかりな夢から目を覚ますと、空が見えた。少し曇っていたので、そのまま寝ておくことにした。
暖かくも寒くもない、乾いた生ぬるい風が葉を揺らす。葉の裏で何かがうごめいている。
雲はあるが、それなりに晴れた空。
ようやく開き始めた花に美しい蝶が群がる。
破れたサナギから真白い蛾がゆっくりと生まれた。グレーゴルは少し周りを見渡すと、自由の翼を大きく広げて、どこかへ飛んで行った。
以前カフカ「変身」を読んだことがあります。
「次の本、何読もうかな〜」と色々見ていた時に、「変身」の主人公グレーゴルの儚い人生を思い出し、浮かんできたので、とりあえず書いてみました。
(カミの言葉に色々、思想っぽい発言がありますが、あくまで「作品」としてお楽しみ下さい…)
調べれば調べるほど、「変身」って本当に面白い作品だなーと感じます。
本家ではグレーゴルは家族に看取られることもなく静かに亡くなって終わりますが、本作は「前進すること」をテーマとしたこともあり、蛾として生まれ変わり、新たで自由な人生を歩む というラストにしました。
象徴の虫は、「自由な翼を手に入れた」という意味で、羽虫を、美醜にとらわれず、ありのままの自分を生きるという意味で敢えて蝶ではなく蛾を選びました。
ストーリーとしては若干暗いですが、容姿や他人の目に囚われずに、自分だけの人生を謳歌したいですね。




