第2章 親も子を殺す
グレーゴル・ザムザは、上司に不満を持つが、面と向かって言う勇気はない。堅実で努力家だが、大層プライドが高い。
彼は、部屋に引きこもり家族を困らせるが、この一家はグレーゴルのおかげで破綻を脱した。
一家は破産を逃れたが、冷淡になった。
冷淡になって、使い物にならなくなった息子を捨てることにした。
グレーゴルは家族のことは恨まなかった。
妹は尊敬していた兄を、人としてさえ扱わず
両親も腫れ物、化け物のように扱ったが、グレーゴルは家族を愛していた。
「家族に絶対愛を求めるな」
いきなりカミが言い放った。
それは、冷徹な言葉だった。
「家族や肉親が血族を愛するなど、淡い妄想に過ぎん。」
「そんなはずはない!
親は子を愛し、子も反発はするが、最後には親の愛に応えようとする。」
「絶対ではない。
親は子を殺し、子もまた親を殺すことはある。
その証拠に世には子をゴミのように投げ捨てる親も大勢いるではないか。」
グレーゴルは詰まった。
確かに、子を虐待する親は存在する。
虐待して、最後に子は殺されるが、それでも親は何を悔やみ悲しむわけでもなく、ただ罪を負う。グレーゴルの親は、愛情込めて育ててくれた。だが、最後は息子を害虫のように扱い、
死んだら呪われた家と息子を記憶ごと捨てた。
「お前は、親にとって最早ゴミでしかない。」
カミの直接的な言葉は、グレーゴルの頭を痺れさせた。だがグレーゴルは何も言わずに、ただ段々と息を荒くして頭に血を溜めるのみだった。
「グレーゴル、お前は誰のために生きていた?」
「勿論、家族のためです。」
「なぜ家族のために生きるのか。」
「家族を愛していたからです。」
「だからお前は不幸なままなのだ。」
カミはまた冷たく言った。
「家族を愛していたからといって、家族はお前に何をした?
人間がよく口にする"無償の愛"とかいうやつか?
家族のために生きる
裏切られても家族だから無償の愛を注ぐ
血は繋がっているから最後には分かり合えるはず…
お前は、本当にそう考えているのかね?」
グレーゴルは、また黙った。
先ほど虐待する親の話をしたことを思い出したのだ。家族間での無償の愛は絶対的ではない。
自分を「独立した自己」として見た時、
「「家族も他人に過ぎない」」
グレーゴルとカミの声は、初めて重なった。




